ボラティリティを実感する方法

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

ボラティリティを実感する方法

金融用語というのはわざとわかりにくくしているのではないかと思うことがあります。カタカナの新しい言葉が次々に登場し個人投資家を混乱させます。そんな言葉の一つに「ボラティリティ」があります。リスクとリターンについて語る時に出てくる言葉です。

●変動率がイメージできるのか
「ボラティリティ」は日本語では「変動率」というわかりやすい(?)言葉になっていますが、変動率の数字だけからリスクを実感するのはなかなか難しいと思います。例えばボラティリティが10%、と言われてリスクがどの位なのかイメージできる人は少ないでしょう。オプション取引などに精通したかなりの金融通の方だけではないかと思います。

リスクについては投資のヒントでも取り上げているテーマですが、
http://www.monex.co.jp/visitor/howto/hint/risk/index.html
何となくネガティブなイメージを持っているものの実体をどう捉えるか、最適な方法が無いのが現状です。

●問題は最悪のシナリオがどうなるか
リスクの量を示す変動率が大きくなった時、個人投資家が困るのはマイナスの方向に行った時です。大きく値上がりした時はリターンの面からは問題にはならないからです(リスクを取りすぎではないかという問題はありますが)。
つまりリスクと言った場合、最悪の事態が実現したとしてどこまでの損失の可能性があるかを知っておけばリスクについて具体的にイメージすることができるのではないでしょうか。

●過去のデータで試算してみる
変動率は標準偏差を計算することで数値化することができます。統計学の世界になりますが、正規分布を前提とすると平均値からプラスマイナス2標準偏差の中に発生する確率の95.4%が収まります。つまりこの外側になる確率は5%以下ですから、標準偏差の2倍の変動が最悪の場合に想定しておく状況ということになります。

具体的に過去のデータで見てみましょう。1985年から2003年までのTOPIX(東証株価指数)の年間騰落率から標準偏差を計算すると約26%になります。標準偏差の2倍が最悪のケースという想定であれば、プラスマイナス52%までがレンジになりますから、日本株の運用においては最悪の場合、1年で資産の半分が失われる可能性がある、ということになります。

これは正規分布を前提に過去のデータで長期の年間騰落率で計算していますから、あくまで目安です。データの取り方によって同じ資産であっても数値は変わってきます(この辺の話はファイナンスの世界の専門領域です)。

また計算結果はTOPIXのデータで計算したものですから、個別の株式の場合、この変動率が更に高くなる可能性があります。特定の株式銘柄に資産を集中させるリスクがいかに高いかおわかりいただけると思います。

●ボラティリティの2倍でダメージをイメージ
大まかに言うと年間のボラティリティが20%と聞いたら、最悪の場合その2倍のマイナス40%を想定しておくべきだな、というイメージが持てれば、リスク認識の第一歩としてまずは充分です。

自分の資産のどのくらいが1年で失われても耐えられるか、は人によって違うでしょうが、私は20%くらいだと思っています。つまり資産全体の標準偏差を10%以内に収められるようにアセットアロケーションしなければならないということがわかるのです。

今回の話のまとめ---------
●リスクという言葉には様々な意味がありイメージしにくい概念である
●ボラティリティを実感するには最悪のシナリオを想定すれば良い
●統計的に最悪のシナリオを計算することができ、目安とすることが出来る
ではまた来週・・・。

(マネックス証券 内藤 忍)

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