日本株から撤退する投信会社

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

日本株から撤退する投信会社

今週の日経金融新聞の1面に掲載された記事で注目したのは、HSBCアセット・マネジメントが「日米株運用から撤退」というものでした。と言っても経営が思わしく無いので規模を縮小するという話ではありません。CEOのインタビューを読んでいくと、彼らの明快な戦略に納得します。「さすがHSBC!」と拍手したい、思い切ったトップの決断です。

●HSBCの戦略
HSBCとは香港上海銀行(Hong kong Shanghai Banking Corporation)の頭文字を取った金融グループです。日本では商業銀行のような個人向けのビジネスを展開していないため、知名度は低いですが、時価総額ではシティ・グループ、バンク・オブ・アメリカに次いで世界3位の巨大金融グループです。

資産運用の分野でも運用資産は約20兆円ですから、これも世界有数ということができます。その中でも強みはアジア、特に中国とインドはマーケットリーダーです。さらにロシアでは世界最大のオフショアファンドを持ち、ブラジルでも4位の資産運用規模を誇っています。BRICsに強みがある運用会社と言えるでしょう。

HSBCアセット・マネジメント・グループ(日本語)
http://www.hsbc.co.jp/jp/japanese/corp/assetmgmt/itmbusiness_j.htm
マネックス証券で販売している中国株、インド株2つのファンドとも運用はHSBCグループです。投資信託販売ランキングの上位を独走しています。今週のランキングでも1位と3位と販売は好調です(ログイン後の投信・債券取引画面からご確認ください)。

そんな成長を続ける巨大金融グループが強みのあるマーケットに特化しはじめたのです。

●何でも欲しがる理念無き運用会社
一方で未だに自前主義の「理念無き運用会社」も存在します。例えばブームになった毎月分配型を慌ててはじめたり、元本確保型という名のリスクリターンが投資家にわかりにくい商品で利益追求に走ったり。最近ではブームのインド株ファンドを販売したりと、何でもやらないと気がすまないようです。

これは小児科が専門の先生が急に外科や整形外科の看板をかけるようなものではないでしょうか。投資は誰でもはじめることはできますが、投資でリターンをあげるには強み、専門性が必要です。投資先によって求められる専門性は異なるのです。日本株ができれば外国債券もできるほど甘くはありません。
●強みに特化
HSBCは「自分たちは強い商品を作り、強くない商品は強い業者から仕入れる。」方針に転換しました。その根底には「強さを認識させるより、弱さを認めた方が投資家に信頼されるようになってきている。」との認識があります。個人投資家の心理を理解している運用会社であることがわかります。

HSBCの投資哲学は明快です。拙書「資産設計塾」の75ページでも紹介しましたが
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理論価値からの乖離を源泉とするアクティブ運用
トップダウンによるセクター配分
ローカルな視点からのボトムアップによる銘柄選択
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となっています。つまり非効率性の高い市場からの超過リターンを2つの手法を使って追求するということです。この哲学を最大限に実現できる方法が今回の経営資源集中にあるのです。

●あなたの強みは何?
さてHSBCの今回の戦略は個人投資家の皆様の運用手法にも参考になると思います。一昨年3つの運用を使い分けるというコラムを書きました。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004457.html

何でも自前でやるより、自分に出来て他人にできないことに集中すれば、そこに価値が生まれます。強みが無いと思う投資対象に関しては市場に合わせる、あるいは人にやらせる、という選択肢があります。

もう一度考えてみてください
「資産運用におけるあなたの強みは何ですか?」

今回の話のまとめ---------
●何でも自前でやろうとしても強みが無ければ競争には勝てない
●HSBCの非効率な市場でアクティブ運用に特化する戦略は理にかなっている●資産運用における自分の強みから運用手法を選択しよう

ではまた来週・・・。

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