2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
投資信託がブームです。郵便局での取り扱いが始まって身近になってきたこともありますが、特に外国株式や外国債券に投資するファンドは円安が人気の理由のようです。そんな中、5月9日の日経新聞夕刊一面には「投信手数料高止まり」という記事が掲載されています。最近設定された投資信託の信託報酬が上がっているという指摘です。
■投資信託の2つの手数料
ご存知の方も多いと思いますが、投資信託には主に2つの手数料があります。販売手数料と信託報酬です。販売手数料とは購入のときだけかかる手数料で販売している金融機関の収入になります。もう1つの信託報酬は保有している期間にかかる手数料で、一部が運用している会社の収入になります。信託報酬は日割りで計算され、実際にはファンドの中から自動的に差し引かれることになります。
2つの手数料に関する5年前のコラム
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/002513.html
■信託報酬年間1.8%の外国株式投信
今週、マネックス証券で販売している朝日Nvest グローバル バリュー株オープンを設定運用している朝日ライフアセットマネジメントを訪問しました。投信企画運用部長の鈴木様はじめファンド関係者の方にからファンドの概要をお聞きするのが目的です。
実はこのファンドはあまり知られていませんがマネックス証券の販売ランキングベスト10の常連商品です。日本を除く外国株(新興国も含みます)を投資対象とし、銘柄選択でインデックスを越えるリターンを目指すアクティブファンドです。
投資信託の売れ筋ベストテン
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G600/trt/index.htm
ちなみに販売手数料はマネックス証券では無料のノーロード、信託報酬は税込み1.89%と日経新聞で紹介されている世界株式型の平均値1.48%に比べるとかなり高くなっています。
■運用実績は抜群
信託報酬は高いですが、過去の実績は文句がありません。2000年3月の設定来の騰落率は252.8%。同じ時期のマーケット(MSCIオールカントリーインデックス、日本を除く円ベース)が20.4%ですから230%以上のアウトパフォームです。
このファンドの特徴はバリュー投資です。日本を除く世界各国の株式を対象に徹底したバリュー株投資を行っています。運用は米ハリス・アソシエイツ社が行い、真の企業価値に比べ株価が30%以上割安な価格に放置されていると判断した銘柄を発掘。また経営陣による株式所有状況など定性的な分析も行っています。また原則として対円では為替ヘッジを行いません。
組み入れ銘柄も48銘柄とかなり絞りこんでいます。インデックスの国別配分もスイスに大幅に投資するなど本当に良いと思った企業に思い切った投資をしていることがわかります。また中国やインドは組み入れがありません。自分たちが安心できない投資先には資金を入れないという慎重さも持っています。
2007年4月末時点の運用状況はこちら(PDF形式)
http://www.alamco.co.jp/pdf/m_ave.pdf
■アクティブファンドの信託報酬
アクティブファンドの選択は専門家でも難しいものです。なぜなら過去の実績は将来を保証しないからです。今回ご紹介したファンドも今までのリターンを今後も続けられるかどうかは残念ながらわかりません。
アクティブファンドの選択は投資哲学、過去の実績、手数料の3つを総合的に考えることが重要だと思っています。バリュー投資というハリス社全体に一貫する明快な運用哲学、抜群の過去の実績を考えれば、検討する価値はあると個人的には思います。
インデックスファンドはコストで比較するのが正しい方法ですが、アクティブファンドは多様な選択基準から総合的に考えること、また販売手数料と信託報酬では意味が違うことを理解しておきましょう。
資産運用の目的は手数料や税金を差し引いた手取りの金額を殖やしていくことです。手数料が安いからといって必ずしもその目的が達成されるとは限らないのです。
少なくとも確かなことは、信託報酬が高いという理由でアクティブファンドの選択肢からはずしてしまうと大きな機会損失の可能性があるということです。むしろ買ってはいけないのは、信託報酬が安くても実績が上がっていないファンドというのが私の意見です。
今回の話のまとめ---------
●投資信託には2つの手数料があり、2つのコストは意味が異なる
●コストは低いに越したことは無いが、安かろう悪かろうでは意味が無い●アクティブファンドの選択は3つの基準から総合的に考えよう
ではまた来週・・・。
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