2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
個人向け国債の販売が好調です。ここまで低金利が続くと預貯金では金利がつかない。そんな中、初回金利0.73%という金利は魅力的だからでしょうか。
個人向け国債はこのコラムでも以前に取り上げた商品です。
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/003231.html
さらに来月からはペイオフ全面解禁で普通預金も含め、利子のつく預金は全てペイオフの対象となります。個人向け国債へ資金シフトはこれからも進むでしょう。
ペイオフ解禁についてはこれくらいは知っておきましょう。
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/saiken/kokusai/payoff/top.html
果たして個人向け国債は買うべきなのでしょうか。今回は個人向け国債を買わない理由、買う理由を考えてみました。
●買わない理由
まず買わない理由を挙げてみましょう。買わない理由はたくさんあります。
<理由1>1年解約できないから
流動性の問題です。1年間はまず使う予定のない資金でなければ個人向け国債に振り向けてはいけません。正当な買わない理由です。
<理由2>中途換金にコストがかかるから
中途解約は発行から1年経過すれば可能ですが、その場合「直近2回の利子相当額をお支払いいただくことになります」(財務省)。例えば金利が0.73%で1年間に2回の金利を受け取り、1年後に解約する場合はどうなるでしょうか。
受取金額は税引き後2920円x2回=5840円。一方で解約のペナルティは3650円x2回分=7300円。100万円投資して1年後に解約すると利子にかかった税金の20%分はマイナスになってしまいます。中途解約を短期で行うと元本を割れるケースもありうるということです。最低でも2〜3年は保有した方が良いというのはこれが理由です。
<理由3>日本国を信用していないから
日本国に対する信用リスクから買わないという選択肢もあるでしょう。日本の財政事情に不安を感じる人は多いようです。
<理由4>インフレに負けるから
インフレになれば債券より株や実物資産(不動産、金など)を買った方が良いという判断から債券は買わないという人もいます。相場観の問題でもありますが、アセット・アロケーションの観点からは別の視点が必要です。
●買う理由
今度は逆に買う理由を考えてみましょう。
<理由1>他の円債券型商品より金利が高い
国内の円金利商品としてはMMF、定期預金、などがありますが金利から考えれば個人向け国債は相対的に魅力のある投資対象と言えるでしょう。社債を買った方が良いという方もいらっしゃるかもしれませんが、社債の信用リスクに比べると、日本国の信用リスクの方がわかりやすいと言えるでしょう。日本国に暮らし、日本語の情報を毎日入手していれば国がどのような状態になっているのか理解することは可能です。格付機関の長期国債格付けで日本がボツワナより下になっている、というのが話題になりましたが、日本国の債券とボツワナの債券、日本人個人投資家にとっては前者の方がリスク管理しやすいでしょう。
<理由2>変動金利である
個人向け国債は金利改定時の長期国債の金利から0.8%を差し引いた金利で変動します。例えば今後日本の長期金利が上昇すれば(タイムラグはありますが)個人向け国債の金利も上がります。個人向け国債には最低金利が0.05%で設定されているので、長期金利が今後下がってきた場合でも最低の利回りは保証されます。
●アセット・アロケーションから考える
こうやって考えてみると、買わない理由、買う理由ともそれぞれ一理あり最終的には個人投資家のそれぞれの判断ということになるでしょう。
しかし拙書「資産設計塾」(163ページをご覧ください)で提案している資産設計の標準的なアロケーションによれば自分の金融資産の10%程度は日本債券型商品に配分することになります。具体的にはこのような配分です。
<標準的なアセット・アロケーション例>
日本株 30%
日本債券 10%
外国株 20%
外国債券 20%
短期資産 20%
この中の日本債券10%に入れる商品として、言葉は悪いですが何が「一番まし」かという視点で考えるとどうなるでしょうか。
●完璧な運用商品はない
個人向け国債は完璧な商品とは言えません。買わない理由にあげたような様々なリスクを持った商品です。しかしアセット・アロケーションを前提にした場合、何か商品を選択しなければならないことになります。その時、個人向け国債に代替しうる、より良い商品は果たしてあるのでしょうか。投資は恋愛のように理想の人が現れるのを待つわけにはいかないのです。
恋愛と投資の違い
http://www.monex.co.jp/monex_blog/archives/004628.html
●購入はコストのかからない金融機関で
個人向け国債を購入する場合の注意は、手数料や口座管理料がかかる金融機関で買わないということ。
マネックスでも3月29日まで募集しています。もちろん上記のコストはかかりません。自分の資産の10%以内で購入を検討してみてはどうでしょうか。
個人的な話ですが、私は前回も今回も個人向け国債を申し込みました。もちろん3年は使わない資金で全資産の10%以内というルールの範囲での購入です。
今回の話のまとめ---------
●完璧な金融商品は存在しない
●アセットアロケーションから商品選択を考えよう
●個人向け国債は3年使わない資金、全資産の10%以内で
ではまた来週・・・。
マネックスからのご留意事項
「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。