定量評価と定性評価

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

定量評価と定性評価

投資方法を決めるのはリターンではなくリスクからです。なぜならリスクの取り方を間違えると相場変動によって資産が大きく目減りし、運用を続けられなくなる「ゲームオーバーリスク」が発生してしまうからです。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/005191.html

しかし投資を始めようという人がまず考えるのはリスクではなくリターンです。「これに投資したらどの位儲かるだろうか」を投資判断基準にしてしまうわけですが、これが誤りの第一歩です。「どのくらい儲かるか」ではなく「損するとしたらどのくらいか」という観点が重要なのです。

●ファンドを選択する方法
投資信託を使って運用を行う場合、どの商品を選択するかが問題になりますがきちんと評価をして商品を選んでいる人は少ないようです。多くの個人投資家の方は有名なファンドだから、店頭ですすめられたから、といった理由で投資していると思います。

投資信託の商品選択をする場合、定量的評価と定性的評価の2点から行うのが合理的な判断となります。

●定量評価
定量評価とは数字で表せる評価です。これは過去の実績を見る人が多いと思います。設定来●●%上昇といった数字を投資の決定材料にするわけです。しかしリターンだけを見てリスクを考えていない評価です。リスクとリターンの両面からの評価が必要です。シャープレシオとはそのようなリスクとリターンの比率を計算したものです。下記のような式で計算されます。

シャープレシオ=(過去の運用実績−無リスク資産の利回り)/リスク

分母がリスクで分子が超過リターン(リスクを取らない利回りをどの位上回る実績か)ですから、数字が大きいほど小さなリスクで大きなリターンをあげたことになります。

●定性評価
しかしシャープレシオが高ければ良いファンドとは限らないのが難しいところです。かつて抜群の運用実績を誇りカリスマファンドマネージャーと呼ばれた運用責任者が移籍した後のファンドではパッとしない成績になってしまうことは意外に頻繁に発生しています。過去の数字だけではなく数値化できない「定性評価」も必要なのです。しかしこれは難しい評価です。

運用会社の運用哲学、付加価値の源泉、運用体制といったものが評価の対象になると思います。

例えば運用哲学とはどのような考え方に基づいてプロの運用をしているのかということです。フィデリティは徹底したボトムアップ(個別銘柄投資)、バンガードはコストを下げ長期投資運用を重視した運用といった明確な哲学に基づく運用方針を持っています。

また例えば運用体制であれば、中国株ファンドで同じ50%のリターンの2つのファンドがあったとして、1人の日本人ファンドマネージャーが運用しているファンドと5人の香港にいる中国人チームが運用しているファンドであったらどちらを選びますか?

インド株ファンドを運用することになるHSBCはインドのムンバイに6名の運用スタッフを擁し、世界15ヶ所の運用拠点の280名のファンドマネージャー、アナリストが情報を収集・分析するようになっています。

実績という定量評価だけでは不十分であることがおわかりいただけると思います。

●ファンド分析の結果
マネックス証券のログイン後の投資信託情報画面にはS&Pファンドサービスとマネックスのファンド診断ということで情報提供しています。

シャープレシオのような定量データだけではなく、定性的な部分も含めたファンド分析結果をどのようにマネックスのお客様に伝えるかは大変難しい問題です。定性分析になるとどうしても主観的な要素が入ってしまうからです。
わかりやすく正確に管理ができる方法を提供したいと思っていますが、様々なことを考えるとそう簡単にはリスクを認識することはできないようです。マネックスのお客様がどんな情報を必要としているのか教えていただきながらより良い方法を考えたいと思っています。

資産設計には簡単には答えられない疑問がたくさん存在するのです。

今回の話のまとめ---------
●ファンドには定量評価と定性評価、2つの方法がある
●定量評価はシャープレシオでリスクとリターン両面から評価する
●定性評価は哲学、運用体制などが材料になるが最終的には主観的判断

ではまた来週・・・。

(マネックス証券 内藤 忍)

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