ベトナムとドバイ ★★★☆☆

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

ベトナムとドバイ ★★★☆☆

 私個人のブログにも書いたのですが、今週石田和靖さんという方にお会いする機会がありました。石田さんは海外投資を専門にしている方で最近は海外投資をする個人投資家のネットワークをサポートするためにSNSを立ち上げました。すでに2000人近い方が参加し、情報交換サイトとして機能しています。

石田さんが運営する海外分散投資家のためのSNS
http://worldinvestors.jp/?m=pc&a=page_o_sns_worldinvestors

 そんな石田さんが最近書かれた本はドバイ株に関するものです。ドバイというと砂漠の中で大規模な開発が行われ、急激な成長を続ける街というイメージがありますが、日本では投資対象としては馴染みがありません。

「ドバイ株投資完全マニュアル」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4775990535/250-6339108-5833859?v=glance&n

 ドバイはMENA(Middle East North Africaの略、ミーナと発音します)と言われる中東北アフリカ地域になりますが、最近国内投信でもこの地域を投資対象とするファンドが登場しました。投資対象としても注目されはじめている地域のようです。

■ポストBRICsはどこか
 日本の個人投資家の投資対象はここ数年で大きく広がりました。旧来の「投資=日本株投資」という考え方は大きく変わり、為替保証金取引や外国株式ファンドなどの投資商品も整備されてきています。海外投資と言えばかつてはドルやユーロへの外貨預金くらいしかなかったのが、今や先進国だけではなく新興国への投資へ広がっています。

 BRICsという言葉もあまり違和感無く使われる一般用語になってきました。そして海外投資を積極的にしている人たちの間での関心事はBRICsの次に投資すべき地域はどこか、ということに移ってきています。

■世界の株式市場を鳥瞰する
 どこに投資をするかを考える前に世界の株式市場全体を眺めてみましょう。すると日本の個人投資家がまだ知らない投資地域が見えてきます。

 実は世界の株式市場にはそれぞれインデックスが作られています。MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の発表するインデックスが外国株式市場の指標として広く使われています。同社のウェブサイトには外国株式のインデックスについて分類の説明があります。

MSCI社の外国株式インデックス体系(英語です)
http://www.mscibarra.com/products/indices/intl.jsp

 これを見ると世界の株式市場は大きく4つのグループに分類されています。
1.MSCIワールドインデックス 先進国の株式市場
2.MSCIエマージングマーケッツインデックス 新興国の株式市場
3.GCC諸国
4.スリランカ、ベネズエラ

 日本の個人投資家から見るとMSCIワールドインデックスから日本を除いたMSCIコクサイインデックスがメインの外国株式の投資対象になります。BRICsはエマージングマーケッツインデックスに入ります。

 GCCというのは湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council)の略でアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアから構成されています。冒頭のドバイはUAEの1つになります。

 2007年7月末時点のMSCIコクサイ、MSCIエマージング、GCCの時価総額を見ると次のようになります(1米ドル=115円で換算した概算金額)

MSCIコクサイ 2,901兆円(23カ国)
MSCIエマージング:353兆円(25カ国)
GCC: 18兆円(6カ国)

 大雑把に言うと先進国株式とエマージング株式の比率が9:1、エマージング株式とGCCの比率が20:1程度ということになります。

■ベトナムがインデックスに入っていないのはナゼ?
 MSCIエマージングの中にはモロッコ、イスラエル、ヨルダン、ベルー、コロンビアと言った日本の投資家には馴染みの無い国々が入っています。逆に、例えば日本で人気のあるベトナムはMSCIのインデックスには入っていません。
 MSCI社の松前氏によれば、インデックスに採用されるためには同社の設定する基準を満たす必要があります。投資対象国として適当であるかどうかの判断です。ベトナムの株式市場は時価総額2兆円と言われていますが現時点ではMSCI社の基準を満たしていません。日本ではベトナム株ブームが起こっていますが、このような特定のマーケットに日本の個人投資家が殺到しているのはグローバルに見れば不思議な現象です。

■バランスの取れた外貨投資を
 ベトナムもドバイも将来性はあっても市場規模はまだ小さなものです。しかもベトナムはインデックスに採用されていません。MSCI社の基準が絶対という訳ではありませんが、ベトナムに投資をするなら同時にモロッコやイスラエル、コロンビアにも投資するかを検討するのがバランスの取れたグローバル投資と言えるでしょう。

 身近だから、知っているから、という理由で投資対象を選択しても成功につながらないことは日本株の銘柄選択と同じです。

日本株銘柄選びでやってはいけないこと
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/007135.html

 日本の個人金融資産に占める外貨投資は全体のわずか3%程度に過ぎません。先週のマーケットは大きく円高が進みましたが、為替の方向性に関わらず、外貨投資は日本の個人投資家の間でもっと広がるべきと思っています(私の個人金融資産における外貨比率の目標は40%です)。その時の投資対象は、まず株式市場をグローバルに鳥瞰し、特定の市場に偏らない投資を行うべきです。
今回の話のまとめ---------
■各市場の時価総額が投資判断の目安になる
■MSCI社のインデックス採用国はそのための1つのヒント
■世界のマーケットを鳥瞰するように投資を考えよう

ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも限りません。)

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