面白い投資とつまらない投資

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

面白い投資とつまらない投資

資産運用のリターンは大きく分けるとアセット・アロケーション、銘柄選択、そして投資タイミングの3つに分類されます。米国のバンガード社の調査によればその中でアセット・アロケーションが全体の77%の決定要因になっているという結果があります。

投資タイミングを考えていつまで経っても投資をはじめない人がいます。投資のタイミングを考えることにはどんな意味があるのでしょうか。

●市場のタイミングに賭けるのは悪魔の囁き
投資は安値で買って高値で売るのが鉄則です。誰でもそうありたいものですが、果たして可能なのでしょうか。「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス)という投資本では1982年から2000年までの米国の株式市場(S&P500)でのデータを例に投資タイミングに賭ける危険性を指摘しています。それによるとこの期間の年平均リターンは18.4%ですが、その中の上昇率が最も高かった上位10日が無かったとすると、15.2%、上位20日を逃すと13.1%、そして上位30日を逃すと11.2%までリターンが低下するという結果が示されています(同書29ページ)。

つまりタイミングを考えるあまり急激に相場が上昇した特別な日に資金が投資されていなければ逆にリターンを下げるということです。タイミングを考えているうちに最高の投資タイミングを逃してしまう機会損失です。

●専門家の予想を聞くよりダーツで決めた方が良い?
専門家の意見を参考にしてタイミングを考えるのはどうでしょうか。多くのエコノミスト・経済評論家といったプロの人たちは予想によって収入を得ています。このような投資の「専門家」の意見は信用しても良いのでしょうか。
これも米国の例ですが、ウォールストリートジャーナルのダーツボードというコラムでは1990年からの数年間、投資専門家4人が選ぶ銘柄とダーツで適当に選んだ銘柄の運用リターンの比較を行いました。その結果、比較した30回のうち専門家がダーツ銘柄を上回ったのは16回でした。つまり専門家予想と適当に選んだ銘柄の運用リターンには差がほとんどなかったということになります。
日本にもたくさんの「有名だけど当たらない専門家」がいます。専門家というだけで信用するのではなく結果を検証してから活用しなければ悲惨な結果になってしまいます。それにしてもナゼそんな当たらない予想を知りたがるのでしょうか。私が思いつく唯一の理由は単に面白いから、というものです。経済や株価の動きに理由をつけて面白おかしく解説する。当たらなくても面白いから聞きたいというニーズではないでしょうか。

しかしエンタテイメントとしては傑作でも、投資に役立つかは別問題です。
●タイミングを考えない効率的な投資法
タイミングを考えてもリターンを向上させるのは難しいのであるなら、タイミングを考えず、資産を時間分散して投資をした方が良いということになります。その場合に、「ドル・コスト平均法」が効率的な方法として使えると思います。ドル・コスト平均法とは例えば毎月、定期的に決まった金額を継続して購入する投資の方法です。金額を固定して定期的に買付を行うと平均購入単価を引き下げることができるのです。つまらないけどこちらは投資に役立ちます。
ドル・コスト平均法
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/toshin/tsumitate/merit.html
●将来価格の上昇を期待するならドルコスト平均法で投資開始
ドル・コスト平均法は資産を殖やす魔法の方法ではありません。いくら平均的に安く買えたとしても将来的に価格が上昇しなければドル・コスト平均法で購入する意味はなくなってしまうことに注意が必要です。言い換えれば、ドルコスト平均法が使えるのは現在は価格の上下動を繰り返しながら将来的に今の水準よりも価格が上がると予想される資産に使うべき、ということになります。
マネックス証券では現在2つの積立方法を選択することが可能です。
http://www.monex.co.jp/visitor/shohin/toshin/tsumitate/index.html
さらに5月に合併して誕生するマネックス・ビーンズ証券では、投資信託に3つ目の積立方法が追加されて全部で3通りになります。
http://www.monex.co.jp/visitor/gappei_schedule/annai/13_tumitate/index.html

投資は楽しむのが目的ではなく、殖やすための手段というのが資産設計の考え方。早く積立をはじめて、長期で資産設計することをおすすめします。

今回の話のまとめ---------
●投資タイミングを考え過ぎると最高の投資タイミングを逃すリスクがある●タイミングを考えない効率的な投資を可能にするドル・コスト平均法
●将来価格の上昇を期待する市場に積立で早く投資をはじめよう

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