2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
顧客層を絞りこんだマーケティングが金融業界でも広がっています。いわゆるお得意様を優遇してお客様を囲い込んでいこうという戦略です。例えば銀行では取引の度合いに応じた優遇サービスなどが当たり前になってきています。
そんな金融機関の大口割引サービスの中で最近注目しているのはスタンダードチャータード銀行の野心的な為替手数料体系です。
●為替手数料がかからない銀行
マネックス・ユニバーシティのあるビルから数分のところにスタンダードチャータード銀行はあります。英国系の銀行で香港ドル紙幣の発行銀行としても有名なグローバルに事業を展開している大手金融機関です。先日丸の内の店内を見学させていただく機会がありました。ホテルのような接客を目指しているだけあって、普通の銀行とはまったく雰囲気が異なります。専任の担当者が対応をしてくれるそうです。
この銀行のウリは預り資産が一定以上になると為替手数料がかからないところにあります。
http://www.standardchartered.co.jp/japanese/cb/pb/index.html
外貨取引は為替手数料を考えることが重要です。通常メガバンクの外貨預金の場合、買いと売りで米ドルでも2円かかる手数料が無料になるのは大きなアドバンテージです。南アフリカランド預金の為替手数料まで無料になっているのは驚きです。
スタンダード・チャータード銀行のサービスは明確に優遇条件が示されています。まとまった金額で取引する人には検討の価値があるサービスですが、預け入れ金額によっては為替手数料がかかってしまい割高になってしまう場合もあります。
●ネット証券もやっている大口割引
このような大口割引は実はネット証券でも行われています。
例えば投資信託の販売手数料は金額に応じて料率が下がっていくようにしているものがあります。たくさん買えば手数料を割り引いている大口優遇です。http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G605/trt/hiyo.htm
一部の顧客層を優遇するサービスには感情的な反発を感じる方もいるかもしれません。しかし考えてみれば買い物をするときにたくさん買うと割引になるサービス、例えばお徳用パックや3つ買ったら1つおまけといったサービスは小売業では当たり前になっています。コストに応じたサービスという意味では合理的な考え方でもあるのです。
●大切なのは透明性、明確さ
割引ではなく特別なサービスで囲い込もうとする方法もあります。例えば飲食店で常連さんや有名人だけに裏メニューのような特別な料理を提供しているのを見ることがあります。しかしこれは当人以外はあまり気分の良いものではありません。大口割引と同じ一種の顧客優遇ですが、明記されていない曖昧なサービスが一般客からすると閉鎖的な世界に感じられてしまうからです。
金融機関にも同じように基準が曖昧な優遇サービスがあります。例えばIPO(新規公開株式)についてはネット証券では抽選による方法が一般的ですが、対面型の証券会社では曖昧なプロセスでの割当が行われる場合もあるようです。
ルールが明確に決められていない、あるいは決められていても公表されていない取引というのは特に金融商品であれば釈然としません。
●公平なサービスとは?
特定の顧客層をターゲットにしたマーケティングは、何が公平なのかという素朴な問題提起をします。割引される人とされない人には不公平感は無いのかという疑問です。
私が以前所属していたマネックス証券は個人投資家も機関投資家と同じように取引できる公平な証券会社を作ろうという理念で設立されました。株式手数料の引き下げ、機関投資家しかアクセスできなかったオルタナティブ投資商品などの提供、と理念のいくつかは実現できました。しかし一方で投信の大口割引は公平なサービスになるのでしょうか。
少なくともルールやプロセスが不透明で曖昧なサービス提供は極力避けることが重要ではないかと思っています。しかしそこから先はどう考えたら良いのか。難しい問題です。
読者の皆様はどうお考えになりますか?
今回の話のまとめ---------
●金融機関でも顧客選別の動きは当たり前になっている
●大口割引はネット証券でも行われている
●プロセスが透明で明確であることが公平性の前提条件
ではまた来週・・・。
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