ゲームオーバーにならないために

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

ゲームオーバーにならないために

投資は自分の資産という手持ち資金の中で行う知的ゲームと考えることができます。ギャンブルと投資は目的がまったく異なる、と以前書きましたが、http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/003944.html
予算金額を使い切ったらゲームオーバーという点は同じです。ラスベガスにギャンブルしに行って、所持金を全部使い切ったら退場するしかありません。
●投資の世界でゲームオーバーになったら人生設計やり直し
投資も資金が無くなれば市場から退場するしかありませんが、ギャンブルとは違い自分の人生がかかっています。市場から退場する、という事態になれば人生もゼロからやり直しです。そんな事態は絶対に避けなければなりません。それほど重要なことなのにもかかわらずゲームオーバーリスクについては鈍感な人が多いようです。

全財産でなくても、例えば投資に失敗して資産の半分が無くなってしまう、といった事態になったら、投資を続けることはできなくなってしまいます。例えそのまま投資を続けていたら次の年には2倍になって元に戻るとしても、です。
つまり長期で人生をかけて行う投資の場合、資産の価値の変動が大きすぎると途中で運用を断念せざるを得ない状況に陥る可能性があるのです。

したがってゲームオーバーにならないために資産の変動をどうやって抑えるのかについて対策を立てる必要があります。

●日本株だけで運用をすると・・・
日本株だけで運用している場合を考えてみましょう。日本株のインデックス(TOPIX)で価格の変動がどの位あるか、計算してみました。過去19年間のデータで年間のリターンの変動を計算すると標準偏差が約25%という結果が出ました。

標準偏差の2倍の変動可能性がありうると考えると、日本株だけで運用すると1年で資産が半分になりうる(50%の価格変動)という計算になります。もちろんうまくいけば大きく資産を殖やすことができますが、これではゲームオーバーになるリスクが高すぎる運用方法と言えます。

しかもこれは日本株のインデックスでの数字ですから、個別の銘柄で運用する場合にはこれ以上の変動の可能性もあり、リスクは更に高まります。

●どこまでリスクを取るか
50%資産が変動する運用はリスクの取りすぎであるとすればどのくらいが丁度良いのでしょうか。これは個人差があると思いますが、例えば20%くらいが限界(100万円が80万円になるまでは我慢できる)とすれば逆算して株をどの位資産に組み入れられるかを計算できます。

単純計算すると日本株100%で50%変動するリスクがあるのですから40%組み入れれば資産全体の変動は20%に抑えられるということになります。
●分散投資をするとリターンのブレが小さくなる
では株式以外の資産も組み入れた場合のリスクはどうなるでしょうか。下記の組み合わせで運用した場合のリターンの変動を過去データで計算してみました。
日本株  35%
日本債券 15%
外国株  25%
外国債券 15%
短期資産 10%

この場合標準偏差は約10%となり、標準偏差の2倍の資産変動のリスクと想定すると最悪で20%のマイナスとなります。これなら許容できるリスクの範囲内です。資産分散によって変動を抑えることができるのがわかります。
日本株、外国債券、といった異なるリスクの商品をどの程度までの比率で組み入れるか、という場合、いくら儲かるかよりも最悪の場合どんな事態になってしまうのか、を考えることが大切です。

●勝つ投資ではなく負けない投資をしよう
書店に並んでいる投資本を見ても「株で●●億円儲ける」「1年で●●倍にする投資法」といった「リスクよりリターン」に焦点を当てた投資本がほとんどです。

しかし長期の運用を続けることによって資産を殖やしたいと考えるのであれば、リターンの変動が自分のリスク許容度を超える大きさになっていて、最悪のケースになった場合、運用が継続できない事態を避けることが大切です。

つまり投資戦略を考える場合に重要なのは「うまくいった」場合の想定ではなく「最悪の」場合の想定なのです。

「賢人はつねに最善を望みながら、最悪を覚悟する」

長期の資産設計をする人は覚えておくべき格言です。

今回の話のまとめ---------
●長期の運用を続けるには「ゲームオーバーリスク」を考える必要がある●1つの資産だけで運用していると変動リスクが大きすぎる
●リスクの観点から資産配分を検討して負けない投資をしよう

ではまた来週・・・。

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧