今度の個人向け国債はどちらを買うか

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

今度の個人向け国債はどちらを買うか

 「資産設計」の運用は株式と債券のバランスの取れた配分を基本にしています。その中で今までどちらかと言うと脇役で目立たなかった債券に最近注目が集まってきました。

 海外では各国で政策金利が引き上げられています。欧州ではECBが今週政策金利を4%に引き上げ、ニュージーランドも利上げで8%になりました。米国も利下げ期待が後退し、米国10年国債が5%台に乗せてきました。世界的な金利の上昇の中で、好調だった株価にも調整の動きが出ています。

 超低金利と言われた日本でも金利がジワジワと上昇しています。長期金利の指標となる10年国債の金利は1.9%近くまで上昇し、参議院選挙後の利上げが市場で織り込まれ始めました。

 本日発売のいちばんやさしいおカネの本「マネープラス」7月号でも巻頭特集は「高金利商品を100人の専門家に聞く」というテーマになっており、マネックス・ユニバーシティも取材に協力させていただきました。

100万円の貯める・増やす ベストな預け先ランキング
http://www.sscom.co.jp/m-plus/moneyplus.html

 アンケート結果を見ると預け入れ期間1年以上の商品では個人向け国債、ネット定期、債券、というランキングになっています。そして個人向け国債は変動10年と固定5年に人気が2分されています。 

 マネックス証券でも6月13日から個人向け国債が募集開始になるようですが、悩ましいのはこの5年と10年どちらを買ったら良いか、です。

■2つの個人向け国債の比較
 5年と10年の商品性の違いは財務省のホームページに比較表でまとめられています。

財務省がまとめた2つのタイプの違い
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/kojinmuke/contents/outline/hendou_outDifference.html

 チェックポイントは金利の決定方法、中途換金の2つです。

■基準となる金利と差し引き数字を確認
 まず10年は半年毎に実勢金利に応じて金利を見直す変動金利です。そしてそれぞれの利払期における適用利率(年率)は、その時点の10年固定利付国債(基準金利)から0.80%を差し引いた値となります。

 一方の5年債は固定金利ですから償還まで利払い額は変わりません。利率(年率)は、利率決定時の5年固定利付国債(基準金利)から0.05%を差し引いた値となります。

 また、どちらも利率の下限は0.05%ですから金利が下がっても最低レートは保証されています。

 ちなみに前回発行の金利は固定5年が1.13%、変動10年が0.87%でした。そして今回変動10年の初回適用金利が1.01%と1%を超えました。5年固定は来週金利が決まることになっていますがこちらは変動10年より高い金利になることが予想されます。

■流動性では10年変動が有利
 万が一、満期になる前にお金が必要になったときは中途換金をすることになりますが、それぞれの商品に制約があります。

 10年の場合は発行から1年経過すれば中途換金可能になります。一方の5年は発行から2年経過しないと中途換金できません。また解約時にコストがかかるのですが、10年は直前2回分の利子(税引前)相当額、5年は4回分の利子(税引前)相当額が差し引かれます。

 税引き前の利子分ですから10年なら最低でも1年半、5年なら2年半は保有しないと実質元本割れになる可能性があります。

■流動性と中途換金コストに注目
 商品選択の視点として今後の金利が上がるのかどうかに注目する人が多いようです。簡単に言えば金利がある程度以上、上昇すれば変動金利の方が有利。このまま金利が横ばい、あるいはあまり上昇しなければ固定金利、という判断になりますが、金利がこれからどうなるのかは専門家でもよくわからないというのが実態です。

 むしろ問題になるのは流動性です。確実に満期まで持ち続けるのであれば単純に金利の比較の問題ですが、中途解約の可能性がゼロでないなら、換金性にすぐれ、コストも低い10年変動を検討すべきでしょう。

 アセットアロケーションの観点から言えば金利型商品の債券は守りの商品です。万が一のリスクがあるなら細かい金利差よりも安全性に重きをおいた意思決定が重要と思います。個人的には「標準的なアセットアロケーション」に基づき日本債券に10%の配分を目標にしていますが、その中身はほとんど個人向け国債10年変動にしています。

■親切な財務省のホームページ
 最終的にどちらの商品にするのかはご自身の判断ということになりますが、その際に参考になるのが財務省のホームページです。個人向け国債が発行開始の頃に比べるとデザインも洗練され様々な情報が掲載されています。例えば、購入者のケーススタディや換金したときいくら受け取れるかの換金シミュレーションまで計算できるページが用意されています。

購入者の4つのケース紹介
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/kojinmuke/contents/case/index.html
換金シミュレーション
http://www.kankin.mof.go.jp/

 5年固定の金利は12日に決定。13日から2つの個人向け国債が募集開始となります。それまでにどちらにするか、あるいは両方組み合わせるのか、自分の資金計画から考えておきましょう。

今回の話のまとめ---------
●相場観に関係なく株式だけではなく債券にも分散投資しよう
●個人向け国債には5年固定と10年変動の2つの種類がある
●金利予想だけではなく流動性や換金コストも考えて商品選択しよう

ではまた来週・・・。

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