預貯金だけの資産運用に決別を

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

預貯金だけの資産運用に決別を

昨日、日銀が金融政策決定会合で量的緩和政策の解除を決定したという報道がありました。その中で注目したのは日銀の政策委員が中期的に考える望ましい物価上昇率の目安として前年比0〜2%(中心値1%)という数字を明記したことです。

 日経ネットの記事によれば、総務省が3月3日発表した今年1月の全国の消費者物価指数は97.7と前年同月比0.5%上昇(生鮮食品を除く)しました。国内景気の低迷によって1998年7月から下落基調が続いていたのが2005年10月にプラスマイナスゼロまで戻り、11月、12月と0.1%のプラスとなりました。

 この背景には原油高によるエネルギー関連価格の上昇があるわけですが、日本経済はついに新しいフェーズに入ってきたようです。

●デフレからインフレへ
 新しいフェーズとはデフレからインフレへの転換です。デフレとはモノの値段が下がっていくこと。相対的にお金の価値が上がります。「昨日の100円より今日の100円の方が価値がある」状態です。

 2000年代前半にはユニクロのフリースに代表される価格破壊という言葉がありました。価格の下落によってお金は持っているだけで実質的な価値が殖えていったデフレの時代です。

 一方インフレとはデフレの逆。モノの値段が上がっていく状態です。お金の価値が下がっていくことになりますから「今日の100円より昨日の100円の方が価値があった」状態です。今後インフレになれば放っておくとお金の実質的な価値が下落していくことになります。

●もう1つのインフレ要因
 インフレ要因として原油価格の上昇といった要因に加え、日本独自の問題として消費税の引上げがあります。現在5%の消費税は今後引上げが予想されます。例えば消費税が10%になれば105円のものは110円になります。つまり消費税の引上げは確実にインフレ要因として作用することになるのです。

 金融市場でどのくらいの物価上昇が見込まれているかは長期国債と物価連動国債の金利を比較することで計算できます(詳細は拙書「資産設計塾 実践編」23ページ)。消費税引上げによる影響も含め、10年後には物価が今より約8%上昇していると予想されています。つまり今持っている100万円はそのままにしておくと実質的な価値は10年後に92万円になる可能性があるのです。

●さらに襲いかかるリスク
 インフレになる要因としては円安もリスクです。円安とは円の価値が下がっていくこと。例えば1ドル118円前後の為替レートが150円になれば、1ドルの輸入品の価格は118円から150円に値上がりすることになります。

 日本の食糧自給率(カロリーベース)は40%です。つまり毎日食べているものの60%は輸入品ということになります。円安によって生活必需品である食品の価格が上昇することになれば生活に大きな影響が出てしまうのです。

 為替について考えておくべきなのは「円高になったらどうする」ではなく「円安になったらどうする」というシミュレーションです。

●守る資産設計
 ではそんな時代の転換点でどのような対策を考えたら良いのでしょうか。目減りしないために少なくとも守る資産設計をする必要があります。守る資産運用とは実質的な資産を目減りさせないように、最低でもインフレ率よりも高いリターンを目標に資産を殖やしていこうというものです。

 例えば10年で8%のインフレが予想されているのであれば8%以上の運用を行うことができれば資産の目減りを防ぐことができるからです。そのためにはある程度のリスクを取らないと実現はできません。

●預貯金だけの資産運用に決別を
 預貯金の現状の金利では、8%のリターンは実現できません。現状の金利水準が続くとすれば株式、外貨などのリスク資産への投資を考えることになります。株式や外貨への投資をはじめる勇気が無いという場合でも、少なくとも普通預金に預けておくよりは個人向け国債なども検討してみることが重要です。今回は初回の金利が0.85%です。
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new/news6032.htm
 はっきりしていることは預貯金だけの資産運用に決別しないと守る資産設計は実現できないということです。行動することから守る資産設計ははじまるのです。

今回の話のまとめ---------
●デフレからインフレへ世の中のフェーズが変わりつつある
●最低でも守る資産設計をしなければならない
●預貯金だけの資産運用に決別を!


ではまた来週・・・。

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