2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
前回のコラムに関してはたくさんのメールをいただきました。ありがとうございます。前回のコラムは下記でご覧いただけます。
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/005936.html
その中にこんな意見がありました。
「ノーロードファンドについては、証券会社の方の意見としては画期的と思いますが、長期保有を前提とした場合、販売手数料よりも信託報酬の方が重要ではないでしょうか?」
「インデックス型投資信託は販売手数料のかからないノーロードが有利というだけでは不十分ではないか。」
鋭いご指摘です。今回はこれらのご指摘について真面目に考えてみたいと思います。
●投資信託は10万円から投資をはじめる商品の切り札
何度も繰り返しになりますが、投資信託は1万円から投資ができる優れた特長を持つ商品と考えています。投資信託を買ってはいけない商品と批判する人の多くはその問題としてコストがかかるということ、あるいは運用成績の問題をあげますが、少なくともインデックスファンドに関しては後者の問題は(インデックスに連動している限り)重要ではありません。
焦点を絞って話を進めるため、ここからはインデックス型投資信託のコストの問題について限定して話を進めます。
●販売手数料はノーロードで
インデックスファンドはノーロードで、というのが私の意見ですが、信託報酬についても考慮すべきというのが頂いたご意見です。信託報酬は保有する期間に応じてかかる手数料であり、長期の保有を行えばその分運用コストをアップさせる要因になるのは事実です。
●長期で持てば信託報酬がもったいない
具体的にシミュレーションしてみましょう。下記の2つのインデックスファンドがあった場合、どちらの商品を選択した方が良いのでしょうか。
ファンドA ノーロードで信託報酬0.84%
ファンドB 販売手数料2.1%で信託報酬年0.546%
結論から言えば、どちらを選ぶかは保有する期間によって決まってきます。例えば1年間で売却してしまう場合はファンドAは0.84%ですが、ファンドBは2.646%にもなってしまいファンドAがコスト面では有利です。しかし運用期間が7年とするとファンドBの年間コストも0.846%となりファンドAとほぼ変わらなくなります。それ以上の期間になればファンドBのコストが有利になる計算です。(計算は基準価額が変動しない単純計算です)
インデックスファンドで長期で運用する場合、販売手数料と信託報酬も合わせて考えてコスト計算をし、ファンドを選んだほうが良いというメールでのご指摘は理にかなっています。(ご指摘ありがとうございました)
●その前にリレー投資でETFに切り替えを
しかし長期のインデックス運用をする場合はETFという商品があります。随分前になりますがこのコラムでインデックス型投資信託からETFへのリレー投資をご紹介しました。
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/002332.html
なぜETFにスイッチするかというとETFは信託報酬が圧倒的に低いからです。例えば東証に上場しているTOPIX連動型上場投資信託は信託報酬が年0.1155%となっています。このようなリレー投資によって、インデックス型投資信託でドルコスト平均法とETFの低コスト運用の「良いとこ取り」ができるのです
(ETFの売買手数料からタイミングを考慮する必要があります)。
もしこのようなリレー投資を1年〜3年くらいで行うのであれば、現実問題としてはインデックス型投信においても信託報酬よりも販売手数料の方がコストに大きく影響することになります。
●信託報酬は投資家とファンド関係会社が同じ方向を向く手数料
販売手数料と信託報酬はその位置付けが異なります。販売手数料は販売会社の収入であり、売買の頻度が上がればその都度入ってくるものです。つまり回転売買をすればするほど販売会社が儲かる仕組みなのです。一方の信託報酬は保有金額と保有期間によって決まるものです。長期に多くの金額を運用してもらうと増える仕組みです。そしてその収入は信託銀行、運用会社、販売会社で分ける仕組みになっています。信託報酬とは運用にかかわる3つの会社がなるべく長く、そしてたくさん保有してもらうインセンティブになるということです。これは個人投資家と同じ方向を向いた手数料といえるのではないでしょうか。
インデックス型投資信託に関しては運用リターンに大きな差がありませんから信託報酬が低いほうが有利と言えるでしょう。しかし運用実績に差が出るアクティブ型の投資信託では信託報酬が低ければ良いファンド、とは一概には言えないことを知っておいてください。
マネックス・ビーンズ証券で販売しているインデックス型投資信託のうちインデックスファンドTSPは販売手数料が2.1%になっています。これはノーロード化できるよう進めていきたいと思っています。
今回の話のまとめ---------
●インデックスファンドの信託報酬は安い方が良い
●ただし2つの手数料を合わせたコスト計算は保有期間によって変わってくる●ETFへのリレー投資も考えて低コストのインデックス運用を
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