2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
投資信託を選ぶ3つの条件は「哲学、実績、手数料」と言っていますが、過去の実績として、どんなデータをみたら良いのでしょうか。投資信託の宣伝広告を見ているとファンドの運用実績として設定来の騰落率を書いている場合が多いのですが、これは2つの意味で問題があります。
■ 投資信託の実績は騰落率だけで比較してはいけない
1つはリターンだけに目を向けており、リスクの視点が欠けていることです。例えば日本株式と新興国株式で同じリターンが実現したとしてもリスクは大きく異なります。リスクに対してどれだけ効率的にリターンを実現できたかを見る必要があります。例えばシャープレシオです。
シャープレシオとは
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2007/news7069.htm
そしてもう1つの問題は絶対値だけ見てもそれが優れた運用成果なのかどうかわからないことです。10%のリターンがあっても市場が20%上昇しているのなら優れた運用とは言えません。つまり投資対象としている市場のインデックスデータとの比較によって、相対的な評価をすることができます。
例えば外国株式といっても多数のインデックスが存在します。次に問題になってくるのはどのインデックスを使うのか、です。
■ 伝統的な外国株のインデックス
外国株式のインデックスとして最も有名なのはダウ・ジョーンズ工業株価指数(いわゆるNYダウ)でしょう。1928年から発表されている由緒ある指数ではありますが、アメリカの株式のわずか30銘柄による単純平均指数であり、世界の株価を代表する指数にはなりません。またS&P500という指数も有名ですが、これも対象は米国株式です。日本で知名度の高い海外株式指数は米国に偏っていることがわかります。
また日本の機関投資家の間で使われる外国株式のインデックスとしてはMSCIコクサイがあります。これは日本以外の先進国22カ国の株式で構成されたものです。この指数は米国だけではなく欧州圏の株式も広くカバーしており、プロの定番となっていますが、BRICsなどの新興国株式は含まれていません。
■ これからの主役になるべき外国株式インデックス
BRICs4カ国が含まれるインデックスとしては例えばMSCIエマージング・マーケット・インデックスというものがあります。このインデックスはアルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、ロシア、コロンビア、チェコ、エジプト、インド、南アフリカ、トルコ、台湾、タイ、韓国など合計25カ国の新興国から構成されています。
そしてこのエマージング諸国の株式インデックスと先進国の株式インデックスの両方が含まれた指数として、MSCIオール カントリー ワールド インデックス(MSCI ACWI)があります。これは全世界48ヶ国(先進国23ヶ国、新興国25ヶ国)を対象にしたインデックスになっています。この指標から日本を除けば、外国株式のインデックスとしては適切ではないかと思います。
ちなみに上記48カ国のインデックスに占めるエマージング諸国の比率は9%程度になっています。日本を除いて考えるとインデックスで見ると外国株式の10%強は新興国に投資してもおかしくないという結論になります。
外国株式のインデックスにご興味ある方は拙書の50ページをご覧くださいhttp://www.monexuniv.co.jp/book/#credit
■ ファンドによって異なる外国株式の参考指数
グローバル株式ファンドでベンチマーク(参考指数)がMSCIコクサイになっているファンドは投資対象が先進国に限定されていると思われます。したがって新興国株式への投資は自分でBRICsのファンドをトッピングすることになります。
一方で最初からエマージング株式も投資対象に含んでいる投資信託もあります。例えばマネックス証券で販売している朝日Nvestグローバルバリュー株オープンはベンチマークがMSCIオール カントリー ワールド インデックス(除く日本)になっています。これは同ファンドが韓国、メキシコなどエマージング諸国も投資対象にしているからです(ただしBRICs4カ国には6月末時点では投資をしていません)。
朝日Nvestグローバルバリュー株オープンの運用レポート
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M661.pdf
■ 新しい尺度で外国株式を考える
いずれにしても今後、外国株式の運用成果を評価する場合、新興国を含めたMSCIオール カントリー ワールド インデックス(除く日本)のようなインデックスを評価の基準とすることが広がるのではないかと思います。
新興国のマーケットは先進国の株式市場に比べるとまだ規模も小さく、市場の変動性の大きなマーケットですが、投資対象としては外せない存在感を持つようになってきているからです。インデックスの構成比率を参考にしながら、どの程度の比率まで組み入れるかを考えていきましょう。
ちなみに下記のポートフォリオはBRICsにかなり強気の配分例です。
もし、500万円あったら・・・
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2007/news707o_02.htm
今回の話のまとめ---------
■投資信託の実績はシャープレシオや対ベンチマーク比で相対的に見る
■外国株式のMSCIコクサイインデックスには新興国が含まれていない
■新興国を含めた外国株式投資を考えよう
ではまた来週・・・。
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