2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
相変わらず株式投資の関する書籍が大量に出ています。3000万円、1億円、毎月10万円と景気の良い数字がタイトルに踊っていますが、そんな本を読んでいる人たちに聞きたいのは「あなたはいくらあれば幸せになれるのですか?」という素朴な疑問です。
●資本主義の現実と「プライスレス」
お金で買えない価値がある、というカード会社のCMコピーにはうなずける部分があります。しかし一方でお金が無ければできないことがあるというのも資本主義の現実です。
だからと言って某企業経営者のように「お金で買えないものは無い」と豪語するのもちょっと極端な考え方です。
皆が欲しいのは「お金」ではなく「幸せ」であるはずです。お金が無くても、幸せだと思う人もいれば、お金があっても幸せになれない人もいます。
個人投資家とお金の関係は簡単なようで難しい要素を含んでいます。個人的には身の丈に合ったお金を獲得するための合理的な方法を考えるのが良いと思っています。それをどうやって実行するかについてお話します。
●投資のリターンは人生の目的ではない
自分で選んだ株が値上がりして儲かったら、楽しいのはよくわかります。自分が思ったとおりに動くのは気持ちが良いものです。しかし資産運用の目的とは何なのでしょうか。リターンをあげて快感を得るのが本当の目的ではないはずです。
投資の目的はリターンをあげることによって資産を殖やし、それを使って自分のやりたいことを実現することではないでしょうか。つまり投資のリターンは目的ではなく手段に過ぎないのです。
とすればやみくもに資産を殖やそうとして無意味なリスクを取るより自分が必要とするお金を作るのに必要なリスクを効率的に取った方が合理的だといえるでしょう。使わないお金を持っていても意味が無いのです。
資産運用の目的と手段を勘違いしている個人投資家が世の中にはたくさんいます。マネックスの勉強会でも商品の説明をはじめる前に「いつまでにいくら」必要か認識しているかを参加者の方に聞いていますが、意外に答えられる人は多くはありません。
●投資を真面目に考える人へ
そんな観点から投資を考える場合、銘柄選択はおろかアセットアロケーションを決定するより前にやっておくべきことがあります。それはミッションとビジョンの決定です。
ミッションとは人生における究極の目標。そして、そのミッション実現のための具体的な目標がビジョンです。ミッションは普遍性の高い長期の人生観のようなもの、ビジョンは短期の具体的な目標と考えればよいでしょう。
ミッションもビジョンも最初から完璧なものを作るのは大変です。また年月とともに変わっていく可能性もあります。まずは何かを作ってみてそれを改善するというスタンスで「早くはじめる」ことが重要です。
●まず自分の夢を全部書いてみる
どうしたら良いかわからない時はまずビジョンを考えましょう。自分のやりたいことを何でも書き出してみるのです。趣味、仕事、健康、家族、友人関係などどうなりたいのかを考えてみます(拙書「資産設計塾」では付録シート1にフォーマットを用意しました)。
そしてそれらの中から自分の本当にやりたいこと、なりたいもの(例えば「世の中に役に立ちたい」「人から好かれたい」)を見つけていくのです。
書いたものを手元に置いて眺めていると追加修正をしたいと思うようになります。そうやって少しずつ改善していけば、最終的に自分の思っていることにピッタリとフィットしたミッションとビジョンが完成するでしょう。
●資産運用は自分の夢・目標との競争である
夢・目標の実現に必要なお金をどうやって作っていくのかを考える。このような視点で資産運用をとらえれば合理的な資産運用戦略を考えていくことができるようになります。
運用の成果は他人と比較して優劣を競うものではなく、自分の夢・目標を実現するのに必要なお金を作ることができるかどうかです。そんなスタンスで運用を計画的にできるようになれば、気持ちがずっと楽になるのを感じることができるでしょう。
今回の話のまとめ---------
●投資は手段である。目的であると勘違いするのはやめよう
●お金で買えない価値があるのも事実だがお金がないとできないこともある●ミッションとビジョンに基づく合理的な投資をしよう
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