似て非なるもの ナンピンとドルコスト平均法

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

似て非なるもの ナンピンとドルコスト平均法

似て非なるもの ナンピンとドルコスト平均法

 日本の株式市場は落ち着きを取り戻しつつありますが、この2ヶ月で大きく調整しました。日経平均は4月7日の終値17563.37から昨日の終値14470.76までで2割近い調整です。

先週書いたように相場の調整局面では売られすぎの銘柄が増え、銘柄選択の方法によっては割安に株式を購入できるチャンスが到来します。
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/006950.html

 保有している株式と同じ銘柄を安くなったところで買い増しする個人投資家もいると思います。下がった時に買いを入れる逆バリの発想ですが、高値で買って安値で売ってしまう「感情に支配される人」にはなかなか出来ないことです。
●ナンピン買いの光と影
 株式投資において高値で購入した銘柄が値下がりした時に買い増しをしていく投資方法をナンピンといいます。例えば1,000円で1,000株購入した株式が800円まで値下がりした時、さらに1,000株を買い増すと平均購入コストを1,000円から900円に下げることができます。

 ナンピンをすると確かに購入コストは下がりますが、保有株数は増加します。上記の例では購入コストは100円下がりましたが、保有株数は2倍に増えてしまいます。つまりリスクは2倍になります。1,000株保有の時は10円下がると1万円の損失だったものが、2万円の損失になるということです。

ナンピンは持ち値は下がるがリスクは増大する方法なのです。

●もう一つの買い下がり
 下げ相場で買い下がり平均購入コストを下げるという意味ではドルコスト平均法による積立ても同じです。こちらは株式ではなく金額を固定してで買い付けができる投資信託などで活用する方法です。一定金額にすることで下がった時に多く、上がってくると少なく自動的に数量調整して購入できるという仕組みになります。

ドル・コスト平均法の説明はこちら
http://www2.monex.co.jp/lounge/pdf/toranomaki/tsn03_p03.pdf

 ナンピンもドル・コスト平均法どちらも買い下がるという意味では同じですが、比較してみると違いがあることに気がつきます。

<違い1> 投資対象の違い
 ナンピンは個別銘柄への投資になります。一方のドル・コスト平均法の場合、投資信託の積立てであれば分散された資産への投資になります。個別銘柄へのナンピンによって資産が1つの銘柄に益々集中することになります。結果リスク分散が行いにくくなるデメリットがあるのです。特に小さな資金で投資する場合には個別銘柄へのナンピンは危険です。

 一方の投資信託を使ったドル・コスト平均法なら同じ商品を継続して購入したとしても投資先の構成銘柄が分散されています。日本株の投資信託を積立てるのであれば、資産全体に対する比率を30%まで、というようにコントロールすれば全体のリスクは分散することができるのです。

<違い2> 金額固定と数量固定
 株式のナンピン買いでは通常は株数を指定して購入しますので安くなったら多く買うという金額買付はできません。一方の投資信託の積立てなら金額を固定することができます。毎月1万円といった購入方法なので価額が半分に値下がりすれば購入数量は2倍に増えることになります。金額固定の方が効率的な買付ができるのです。

<違い3> タイミングを選ぶ投資とタイミングを選ばない投資
 ナンピン買いは投資家が購入のタイミングを判断することになります。「安くなったな」と判断したらその時に追加購入するわけですが、そのタイミングを決めるのは難しいものです。投資家が感情的に判断すると、往々にして下げ局面の初期に資金を投入してしまい、それ以上の下げになると恐怖感から手が出ないというパターンになりがちです。

 一方のドル・コスト平均法の積立ては通常毎月決まった日にちを設定して機械的に取引を行っていきます。この方法は感情を排除し、結果的には平均的に買い付けを行うことが可能になります。

●似て非なるもの
 このように整理していくとナンピンという取引方法が感情に左右されやすくリスク分散の観点からも避けるべき投資方法であることがわかります。値上りすると思って購入した株式が下がっているということは最初の判断に誤りがあったということ。一旦頭を冷やして次のアクションを考えるのが合理的な投資行動ということができるでしょう。

 一方のドル・コスト平均法を使った積立ては長期投資の基本。感情的にならないで長期の市場全体の方向性を享受する投資法として活用すべきと思います。
 2つの投資法は相場の下落局面では買い下がるという意味では同じに見えますが、良く考えてみれば「似て非なるもの」なのです。

今回の話のまとめ---------
●個別株のナンピンは持ち値は下がるがリスクは増大
●投信の積立はドル・コスト平均法で感情を排除した分散投資が可能
●「似て非なるもの」の違いを見極めよう

ではまた来週・・・。

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧