投資信託とダーウィンの進化論 ★★☆☆☆

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

投資信託とダーウィンの進化論 ★★☆☆☆

 投資信託の選択基準は「哲学・実績・手数料」の3つと申し上げていますが実際にアクティブファンドを選択するのは難しいものです。

 モーニングスターのファンドアナリストの視点というコラムでは、日本株式で運用するアクティブファンドの運用期間とリターンの関係について興味深いレポートを発表しています。日本株のアクティブファンドの運用期間、資金流入、運用実績の関係です。

■ 運用期間の長いファンドは人気がない
 2006年6月末から2007年6月末までの1年間でネット流入額(ファンドの購入金額と解約金額の合計)をファンドの運用期間別に分類してみると、運用期間が長いファンドほど資金が流出している傾向があるという結果になっています。1年以上3年未満の若いファンドは資金が流入しているのに、運用期間3年以上のファンドは平均すると資金流出になっているという結果です。

 これは新しいファンドは宣伝をしたり、マネー誌などで取り上げられるのに、古いファンドになると目立たなくなってしまって新規で買う人が減ってしまうのが原因の1つと思われます。しかしそんな販売する側の原因だけではなく、新しいもの好きという個人投資家の投資行動にも問題がありそうです。

■ 運用期間の長いファンドは好成績
 同じ運用期間別の分類でリターンを見てみると資金流入と逆の結果になっています。運用期間1年以上3年未満のファンド60本のTOPIX比のリターンはマイナス3.13%と市場平均を下回りました。一方、運用期間10年以上のファンド64本のTOPIX比のリターンはプラス2.77%と市場平均より良いという結果になったのです。

 また過去10年間の騰落率を毎年TOPIXと比較して、10回中何回市場平均に勝っているか、を見てみると7回以上勝っているファンドが64本中16本となりました。

 これはリターンだけの結果ですが、リスクを勘案したシャープレシオで計算しても、これらのTOPIXに勝っているファンドは良好な成績であり、安定した成績を長期で実現しているファンドということができます。

【復習】シャープレシオとは?
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G600/trt/sharpratio.htm
■ 10年間TOPIXに勝ち続けるファンドもある
 10年のうち7年以上TOPIXに勝っている(つまり7勝3敗以上)16本のファンドのうちの1本、大和投信が運用する「大型株ファンド」は10年連続でTOPIXに勝っているという驚異的なファンドです。この間の年率平均リターンはTOPIXの4.56%に対し9.04%。1961年に設定されて40年以上の運用実績という超長期のトラックレコードを持っています。信託報酬も0.756%と地味ながらしっかりと生き残っている良心的なファンドだと思いますが、残高はわずか約31億円しかありません。
(残念ながらこのファンドはマネックス証券では販売していません。)

■ 生き残っているから良いファンドなのか
 運用期間の長いファンドがナゼ好成績なのか。理由の1つはダーウィンの進化論ではありませんが「自然淘汰」です。運用成績の悪いファンドは途中で資金が流出して運用を続けられなくなり、償還してしまうケースが多いのです。毎月新しいファンドが次々と市場にデビューしますが、10年間生き残るファンドは意外に少ないのです。

 つまり運用期間が長いから良いファンドなのではなく、良いファンドだったから長期で生き残っていたと考えられるのです。とすれば、過去の実績が今後も続くのかどうかが次の焦点になります。

 拙書「資産設計塾 外貨投資編」(80ページ)の表では過去5年の投資信託の実績とその後5年間の実績の分布をマトリックスにしていますが、過去と将来には強い相関が見られないという結果になっています。

■ インデックスかアクティブか
 今回のデータでは10年以上の運用実績のある日本株アクティブファンドは平均でTOPIXを上回っているという結果が出ましたが、本数でいうと64本のうちの31本。つまり半分以下です。10年以上生き残ってきたファンドでも半分以上は市場平均以下というのが現実なのです。

 だとすれば一般に運用コストが低く、市場平均並みのリターンを実現できるインデックス運用をETFやインデックスファンドを使うという選択肢もありうると思います。

 投資信託の世界におけるダーウィンの進化論を理解したとしても、実際にどのファンドがこれから生き残るかを判断するのは簡単ではないのです。

【参考】データ元になったモーニングスターのコラム
http://www.morningstar.co.jp/fund/anl_view/07_3q/0806.htm

今回の話のまとめ---------
■人気のあるファンドが好成績とは限らない
■運用期間が長いファンドは自然淘汰で生き残ったと考えることもできる■それでもアクティブファンドは選択するのが難しい

ではまた来週・・・。

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