投資信託の不思議な使い方

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

投資信託の不思議な使い方

 先日、家の近くで2人乗りのオープンカーを使って引越しの荷物を運んでいる人を見ました。せっかくの格好良いスポーツカーがダンボールで台無しです。しかも荷物のスペースは狭くて何だか不思議な車の使い方でした。

 投資信託もこの車と同じように「不思議な使い方」をしている個人投資家が意外に多いのです。

 投資信託は投資をこれからはじめる初心者の方から投資の上級者までが活用できる幅が広い商品です。しかし投信ならどれでも良いのではありません。
 そもそも運用力の無い商品を選んでしまうと結果につなげることができません。またたとえ運用成果に優れていても、本来の投資目的に合っていない商品を選択してしまうと満足できる結果が得られないのです。

 そんなわけで今回は投資信託の目的にあった選び方についてです。

●基準価額は高い方が良いファンド?
 投資信託の値段に当たるのが「基準価額」です。1万口あたりの値段を計算したもので日経新聞には前日の数字が掲載されています。基準価額が高い商品は割高、とか逆に基準価額が高いファンドが良いファンド、と思っている人がいます。しかし実は基準価額の水準にはあまり意味がありません。

 例えば同じ日本株の日経平均連動型ファンドで基準価額が5,000円のファンドAと20,000円のファンドBがあったらどちらを選んだら良いでしょうか。結論から言えば、どちらでも同じです。基準価額が高いということは設定時よりも価格が上昇しているわけですが、スタートのタイミングが違っただけで同じインデックス運用をするわけですから今後の値動きもほぼ同じになるはずです。例えばインデックスが20%値上りすればファンドAは6,000円、ファンドBは24,000円になるはずです。どちらに投資しても結果は同じです(手数料などで微妙な差は出ることになりますが)。

 現在ほとんどの投資信託は10,000円で購入できます。基準価額が20,000円なら5000口、5,000円なら20,000口の購入になるわけで、どちらも10,000円で購入できるのです。

 また投資信託によっては分配金を払ったり、分割と言って口数を2つに分けることがあります(保有口数が2倍になるが基準価額は半分になります)。同じ基準価額のファンドでも分配金を過去支払ったファンドはその分値段が下がります。分配金を5,000円支払って基準価額が10,000円のファンドCと分配金は払わない基準価額15,000円のファンドDはどちらも設定から50%の値上がりで同じリターンです。

 つまり基準価額はファンド選択の判断材料にはならないのです。

●分配金に関する誤解
 株式の配当のように支払われる分配金に関しても誤解している人は多いようです。

 例えば高額の分配金を出すファンドがあります。このようなファンドは高配当ファンドとして一般に人気が高いのですが、高配当=高リターンとは限りません。分配金を出すとその分基準価額は下がります。そして通常は分配金に対して10%課税されます。

 先ほどの例で言えばファンドCは5,000円の分配金に対して現状では10%の500円が源泉課税されます。つまり再投資すると14,500円になってしまうのです。
 高額の配当金を受け取ってもそれを使わないでまた投資するのであれば、別にもらう必要はありません。むしろファンド内で再投資してもらった方が効率的ということができます。実際にフィデリティ・日本成長株ファンドという商品は設定以来一度も分配金を出していません。むしろこの方が長期投資家のニーズに対応していると考えることもできます。

●毎月分配型は便利だけど。。。
 最近では毎月分配型の投資信託も人気です。確かに毎月定期的に分配金を受け取ることができるのは年金型のキャッシュフローになることから特にシニア層の方にとっては便利な商品です。

 ところがこの毎月分配型の投資信託の分配金を再投資する商品があるのは不思議です。毎月分配されると原則は税金を10%源泉徴収されてそれを再び元のファンドの買い付けに使うのです。これでは何のために毎月分配しているのかわかりません(税金を払いたいという理由であれば別ですが)。

 毎月分配型の商品はコストを考えて商品選択すること、そして自分にとって毎月の分配金が本当に必要なのかどうかを考える必要があると言えるでしょう。
●商品毎のメリットを活用しよう
 投資信託は1万円から投資できる、インデックス運用などの分散投資ができる、いつでも設定解約ができる、といったメリットがある商品です。しかし一方でコストを考える必要がある、投資目的に合った商品選択が重要である、といった注意点もしっかり押さえる必要があります。

 金融商品には完璧なものは存在しません。どんな商品でもデメリットとメリットがあります。投資信託の商品としてのメリットをどう活用するのか、を考え、「オープンカーで荷物運び」をしないように気をつけましょう。

今回の話のまとめ---------
●基準価額は投資信託の商品選択には関係ない
●高配当、毎月分配もよいファンドとは限らない
●自分の投資目的に合った商品を選んで投資信託を賢く活用しよう

ではまた来週・・・。

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧