2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
イタリアでは155ユーロ(2万円くらい)以上の買い物をすると付加価値税の払い戻しというのが受けられるようになっていました。ショッピングしたお店で税金還元の書類を作成してもらい、それに空港でスタンプを受けると、払い戻しのカウンターでキャッシュバックしてもらえるという仕組みです。
お金が戻ってくるのでトクをした気分になるのですが、実は20%の付加価値税(消費税)を既に払っており、その一部を払い戻されているだけなのです(年末調整と同じです)。
●先進国の消費税
イタリア 20%
ドイツ 16%
オーストラリア 10%
イギリス 17.5%
日本 5%
・・・・
これは各国の消費税(付加価値税)の数字です。日本以外の先進国を見てみると消費税が5%(うち1%は地方税)以下の国はありません。ユーロ諸国では軒並み10%台後半から20%以上となっています。
●日本の消費税が15%になったら
日本の消費税は表示が内税になりましたが、表面上今のところ上がるという具体的な話はありません。しかし、金融市場では10年以内に5%程度の消費税引上げはすでに織り込まれています。これが今後どの程度まで引き上げられるのかはわかりません。
例えば日本の消費税が15%になったらどうなるのでしょうか。10%の増税分が価格に上乗せされれば日本の消費者物価はその分上昇することになります。
日本の全国消費者物価指数は現在前年比で-0.2〜-0.3%程度の水準です。消費税が引き上げられれば、現在若干のマイナスで推移している消費者物価指数はプラスに転じます。このような環境ではデフレにおいては金利がほとんどつかなくても実質的な購買力が向上していた普通預金も実質価値が下がることになります。
●個人はファンドでしか購入できない物価連動国債
このような将来のインフレに対応する商品として物価連動国債について5月7日のコラムで取り上げました。ただしこの債券自体は個人投資家には購入することができません。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004871.html
そこで物価連動国債を組み入れた投資信託をDKA(第一勧業アセットマネジメント)が開発しました。こちらをマネックス証券で10月2日朝から取扱開始いたします。
●物価連動国債ファンドのデメリット
物価連動国債ファンドの概要に関してはこちらのページでご覧いただけます。
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/toshin/ichiran/index_kokunai_saiken.html
また販売開始後は画面上のPDFファイルで目論見書もご覧いただけますのでこちらも事前に読んでから投資の判断を行ってください。インフレ対策が目的のこのファンドもいくつかのデメリットがあります。
まず物価連動債は他の国債とは異なり、満期償還時に償還元金額が額面金額を下回る可能性があります。したがってこのファンドも元本を下回る可能性があることになります。また金利と将来予想される物価変動の関係によっては、インフレを完全にヘッジできない可能性もあります。
コスト面でもファンドとして最低でも年間0.4%の信託報酬がかかります。これは債券を直接購入する場合に比べコストアップ要因となりますからその分リターンは低下します。
●購入はできればノーロードで
とはいえ、インフレに正面から対応できる商品は現状このファンドしかありません。購入するのであればできるだけコストを引き下げインフレ期待が高まる前に組み入れるべきでしょう。
100万円以上のお買付であればノーロード(販売手数料なし)で購入が可能です。分散投資する投資金額としては大きな金額ですが、コストを考えれば投資金額の考慮が必要です。
●個人向け国債との使い分けを
最近募集を終了した個人向け国債はマネックス証券でも高い人気がありました。専門家の意見によれば個人向け国債も変動金利商品ですからインフレによる金利の上昇があれば受取金利も増えることになります。しかし長期金利に連動して半年に一度金利見直しを行う商品ですから、急激なインフレには対応が遅れます。また消費税の引上げ、医療負担の増加といった制度的な変更に対しては長期金利が上昇しない可能性もあり、その場合個人向け国債の受取金利は増えない可能性がある、と指摘されました。
個人投資家が選択できる国内債券型の運用商品にも新しいものが少しずつ増えてきましたが、運用目的と商品性をしっかり考えてから投資をはじめましょう。
今回の話のまとめ---------
●日本の消費税は先進国の中では最も低い
●消費税が引き上げられれば消費者物価は上昇する
●物価連動国債ファンドは個人投資家のインフレヘッジの選択肢の1つ
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 内藤 忍)
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