2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
投資の世界はデータを分析するだけでは儲かりません。データの分析を精緻に行ってもそれはあくまで過去の数字であり、将来に対する期待が入ってくるからです。投資に際し株価の分析をする場合も期待がどの位織り込まれているかの見極めが重要です。
●PER
例えば、企業の価値を評価する指標としてPER、PBRといった数字があります。PERであれば
PER= 株価 ÷ 一株あたり年間税引き後利益
で計算されます。PER30倍の会社があるとすると(金利を考えないとして)30年の利益が株価に織り込み済みであるといえます。この中のどの位が期待値としての数字なのでしょうか。PERの高い企業ほど将来の期待が大きいということができます。
●バリューとグロース
株式にバリュー株とグロース株という分類方法があります。グロース株(成長株)は、将来的な成長が期待できる銘柄。今後高い利益成長が期待できるような企業、あるいは業界が成長しているような企業を指します。バリュー株(割安株)とは反対に今後あまり成長が期待できない、成熟産業の企業が中心となります。定義にもよりますがバリュー株とは一般にPERやPBRといった数字が相対的に低い銘柄になります。
1979年から直近までの日本株のデータ(ラッセル野村日本株インデックス)で見ると、バリュー株のリターンが10.05%、グロース株は4.24%となっており、バリューがグロースを上回っています。この2つの差も織り込み済みという理由で説明できます。
グロース株には大きな期待があります。期待通りに成長して当たり前であって、驚きはありません。逆に期待を下回った場合「この会社駄目なんじゃない?」と失望感が広がりやすい。一方のバリュー株は、もともとあまり期待されていない株なので、悪くても株価が下がらないし、期待以上のことがあると「結構やるじゃない」というポジティブサプライズがあります。
このデータは昨年マネックス証券で開催した銘柄選択勉強会
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/benkyo/index.html
でも紹介されたものですが、勉強会を担当した方は今は投資顧問会社で銘柄選択のサービスを行っています。
(下記サイトでは割安株を探してみることもできます)
http://www.value-search.co.jp/
●消費税は10年以内に5%以上上がる?
織り込み済みといえば物価連動国債と同じ償還期限の長期国債の金利を比較すると現在0.8%程度の格差があります。これは10年で計算すれば8%となりますので今後10年で8%のインフレを織り込んでいる、ということになります。
現在の消費者物価上昇率はゼロあるいは若干のマイナスで推移していますからこの8%という数字の中には消費税の引上げによる物価の上昇の期待がかなり織り込まれているということができます。
物価連動国債の金利水準によって物価上昇に対する世の中の織り込み具合を知ることができるのです。
マネックスで販売している物価連動国債ファンドの販売用資料(PDF)
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/toshin/ichiran/index_kokunai_saiken.html
●織り込み済みの後追いは投資の失敗につながる
テレビや新聞で報道された流行情報は既にピークを過ぎているということがあります。つまり一般に知られるようになった時にはその流行は時代遅れになっているのです。
投資情報を相場に活かすには、情報を鵜呑みにするのではなく、自分が考える予想と世の中の見方の比較をするために使うべきです。期待の織り込みがどの程度なのか、を推定できれば市場と自分の見通しのズレを知ることができ、投資機会を発見することができます。つまり自分の相場観が無ければ世の中の意見を知っても余り意味がないのです。
人が気がつく前に投資をはじめ、皆が気がついた時には投資を早めに切り上げる。成功する投資家になるのは難しいものです。
今回の話のまとめ---------
●金利や株価には期待の数字が「織り込まれて」いる
●期待が大きなものは失望した時の反動が大きい
●自分の予想と市場の予想の比較によって投資判断が可能になる
ではまた来週・・・。
(マネックス証券 内藤 忍)
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