本当に知りたい投資信託の情報

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

本当に知りたい投資信託の情報

 先週末のマネー検定は午後からのパネルディスカッションに参加させていただきました。1時間があっという間に過ぎてしまう楽しい時間でしたが、今回もご一緒したさわかみ投信の澤上さん、FPの深野さんから多くのことを教えていただきました。資産運用の奥は深いです。

当日の4枚の写真です
http://www.monexuniv.co.jp/news_media/2007/04/1_2.html

 その中で印象的だったのは深野さんが司会の日経マネーの北澤編集長に話していた投資信託の情報が不十分だという指摘です。投資信託の商品選択に必要な情報が個人投資家に充分提供されているとは言えず、その役割をマネー誌も果たすべきだという意見でした。

■投資信託選びの3原則
 投資信託の選択は奥が深いものです。個人的には3つの選択基準、すなわち、哲学、実績、手数料で総合的に判断するのが良いと思っています。

 手数料は販売手数料、信託報酬を比較することで検討できますし、実績はベンチマークとの比較、シャープレシオなどからファンド毎に調べられます。数値化できる定量的なデータというのはネット上でも情報をかなり集めることが可能です。運用会社は毎月運用レポートを作成しており販売しているネット証券の画面で最新データを無料で見ることができます。

しかしこの中の哲学は評価が難しいものだと思います。数値化できない定性的な評価であり、ネット上でもあまり情報が入手できないからです。

■哲学はどうやったらわかるのか
 例えばフィデリティやJPモルガンといった運用会社は自社のホームページに自分たちの運用手法について説明するページを設けています。このような個人投資家に向けて情報提供を積極的に行おうとする運用会社は、個人投資家を大切にする姿勢を持ち、自分たちの運用手法に自信を持っていると言う事もできます。

フィデリティ投信
http://www.fidelity.co.jp/fij/about/philosophy.html

JPモルガン・アセット・マネジメント
http://www.jpmorganasset.co.jp/jpm/jpm_main_03.html

 しかし個人投資家にとって必要なのは複数の運用会社やファンドを同じ尺度で比較して商品を選べるような情報です。1つ1つの会社が情報提供を行ってもそれをまとめて比較するのは手間もかかりますし、現実的には難しいのです。
■機関投資家が実践する運用会社の選び方
 年金基金のような機関投資家が運用会社を選択する際には膨大なデータが運用会社から提供されます。質問リストが届けられ、回答しないと運用会社の候補に入ることができません。

 質問内容は会社の歴史から現在の運用体制、アナリストやファンドマネージャーの数、運用経験年数、経歴、リスク管理体制、今まで発生したトラブル、運用理念、銘柄選択プロセス、運用実績と広くカバーされています。

 さらにそのような運用会社の評価を行う専門のコンサルティング会社も存在します。彼らがアドバイザーになって資産運用をどの運用会社にどのような運用方法でいくら委託するのかアドバイスしているのです。

 このような機関投資家の豊富な情報と比べると個人投資家への運用機関あるいはファンドの情報はまだまだ足りないと思います。

■金融機関と個人投資家の役割
 このような個人投資家向けの情報提供はマネー誌が行うことなのでしょうか。個人的にはマネー誌よりもむしろ、投資信託を販売している証券会社や銀行が行うべきと考えます。しかし現実を見るとそのような情報提供を行っている販売会社は私の知る限り残念ながらありません。

 最近当局から警告や排除命令などを受けて、金融商品のリスク説明により力を入れる金融機関が増えました。もちろんリスクをしっかり説明することは必要ですが、それだけでは資産運用のリターンにはつながりません。その先のサービスを提供できる金融機関が早く現われて欲しいと思います。

 一方で個人投資家の商品選択方法も変わる必要があります。投資信託でも売れている(=皆が買っている)から買う、という横並び意識が強いようですが、自分で判断できるような個人投資家自身の選択眼が必要になってくるのです。
 そんな真面目な個人投資家が報われる資産運用のインフラ整備が日本でも進むためにマネックス・ユニバーシティにもできることがあると思っています。
今回の話のまとめ---------
●投資信託の選択に必要な情報は不十分
●情報提供すべきなのは投資信託を販売している金融機関
●個人投資家の意識改革も同時に必要

ではまた来週・・・。

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