資産設計と社会貢献

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

資産設計と社会貢献

資産設計はお金を殖やすのが目的ではなく、お金を殖やすことによって夢・目標を実現するのが最終目的です。だからお金を殖やす方法を考える前に何が人生の夢・目的であるかを考え、いつまでにいくら必要かを具体化する必要があるのです。

このように書くと完璧な夢や目標を作成しないと投資がはじめられないと思うかもしれませんがそんなことはありません。なぜならそのような夢や目標は永遠に変わらないものではなく、取り敢えず作って必要に応じて修正していけば良いからです。

私自身も人生のビジョンとミッションを日々考えていますが、最近資産設計を通じて社会貢献はできないのかと考えるようになりました。

今週月曜日の日経ラジオで株式評論家の早見雄二郎さんとご一緒しました。またバリューサーチ投資顧問で投資アドバイスをしている松野實さんにもお会いしました。お会いして驚いたのは、お2人とも社会貢献を真剣に考え実践しているのです。

資産設計と社会貢献には接点を見つけることができるのでしょうか。

●「エコファンド」で社会貢献できるのか
資産設計と社会貢献というとまず思い出すのがいわゆる「エコファンド」です。環境問題に関し社会貢献しながらリターンも狙えるということで脚光を浴びましたが、実際の運用を見ると、結果的にどこがエコなのか首をかしげたくなるような投資をしているものもあります。

例えばあるエコファンドの直近の組入れ銘柄をみるとTOPIXと似ていることに気がつきます。組入れ比率ベスト10の中に、トヨタ自動車、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、NTTドコモとTOPIXの上位銘柄と4銘柄が重複していました。

リターンを見ても設定来そのファンドがマイナス22.43%に対し、同期間のTOPIXはマイナス13.83%。直近1年で見てもインデックスとあまり変わらないリターンです。

これではインデックス運用とあまり変わらないのではないか?と疑問を持ってしまいます。
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/005119.html

●ソーシャル・ベンチャー
ファンド以外にも新しい動きがあります。最近ソーシャル・ベンチャーという言葉を知りました。これは社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)と呼ばれる人が、単なるボランティアのような方法とは異なりビジネスの手法を使って、社会的な課題の解決を目指すものです。純粋な商業ベースでは解決できない医療、福祉、教育、環境、文化などの社会サービスを提供するのです。このようなソーシャル・ベンチャーを金銭面で応援するような動きが日本でも始まっているようです。

このようなソーシャル・ベンチャーは社会的な意義が大きく、将来性の高い分野であると思いますが、日本では現時点では規模が小さく、情報も不足しており、一部の本当に熱心な人たちの世界に留まっています。本当に出資しても大丈夫なのかといった不安があって投資に踏み切れない人も多いのではないかと思います。

またこのような投資は社会貢献に重きを置いているものがほとんどで、利益については二の次という意味で通常の投資とは異なる側面が大きいのは否めません。二兎を追うのはなかなか難しいのが現実です。

●投資の利益は社会からの感謝
エコファンドやソーシャル・ベンチャーに投資をしなくても通常の株式投資で社会に貢献することは可能だと思っています。それは投資でリターンをあげることです。

投資によって利益をあげることができたということは、その投資先の企業価値が上昇するということです。それはその企業が社会から評価を受けているということを意味します。消費者から支持されなければ小売業は儲かりませんし、技術革新がなければメーカーはモノが売れないからです。

そのような会社に投資をしていれば、資金面でのサポートという意味で投資家もその会社のやっている事業に貢献していると言えるのです。

逆に投資でリターンが上がらないということは、それは投資先が社会に支持される商品・サービスを提供できなかったということです。そのような投資は社会に貢献していない(資金が非効率に使われた)ということができるのです。
●本当の社会貢献とは
投資でリターンを得たのであればそれを寄付すれば更に社会に貢献することができるかもしれません。現実に企業でも利益の1%を寄付するといった活動を行っている会社もありますし、個人でも同じようなことをしている人は存在します。

その時問題になるのはそんな寄付をどこにどのようにすればよいのかということです。お金を出せばその人が幸せになる、というほど世の中は簡単ではありません。社会貢献をするにしても社会の状況を理解し、どのような形でコミットしていくべきかを考えないと善意が報われないこともあるのです。

社会貢献も最後は自分の人生を豊かにしてくれる「自分のためにするもの」です。人生の夢・目標の中に社会貢献をどう結び付けていくか・・・次の大きなテーマになるのではないかと思っています。

今回の話のまとめ---------
●資産設計は単にお金を殖やすことが目的ではない
●エコファンドを買えば社会貢献できるほど世の中簡単ではない
●投資で成功することは投資先を通じた社会貢献の1つの方法

ではまた来週・・・。

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