BRICsオープンが買えなくなってしまう本当の理由

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

BRICsオープンが買えなくなってしまう本当の理由

マネックス証券のWebによるとHSBC BRICs オープン(以下BRICsオープン)の申込み受付が2006年6月29日午後3時をもって一時的に停止されることになりました。受付再開の時期は現状未定です。

 ファンドの販売停止というと何か悪いニュースがあったのかと思うかもしれませんが、このファンドには何もトラブルはありません。むしろ運用成績は5月12日現在、設定以来半年強で騰落率は+32.9%と好調に推移しています。http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M664.pdf

 成績が良いのに一時停止するのは資金流入が急激で運用に支障をきたす可能性があるからです。

 BRICsオープンは主にルクセンブルグ籍米ドル建てのHSBC GIF BRICフリースタイルに投資をしています。このファンドに世界各国から予想以上のペースで資金が流入した結果、理想とする運用がやりにくくなってしまったからです。昨年末には2000億円強であったのが直近では4000億円以上に膨らんできているようで、機動的な運用ができなくなる懸念が出ているということです。

●BRICsオープンの運用手法
 BRICsオープン(正確には投資しているHSBC GIF BRICフリースタイルの運用、以下同じ)はグローバルなトップダウンとローカルなボトムアップの組み合わせというHSBCならではの特色ある運用方法になっています。

 意思決定プロセスはまずマクロ経済を中心にグローバル運用の運用責任者と各国の運用担当者が国別の資産配分を決定し、次のステップとして各国の市場で長年運用しているスペシャリストの意見をベースに、銘柄選択を行っていきます。

 このファンドはフリースタイル運用と言い、インデックスのようなベンチマークを意識した運用にはなっていません。したがってファンドマネージャーが本当に良いと思った銘柄に集中して投資をするようになっています。絶対水準での高いリターンを目指す訳ですが一方でその分リスクも大きな運用になっていると言えます。

 実際の組入れ銘柄比率、業種別の構成を見ると特定の銘柄、業種への配分が高くなっていることがわかります。

●なぜインドオープンやチャイナオープンは申込み中止にならないのか
 同じBRICsに投資をするファンドでもインドオープンやチャイナオープンは販売中止にはなっていません。その理由は運用目標の違いにあります。

 インドオープンやチャイナオープンは市場全体が割高であるとしてもその中で相対的に割安な銘柄を選択してインデックスよりも高いリターンを目指すことになるのです。

 一方、BRICsオープンは絶対リターンが投資の目標です。一方の中国、インド、ブラジル、の各ファンドは資金をほぼ100%それぞれの株式市場に投資します。そして目標はそれぞれの市場のインデックスに対する相対的なリターンになります。

 例えばBRICs諸国の株式がグローバルに見て明らかに割高であるという判断をした場合、BRICsオープンは投資先のファンドで最大投資比率を50%まで下げることができます。つまり半分を現金に一時的に避難させられるということです。また投資する国も2ヶ国まで減らせます。50%を現金、25%がブラジル、25%がロシアといった偏った配分も可能なのです。

 BRICsオープンに大量の資金が流入してくると、割高な環境下にあっても投資先を見つけて株式を購入しなければならない状態が発生します。投資先として有望な銘柄には限界がありますし、価格水準から購入できないタイミングもありえます。そのような時期に資金が流れ込むとファンド全体のリターンにマイナスの影響が出てくる可能性があるのです。

 これがWeb上に「フリースタイルという運用手法においては、これ以上の資金流入はファンドの運用にとって好ましくない」と書いてある真意なのです。
『HSBC BRICs オープン』お申込一時停止のお知らせ
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new/news6058.htm
 かつてピーターリンチが運用を行い高いリターンを上げたことで有名になったマゼランファンドも投資資金が大きくなるにつれ、機動的な運用が出来なくなり1997年から新規の販売を中止しました。アクティブファンドには適正な運用サイズというものがあるのです。

●これからどうなる?
 今後申込みが再開されるのはいつになるかわかりませんが、ファンドの解約が増えてきて運用できるサイズになる、規制緩和や投資先の市場自体の成長によって大きな金額であっても魅力的な投資先を見つけられるようになる、といった情勢変化が起これば可能性はあるでしょう。

 なおBRICsオープンは申込みを停止してからも解約は従来どおり可能です。またBRICsオープンの運用自体はもちろん継続されますし、月報・週報などのディスクローズも継続されます。ファンドを保有している方は今までと変わらないサービスを受けられます。

 申込みが中止になるからと言って慌てて買う必要はもちろんありませんが、気になる方は申込み停止になる前に商品概要をチェックしておきましょう。http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/syohin/tousin/kihon/guest?MeigCd=++0049910000

今回の話のまとめ---------
●アクティブファンドには適正な運用規模がある
●募集を中止するのは既存の投資家の利益を考えた良心的な判断
●BRICsオープンを慌てて買う必要は無いが、気になる人は商品概要をチェック
ではまた来週・・・

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