2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
投資は勉強しないと長期では儲かりません。では何を勉強すれば良いのか?と言えば、投資の理論、商品の知識、取引の手法の3つではないでしょうか。http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004752.html
この3つめの「取引の手法」の中には、行動心理学と呼ばれる投資の心理学的な勉強も含まれています。
これまでのコラムでも行動心理学の例として、
プロスペクト理論
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004270.html
売らないでナンピン買いしてしまう理由
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004389.html
などを取り上げました。
最近行動心理学に関する本を読んでいたら、「買い」と「売り」では圧倒的に「売り」の方が難しい理由があるということを知りました。「売り」が「買い」より難しい行動心理学的な理由を考えてみます。
●売りと買いの違い
売りと買いは取引という意味では同じ行動です。それなのに売りの方が心理学的に決断しにくい判断になるのはどうしてでしょうか。
売りをするということは、以前に買った時とは反対の意思決定をするということです。つまり昨日までは値上がりすると思って保有していたものを売却する訳です。今までと逆のことをするためには自分を説得できる理由が必要です。
また世の中には売買推奨の様々な情報がありますが、売りの情報よりも買いの情報が多くなります。売りは(信用取引で売りから入る人もいますが)基本的に持っている人が売却することしかないので対象が限られます。買いは相場に参加している人すべてが対象になる情報だからです。世の中の買いバイアスに逆らって売却することも心理的ストレスになります。
●利食いでも損切りでもリスクがある
次に実際に売却する時を考えてみます。もし買った値段より上で売ろうとする場合(利食い)、こんな不安がよぎります。
「自分が売ってから、もっと上がったらどうしよう」
逆に買った値段より下で売る(損切り)場合、損を確定することになりますから売ることにストレスを感じます。
「自分が損切りしてから価格が戻ったらどうしよう」
つまりどちらの状況でも自分の決断が失敗につながるリスクを感じてしまうことになります。
●何もしない魅力
どんな状況でも後悔する可能性がある、とすれば何もしない方が心理学的にはストレスの無い選択になります。ゼロからポジションを作る「買い」と今まで説明したような心理的にストレスがかかる「売り」は大きな違いがあるということです。
何もしないのが一番楽、というのは投資に限らず意思決定ではありがちなことではないでしょうか。
●判断ミスを避けるために
売りに限らず、心理的なストレスによって投資の判断を間違えないためには、「ロボットになるのが一番である。」。これはビデオ・DVDにもなっている科学的「株」投資法の講師増田正美氏が言っていたことです。
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/benkyo/index.html
しかしロボットになれない方には別の方法があります。それは記録することです。
株や投信を買う時に、買う理由、利食いの価格、損切りの価格、保有する大体の期間を書いた「取引記録ノート」に書いておく。実際に決めておいた目標に到達したら予定とおりに売る。この方法は自分を管理することもでき、データがまとまれば、自分の投資方法について反省することもできます。
また今保有している株や投信がある人は過去のポジションとは切り離して、今なら買うのか、売るのかを考えてみることです。このコラムも参考にしてみてください。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004363.html
●買いと売りのセットで取引は完結する
株式にしろ投信にしろ、買いだけ、売りだけでは完結しません。買ったものを売って利益(あるいは損失)が確定してその取引が終わるのです。買う時には銘柄を熱心に分析しても売るときにはどうでも良くなってしまう人が多いようです。
売りで失敗しているという方、早速「取引記録ノート」を作ってみてはどうですか。
今回の話のまとめ---------
●「買い」と「売り」では「売り」の方が難しい
●行動心理学的な失敗をしないための方法を考えておく必要がある
●運用は利食ってナンボの世界である
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 内藤 忍)
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