ファンド選びの難しさ

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

ファンド選びの難しさ

 明日24日は天神で無料のセミナーをさせていただきます。福岡の皆さま、よろしくお願いいたします(受付は終了させていただきました)。

 最近読者の方からメールやお電話でご意見をいただくこともある朝日新聞日曜日朝刊の連載「お金のゼミナール」ですが、今週は3つの運用手法を取り上げています。このコラムをお読みの方にとっては復習になってしまいますが、読みやすくまとめていただきましたのでご覧ください。

お金のゼミナール
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/m_seminar/20070318.htm
 3つの運用手法のうちインデックス運用はコストからの選択ということで比較的簡単に商品を選択できるのですが、アクティブ運用は自分でやる場合はともかく、人にやってもらう場合、選択方法にはすっきりとした結論はありません。

 アクティブファンドの選択基準は哲学・実績・手数料と言っていますが、3つの要素から数値だけではない総合的な判断が必要になってくるからです。
■数値化できるもの
 アクティブファンドの3つの選択基準の中で数値化しやすいのは手数料と実績です。

 まず手数料は販売用資料などから調べられます。大きく販売手数料と信託報酬がかかりますから、自分が買おうとする(あるいは既に買った)ファンドの数値は必ずチェックしておきましょう。

 次に実績というのは過去の運用成果です。各ファンドは運用レポートを定期的に作成しています。過去のリターンや現在の組み入れ銘柄などファンドの詳細を知ることができます。

 定量的な実績としては過去の騰落率よりもベンチマークとのリターンの比較、さらにシャープレシオのようなリスクに対する効率性などを同じグループのファンド間で比較してみることが必要です。

シャープレシオの計算式と解説はこちら
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G600/trt/sharpratio.htm
 しかしこの過去の実績とは必ずしも将来を保証するものではありません。拙書「資産設計塾 実践編」(117ページ)で前半3年と後半3年のファンドの運用実績をマトリックスに比較してみると必ずしも一致しないことがわかります。
 つまり過去の実績は参考にはなっても絶対的なものではないのです。この辺がファンド選びの最初の難問です。

■数値化されたデータでは三井住友の圧勝
 実際のファンドで見てみましょう。例えば中国株ファンドではマネックス証券では香港株を中心に投資を行うファンドとして、三井住友・ニュー・チャイナ・ファンドとHSBCチャイナオープンの2本があります。

 これらのファンドの手数料を比較してみると、

三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド
 販売手数料なし、信託報酬1.89%
HSBCチャイナオープン
 販売手数料3.15%、信託報酬1.89%

と三井住友が販売手数料無料(ノーロード)なだけ低コストです。

 運用実績はそれぞれの2月末の最新データで比較できます。

三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド(PDF形式)
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M626.pdf
HSBCチャイナオープン(PDF形式)
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M632.pdf

 騰落率データを拾ってみると、

三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド
 騰落率1年50.9% 3年106.2%
HSBCチャイナオープン
 騰落率1年47.9% 3年100.2%

とこれも三井住友が優位です。また運用レポートには掲載されていませんが、シャープレシオも三井住友が高く、効率的にリスクを取っていることがわかります。ここまで見ると三井住友・ニュー・チャイナ・ファンドを買うべき、となりますが、もう一つの数値化できない要素を検討する必要があります。
■数値化できないもの
 ファンド評価で難しいのが哲学です。運用会社やファンドの運用担当者の運用方針、どこから市場平均を上回る付加価値を生み出すかという点については、そもそも情報が取りにくい、そして情報があっても判断が難しい、という2重の困難があります。

 HSBCは中国株式の運用に関して資料を公開しています。トップダウンとボトムアップの組み合わせというHSBCのグローバル運用の強みが説明されています。HSBCならではの優れたアプローチだと思います。

HSBCの中国株式運用に関する7ページの資料(PDF形式)
https://www.monex.co.jp/pdf/fund2/U632.pdf

 一方の三井住友はファンドマネージャーの司馬毅氏を中心とするチーム運用体制です。運用手法はオーソドックスなボトムアップのスクリーニングで銘柄選択を行っています。

三井住友・ニュー・チャイナ・ファンドの運用の特色
http://www.smam-jp.com/cgi-bin/fund/feature.cgi?FUND=7931C01A

■どちらを選んだら良い?
 運用哲学の違いに大きな差が感じられないという判断なら手数料、運用実績から三井住友・ニュー・チャイナ・ファンドを選ぶことになります。コストや実績の差よりも運用手法の違いに価値を見出すのであれば違った判断もあると思います。

 私自身はHSBCチャイナオープンを設定来ずっと購入しており、現在もそのまま保有しています。既に購入したファンドを乗り換える予定はありませんが、今後追加で購入する際どちらのファンドを購入するかは、3つの判断材料から主観的な要素も入れて判断しようと思っています。

■わからないならインデックスという選択も
 アクティブファンドの選択はこのように困難なものなのですが、わからないというのであればインデックス運用を行う、という選択肢もあります。中国株なら昨年末のコラムで紹介した香港のETFを使う方法があります。私も興味があったので実際に購入してみました。アクティブファンドとの運用競争が楽しみです。

香港のETFを使った中国株のもう1つの投資法
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/007375.html

 中国株式は分散投資の一環としてある程度の組み入れを行うのが良いと思いますが、どの商品を使うかについては様々な観点からの総合的な判断が必要です。しばらく時間が経ったらまたそれぞれの運用成果について比較してみたいと思います。 

今回の話のまとめ---------
●アクティブファンドの選択基準は哲学・実績・手数料の3つ
●数値化できるデータ以外の評価はどうしても主観的なものになる
●アクティブファンドが選べないならインデックスという選択肢もある

ではまた来週・・・。

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