2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
金融界の論客の方々と個人投資家が利用する金融商品について議論をする機会がありました。金融商品の裏側を知り尽くした人たちの話は生々しいものでしたが、そこでわかったことは金融商品のカラクリに気がつかず騙されている個人投資家があまりに多いという現実でした。
個人投資家が買ってはいけない商品として全員が一致したのが外貨預金。理由は割高な為替手数料と金利です(稀に例外もありますが)。なのに預貯金しか持っていない人が最初の外貨運用ということで考えるのが外貨預金。これはどうしてでしょうか。
●2つのことは一度に考えられない
はじめて外貨投資をする人が外貨預金からはじめる理由。それはこういうことではないかと思っています。例えば、預金→外貨預金なら預金に外貨が加わっただけでわかりやすいのですが、預金→外債、となると外貨と債券と2つの新しいものが入ってくるので一気に考えることができない。だからまずは外貨イコール外貨預金となってしまうのではないでしょうか。
かく言う私自身も10年以上前には外資系銀行に口座を開き外貨預金をして金利だけを見て満足していた時期がありました。ある時実際の受取金額を計算していると手数料が異様に高いことに気がつき解約した記憶があります。
●毎月お金が要りますか?
外貨預金と並んでもう1つ槍玉に上がっていたのが、毎月分配型外債ファンドと言われる商品です。外国債券に投資して毎月定期的に安定した分配金が支払われるという安定したキャッシュフローが人気の理由です。しかし果たして本当に毎月定期的にお金が必要だからこのようなファンドを購入しているのでしょうか。
なぜなら毎月分配型の分配金再投資(払われた分配金を税金を差し引いてまた買付けること)という意味のない方式を選択している人もいるからです。忠実な納税者と言えば聞こえは良いですが、基準価額が下がって解約することになれば利益が上がらないのに税金を取られるということになりかねません。
毎月分配型外債ファンドは仕組みを理解していない人が購入しているのではないかと心配です。
●自分で買う外債
また世界主要先進国の国債に分散投資するのであれば、自分でアメリカ国債などの外国債券を組み合わせて買うのと比較してみてはどうでしょうか。分配金が必ず毎月あることにはこだわらない人で数百万円単位で購入するならいくつかの債券と通貨分散して購入できます。
海外の金利は5%前後ですが、外債ファンドは信託報酬が年率1.3%程度かかるものもあります。自分で直接買える外債が投信の中に入るとコストを取られている訳です。外債ファンドを1000万円保有していると年間で信託報酬は約13万円です。付加価値に見合うコストかよく考える必要があります。
●為替レートと基準価額の違い
外貨預金と外債ファンドに関してはもう1つ不思議に思うことがあります。それは外債ファンドを購入している人は基準価額の変動にはほとんど無頓着なのにどうして外貨預金の場合はナゼ持ち値(購入時の為替レート)にこだわるのでしょうか。
外債ファンドは金利部分を分配金として支払いますが、為替の変動で基準価額は変動します。基準価額が下落しているということは外貨預金で為替差損が出ているのと同じ状態なのにナゼか気にならないようです。
一方の外貨預金では、購入した時の為替レートにこだわり持ち値と比較していくら損得があるかを気にする人が多いのです。
つまり外債ファンドでは持ち値の呪縛が無く、外貨預金では持ち値に縛られている人が多いということになります。基準価額はよくわからないから気にならない、為替レートは毎日ニュースで報道されるから気になってしまう・・・。合理的な行動ではありません。
●勉強しないと騙される
このように外貨商品をいくつか見ただけでもいかに人間の物事の判断が主観的でバイアスのかかったものであるかわかると思います。
資産運用におけるこのような非合理的な感覚は行動心理学で説明できるものです。逆に言えば行動心理学を理解しなければ商品のカラクリに気がつくことも無いでしょう。行動心理学を悪用した金融商品には気をつけなければいけません。
投資は勉強しないと成功しないという理由の1つがここにあるのです。
今回の話のまとめ---------
●外貨預金はコストを確認してからはじめよう
●金融商品は内容をよく理解してから購入するようにしよう
●行動心理学のワナに陥らないように注意しよう
ではまた来週・・・。
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