2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
20日に発売されたばかりの日経マネー5月号の別冊付録に退職マネー安心運用BOOKが付いています。その中で「資産設計塾」(自由国民社刊)の応用編である資産設計塾シニア編が掲載されています。
http://nikkeimoney.jp/magazine/index.html
この特集はこれから第2の人生を始めようといういわゆる「団塊世代」の方が主役です。シニアになるとどこが変わってくるのか。詳細は雑誌を読んでいただくとしてこのコラムを読んでいる方が役に立つと思う要点を紹介します。
●団塊のリスクは長生きのリスク
長期投資の基本は殖えた資産を再投資することによって複利で資産形成していくことです。しかしシニアがそのような方法と異なるのは、単に複利で殖やしていくだけではなく、運用しながら一方で資産を取り崩していくというところにあります。
そのシミュレーションには何年間で資産を使いきるかという前提が必要です。また運用可能な利回りも問題になります。これらの仮定を取りあえず作ってみて具体的な数字でイメージできるようになることは大切なステップです。
例えば5%で運用して、30年で使い切る例を計算してみましょう。30年間毎月10万円引き出して生活費に充てると仮定すると、5%の運用レートで1845万円必要となります。
では運用しないとどうなるか。運用利回り0%で計算すると同じ30年で3600万円必要という計算になります。運用利回りによって約2倍の差が出てしまうのです。
また30年で良いのかそれよりも長いのか短いのかという点も不確定要因です。30年で想定していて40年生きてしまうと資産設計の観点からは困ったことになります。つまり長生きすることがリスク要因として関係することになるのです。
●必要なお金はいくら?
大まかなイメージがわいたら、次に定年後の支出と収入をもう少し具体的にシミュレーションしてみます。
生命保険文化センターが老後の生活費総額について目安を出しています。数字にはかなりの個人差があると思いますが、40―45歳頃の年収が700〜1,000万円の人が65歳定年、夫婦2人でゆとりある暮らしをするには総額で1億円必要という結果です。
それを年金や退職金で埋めて、足りない金額については自分で用意することになります。年金や退職金については正しい金額ではなくてもおおよそのイメージを知っておきましょう。ここでも何も数字が無いのと大まかに合っている数字があるのではやる気も対策の具体性も違ってきます。
●それでも分散投資
そして次に自分で運用する方法を考えていくことになります。ここではやはり分散投資の出番になります。定年になったら朝から心ゆくまで株式投資を堪能したい、という人は別としてアセットアロケーションが運用の最重要事項になります。
6つの運用資産(アセットクラス)に配分を決めてその中で商品を選んでいく。先にどのリスクをどの位取るのか、を決めてからその中に入れるものを決めるといういつものプロセスです。
●慎重派のためのアセットアロケーション
「資産設計塾」では1年間の最大損失を20%以内に抑える「標準的なアセットアロケーション」を提案していますが、団塊の世代にはさらにリスクを低くして1年間の最大損失が10%以内に抑える資産配分例を提案しています。
これは日本債券を50%にして日本株式、外国株式、外国債券を各10%まで落とし、流動性資産とその他の資産で20%にする慎重派のためのアセットアロケーションです。
どこまでのリスクを取れるかはリスク許容度という考え方で説明できますが、年齢だけでは決められるものではありません。決定要素の1つではありますが同じ年齢でも耐えられるリスクは他の要因で大きく変わってくるのです。リスクが低くなるということは期待できるリターンも低くなります。既に充分な資産を持っているという方はこのような運用が検討できると思います。
●早く始めよう
定年後の資産運用は退職して時間が出来てからじっくり考えて、というのでは時間が勿体無い。どうせ始めるのであれば一日も早く始めるに限ります。資産運用には時間がかかるからです。ワインが1年で熟成しないのと同様、1年で資産を一気に殖やそうと思っても時間が無ければどうにもなりません。
最近、資産設計のセミナー終了後に参加者の方から、団塊世代にターゲットを絞ったセミナーを開催して欲しいという要望をいただくことが多くなりました。このような団塊世代に向けたセミナーの要望が強ければマネックス・ユニバーシティで企画していきたいと思います。
今回の話のまとめ---------
●シニア世代は資産設計の方法が少し違う
●しかし基本がアセットアロケーションである点は変わらない
●勉強して早く始めることが重要だということも変わらない
ではまた来週・・・。
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