2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
ライブドア事件をきっかけに「企業の経営内容を徹底的に調べあげて投資する強じんな投資家」(日経新聞)にならなければ投資は成功しないという意見が出てきました。
前から書いているように自分が知っている会社、自分が好きな会社というような「身近な投資」では長期的なリターンが実現できないと思います。一方で投資先の企業の中身を理解できないと投資すべきではないというのは時間に制約のある個人投資家にとっては現実問題として無理があります。少なくとも私自身が実践している銘柄選択手法とは異なります。
●指標を使ったバリュー投資
株式分析のファンダメンタルズ指標としてPER、PBRといった数値があります。これらの数字はネット上で誰でも簡単に調べることができます。公開されている分析指標を使って相対的な割安株を探し投資対象を決定するのが私が実践している方法です。
PER、PBR、配当利回り、などを使って同じ業種の中での割安な銘柄をスクリーニングし投資対象を選択しています。データはしっかりチェックしますが個別の企業の業務内容や経営者の資質、ビジネスモデルといったことは判断材料にはしていません。
(詳しい投資方法は拙書「資産設計塾 実践編」144ページをご覧ください)
結果はすべての銘柄で成功しているわけではありませんが、市場平均を上回る実績が出ています。
マネックス証券の勉強会でも銘柄選択手法について講義を行った実績のある運用会社、バリューサーチ投資顧問では東証33業種別のPER、PBR、そして配当利回りをホームページに公開しています。自分が投資しようとする企業を業界平均と比較してみることは投資の参考になると思います。
http://www.value-search.co.jp/hint.htm
このような業種平均と個別企業の数字を比較すれば会社の中身を知らなくても投資判断は可能だというのが私の考えです。
●業務内容を調べても理解できなければ意味が無い
例えば特許や新しい技術、特殊な業界の取引慣行など企業分析の細かい話になるとキリがありません。しかも自分が完全に理解できなければいくら調べていっても最終的な判断材料にはできないのです。経営者の資質といっても社長に直接話を聞ける可能性も低いでしょうし、もし会えたとしても客観的な判断ができるのかどうか。少なくとも私には自信がありません。
であればそのような主観的な要素が入る可能性があり、しかも時間と手間のかかる定性的分析(数値化しにくい分析)には時間を使わず、PER、PBRといった定量的な株価の分析指標を使って機械的に銘柄を選んだ方が合理的と思うのです。
●プロでも間違えることはある
日経新聞に某運用会社が昨年末にライブドアの株式の7%弱を保有していたとの記事が掲載されています(本日1面)。ファンドの運用成績は良いに越したことはありませんが、投資先すべての銘柄でリターンを得るというのは非現実的です。プロでも投資した会社がすべてプラスのリターンになることなどはありません。プロの腕の見せ所は分散投資によってファンド全体でインデックスを上回るリターンが実現できるか、です。
そのためにも特定の銘柄に資金を集中させるのではなく株式投資も銘柄分散をすることが必要条件と思います。また銘柄だけではなく業種も分散し特定業種に偏らないポートフォリオを作るのが最悪の事態を招かないための方法です。
●公開されている情報が正しいことが前提の株式投資
しかしそのような投資を安心して行えるためには、企業が開示しているデータが正確であるという前提が必要です。なぜならデータの信頼性がすべての基本になっているからです。
公開されている情報が虚偽であったり、誤った情報が流されてしまうとそんな前提が崩れてしまいます。
正確な情報に基づき投資を行った場合結果は自己責任です。しかし開示されている情報に虚偽や粉飾があるのなら個人投資家は報われません。そのような企業があれば市場から退場させなければフェアな投資はできないのです。
投資は勉強しないと成功しません。しかしその勉強の方法にはどれが正しいという正解は無いと思っています。私も自分が実践している方法が絶対正しいとは思っていません。ただ言えることは自分のお金で実際にやってみた方法であるという事実だけです。
今回の話のまとめ---------
●会社の中身を知らなくても投資判断は可能
●個別の売買ではなく運用資産全体でのリターンが重要
●正確な情報に基づく分析が投資の前提
ではまた来週・・・。
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