過去からこれからの投資を考える ★★★★☆

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

過去からこれからの投資を考える ★★★★☆

 8月上旬にマネックス・ユニバーシティのサイトで個人投資家の皆様が投資信託、何本持っているのか?どの位の期間持っているのか?アンケートを取らせていただきました。他の人が何をしているのかが気になる人は多いものです。
アンケート結果 − 投資信託の平均保有本数は6本
http://www.monexuniv.co.jp/news_media/2007/08/20070807.html

 また最近の世界的なマーケットの変調で多くの個人投資家も自信を失っています。本日の東京市場も暴落(日経平均株価は5.42%の下落)しており、どこまで円高になるか。株式の底値はどこか。そんな相場観を求めてメディアや株式評論家の意見を心の拠り所にしています。

 しかし不安な状態から抜け出し、長期運用の一貫したスタンスを確立するために必要なのは、「他の人が何をしているか」や「専門家がどう見ているか」ではなく「マーケットの過去を知ること」ではないかと思います(ちなみに1987年10月のブラックマンデーの翌日の東京市場は日経平均株価は14.90%の下落でした。)。マーケットの過去からわかることは、長期で見ればマーケットは上下の変動を繰り返しながら上昇してきたということです。そのトレンドに自分の資産を連動させる方法は「分散投資」しかありません。

 確かに分散投資を実践していても今回の円高と株安のインパクトは大きく、リターンはマイナスです。しかしマーケットではこのような株価の暴落や為替の変動が繰り返され、その後の回復で結果的にはずっと市場に留まって運用を続けてきた投資家が報われてきたという事実があります。感情的に取引をするのではなく、自分が正しいと思う運用方法を淡々と続けることが大切です。
■ 相場観より先に学ぶべきマーケットの歴史
 今週、拙書「資産設計塾」シリーズでもお世話になっているイボットソン・アソシエイツ・ジャパンの小松原さんと「成功する投資のためのヒント」というタイトルで対談をさせていただきました。これはネットで学ぶ投資コンテンツをお申し込みいただいた方で一定の条件を満たした方の限定動画です
(8月下旬に特典対象者全員に視聴方法がメールで送られます)。

くわしい内容はこちら(マネックス証券口座保有者は無料です)
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G800/mu/mc_tokuten.htm

■ バリューとグロース
 バリュー株とグロース株のグループ比較ではやはりバリュー株のパフォーマンスが良いという結果になりました。国内株式についてのデータだけではなく、米国、英国、ドイツ、フランスなどの海外でも同様の結果が出ていることがわかりました。これは1975年からのデータを使った検証結果です。

 計測時期によってはグロース株のリターンが上回る局面もありますが、長期では続かないようです。理由としてバリュー株のリスクプレミアムである、とかニュースに対する反応の違いなど様々な原因が推測されています。

 バリュー投資の手法についてはバリューサーチ投資顧問の松野氏の手法をマネックスのネットで学ぶ投資コンテンツに今後追加する予定ですので、ご期待ください。

割安株投資の基本的な考え方(バリューサーチ投資顧問)
http://www.value-search.co.jp/employment-unyou.htm

■ 小型株効果は存在するのか
 一方で小型株が株式市場で相対的に高いリターンを実現しているという結果は見られませんでした。1980年からの長期データでは大型株と小型株のグループのリスク・リターンに明確な差が無かったという結果です。ただし、個別の運用結果は恐らく小型株の方がバラつきが大きい、つまり運用の巧拙の差が出やすいのではないかと思われます。これは意外な結果でした。

■ 為替ヘッジは必要か
 1985年からのインデックスデータで計算してみると外国株式、外国債券ともにヘッジの有無によるリターンの差はあまり無い、という結果が出ています。ただしこの20年間というのはトレンドとしては円高局面です。

 理論的には外貨投資を為替ヘッジした場合の期待リターンは円金利と同じになります(厳密には、海外の短期金融資産を為替ヘッジした場合の期待リターンは日本の短期金融資産の期待リターンと同水準になる)。

為替ヘッジをするとどうなるか
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/008077.html

 為替ヘッジの意義については専門家の間でも議論がありますが、私の考え方は、為替ヘッジは必要ない。もし為替ヘッジをする必要があるならその分外貨資産の比率を落とせば良い、というものです。

 イボットソンのデータから為替ヘッジに関しても理論と現実の違いが見えてきます。

■ リバランスの頻度は年1回
 資産全体を見直すリバランスについてもデータを作っていただきました。リバランスなし、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎、1年毎という頻度による比較では、過去37年間のデータでは1年毎のリバランスが最も良い結果となりました。そしてリバランスをしないというのが最も悪い結果になっています。

 リバランスはした方が良いが、頻繁に比率を見直しすぎると逆にリターンが悪化する、ということです。分散投資はあまり手をかけすぎない方が良いということです。

 上記のテーマ以外にも、クレジットリスクの考え方、エマージングマーケットへの投資方法、資産設計ファンドの資産配分の決定方法なども取り上げています。

データで斬る!ディープな分散投資対談の詳細(写真付き)
http://www.monexuniv.co.jp/news_media/2007/08/post_111.html

■ 続けることで報われる
 過去からの教訓は「運用は続けることで報われる。そして下がったらピンチではなくチャンス」ということです。下げに耐えられるようなリスクを取ること、下がったところでも買いにいける余裕を持つことが重要です。

 相場は派手に動いていますが、長期の資産運用の成功者は基本を着実に続けている地味な人たちなのです。

今回の話のまとめ---------
■金融市場の歴史は繰り返す
■データがあれば冷静な投資判断ができるようになる
■隣の芝生や人の意見よりも、過去に学ぶことが大切

ではまた来週・・・。

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