2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
マネーブームがやってきているのをひしひしと感じます。マネックス・ビーンズ証券の勉強会は今年のはじめまでは100名〜200名までの開催が多かったのですが、最近は300名、400名といった大規模な開催も珍しくなくなりました。先着順であっという間に満席になる場合も珍しくありません。これからも多数開催していきますのでチェックしてみてください。
http://www2.monex.co.jp/marketcafe/benkyo/index.html
マネーブームでマネー誌の販売も好調なようです。しかし一部の良心的なものを除いて多くのマネー関係の雑誌・書籍には役に立つというより害になってしまうものが多いと思います。
●人の意見を鵜呑みにしてはいけない
例えば読者に人気があるのが個別銘柄の推奨記事です。たくさんのアナリストや株式評論家といった「専門家」が銘柄をピックアップしていますが、果たして言われるままに投資をして成果をあげることができるのでしょうか。
そんな安易な記事がほとんどなのですが、誠実な取材をしている記事を見ることもあります。日経マネー10月号の売れている金融商品・損得のウソホントは広告を出している金融機関ではなく個人投資家の立場に立った内容であると感心しました。
紹介されている商品を取り上げて説明していきましょう。
●リスク限定型投信
リスク限定型投信とは設定から一定の期間以内に日経平均株価が2〜3割以上下がらなければ、4〜5%程度の利回りで戻ってくる、というような仕組みです。(マネックス・ビーンズ証券では販売していません。)
オプションを売却してそのプレミアムを使って分配する仕組みです。販売手数料が差し引かれリターンが低くなる上、万が一日経平均が暴落すると大きな損失になる何だか割りに合わない商品であると日経マネーでは踏み込んだ説明がされています。
●特約付き外貨定期預金
これは為替が円安なら円、円高なら外貨で払い戻すという商品です。つまり円安になっても為替差益がそれほど得られず、円高になると外貨で戻ってきて為替差損が発生する仕組みになっています。
これもオプションの売却で高金利を実現している商品ですが、果たして購入する時点できちんと理解している人はどのくらいいるのでしょうか。
●金利1%円定期預金
オプションの売りを使った商品がもう1つ紹介されています。「期限延長特約付き預金」と言われるものです。運用期間を預金者ではなく銀行側が決定する仕組みになっています。この商品は金利が上昇してくると期間が延長されて1%で定期の運用を続けなければならなくなるリスクを持っています。しかもそのような場合に中途解約すると元本割れになる可能性もあるのです。
日本の金利が急上昇してしまうと銀行は期限延長を当然してきますから、そうなると低い金利のままで資金が10年間拘束されてしまうのです。
●金融商品を裏から見る
日経マネーが提案している金融機関にだまされない方法は商品を販売している金融機関の側から見るというものです。販売している新商品にはその商品から利益を得ようとする金融機関の目的があるはずだ。それを理解することができれば、商品のメリット・デメリットが見えてくるということです。
新しい金融商品の多くは個人投資家に錯覚を与えることによって合法的に収益をあげようという金融機関のしたたかな戦略です。金融機関の立場からどのように投資家にマーケティングしているかを考えれば錯覚がどこにあるのかを知ることができます。
●シンプル イズ ベスト
私が商品選択で重要であると思うのは仕組みがシンプル(単純)であることです。法律などの規制によって複雑になってしまうのはある程度仕方ありませんが、基本的に金融商品は仕組みが複雑になればなるほどコストが高くなり、リターンを低下させます。シンプルでわかりやすい商品であればリスクの所在も理解しやすくなりますし、解約しやすいといった流動性のメリットもあります。
日経マネー10月号は600円の雑誌ではありますが、安易に投資を行って大きな後悔をすることを考えれば、安い買い物です。このような真っ当な記事を理解することで600円という投資以上のリターンが期待できると思います。
マネー誌の特集も株式のテクニカル分析や株主優待ばかりでなく真に個人投資家の役に立つこのような記事が増えれば真っ当な読者層をつかむことができるのに、と思います。
ちなみに日経マネーでは私も「お金を殖やす前に考えること」というコラムを担当しています。お時間あればお読みください。
今回の話のまとめ---------
●マネーブームに踊らされてはいけない
●オプションを使った仕組み商品には見えないワナが多い
●投資商品の選択は基本的に「シンプル イズ ベスト」
マネックスからのご留意事項
「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
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