SRIファンドで社会責任投資ができるか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

SRIファンドで社会責任投資ができるか?

マネックスでは販売していませんが、SRIファンドが注目されています。SRIとはSocial Responsible Investmentの頭文字で日本語では「社会責任投資」と訳されます。社会や環境に配慮し、企業の周りにある利害関係者(ステークホルダー)との関係を大切にする真っ当な企業に投資する方法です。

2年前にこのコラムでも取り上げました。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/002709.html

●SRIとは具体的には何か
真っ当な企業といってもファンドによって選択方法が微妙に異なるようです。一般には、コーポレートガバナンス(企業統治)、ディスクロージャー(情報開示)、コンプライアンス(法令遵守)、リスク管理、環境活動、社会貢献、IR、などを評価してSRIに値する企業を選択しています。その中で環境活動の側面から投資先を選定するのが一時期話題になった「エコファンド」です。
●SRIファンドは高い投資リターンを実現するのか
企業の社会責任を評価するインテグレックスが日本の倫理的に優れた企業トップ100社を選び、投資リターンを計測したところ、時価総額でTOPIX(東証株価指数)の1.75倍になったというデータがありました。ただし1991年から2002年5月までのデータでの計測です(大和総研調べ)。
実際に運用されているSRIファンドの投資リターンはどうなのでしょうか。3年以上の運用実績のあるとあるSRIファンドの運用レポートで見ると設定来の累積リターンは直近で▲9.9%。同じ期間のTOPIXに比べると+10.4%の超過リターンになっています。一方で最近設定された別のファンドは設定来のリターンが+14.5%ですが、同期間のTOPIXと比較すると▲2.3%下回っています。

一般の株式ファンドと比べてもSRIファンドであるから運用成績が良いとは一概に言えないと思います。

●銘柄比較をすると・・・
実際の組み入れ銘柄を見てもSRIファンドと一般の株式ファンドの区別はよくわかりません。下記の銘柄リストは1つがSRIファンドでもう一つは通常の日本株ファンドの組み入れ上位銘柄ですが、区別できるでしょうか。
<ファンドA>
1.トヨタ自動車
2.シャープ
3.石川島播磨重工業
4.パイオニア
5.みずほフィナンシャルグループ
6.コニカミノルタホールディングス
7.東京製鉄
8.住友重機械工業
9.松下電器産業
10.ジェーエフイーホールディングス

<ファンドB>
1.三井住友フィナンシャルグループ
2.トヨタ自動車
3.三菱東京フィナンシャル
4.三菱商事
5.三井物産
6.村田製作所
7.旭硝子
8.ミレアホールディングス
9.東レ
10.みずほフィナンシャルグループ

●SRI「ファンド」の差別化は可能か
企業の社会責任が当たり前になってくれば、SRIによる銘柄選択と通常のファンドの銘柄選択の違いは小さくなってきます。最近は情報管理、法令違反など企業が社会責任を果たさないことによって経営に大きなダメージが発生することを企業も認識するようになりました。社会責任を果たすことが企業経営上必須とも言える状況になってきています。つまりSRIファンドに分類されていないファンドも無意識に銘柄選択のプロセスでSRIを実行するようになっているのです。

とするとSRI「ファンド」の差別化はどこに見出せるのでしょうか。

●投資は結果責任
SRIの存在価値として銘柄選定プロセスに意味があるという意見もありますが、SRIファンドと言えども投資の結果が出なければ投資家の支持は得られません。もし投資のリターンを目的にしない運用をするのであれば、資産を殖やすためのファンドではない、ということを事前に投資家に説明すべきです。
社会的評価を組み入れた投資判断を行うことが、投資リターンにつながるという考え方からすれば、結果を出せないSRIファンドは投資判断に問題があるといえるのではないでしょうか。

●社会責任投資のプロセスの納得性
投資家もSRIファンドという名前だけで良い企業に投資されていると単純に鵜呑みにするのではなく、どのような銘柄選択のプロセスや実際の銘柄選択結果に納得できるのか、などを目論見書や運用レポートで突っ込んで理解する必要があります。本物のSRIかどうかの目利きです。

「SRIによって高いリターンが実現する」という事が事実だとしても
「SRIファンドによって高いリターンが実現する」かどうかはまた別の話なのです。

今回の話のまとめ---------
●SRIといっても様々な考え方がある
●SRI「ファンド」が高いリターンを実現するかはわからない
●SRIという名前だけでなくファンドの運用プロセスを確認する必要がある
ではまた来週・・・。

(マネックス証券 内藤 忍)

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