資産運用と社会貢献 ★☆☆☆☆

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

資産運用と社会貢献 ★☆☆☆☆

お金は目的ではなく手段です。資産運用によってせっかく殖えたお金も、自分の本当の目的のために有意義に使われなければ運用する意味も半減してしまいます。

 お金を手段として実現したい夢には様々なものがあると思います。私はその中の1つとして、お金を社会貢献に役立てる、という夢を持っています。現実問題として社会貢献にもお金が必要であり、その資金を資産運用によって作ることはできないかと思っているのです。一人の資金は小さくても同じ考え方を持つ人が集れば大きなパワーになります。

■エコファンド
 そんな資産運用と社会貢献の関係と言うと、まず思い出すのはエコファンドです。環境対策に優れた企業を選定して投資することによって、結果として市場平均を上回るリターンを実現でき、環境問題にも貢献できるということで個人投資家の人気を集めました。

 いわゆる社会貢献ファンドについてはシンクタンクの過去データによる調査によれば、市場平均を上回る投資成果を実現したという結果が紹介されています。一方で組み入れ銘柄を見ると通常のファンドとの違いがあまり明確では無いという印象もあります。個人的には社会貢献ファンドだからというだけで投資するという判断はすべきではないと思っています。

社会貢献ファンドで社会貢献できるのか
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/005119.html

■日本の社会貢献投資
 投資信託のように資金を提供するだけではなく、資金提供者が投資先に自分の持っているノウハウも提供する社会貢献を行う団体が日本にもあります。東京ソーシャルベンチャーズは、2004年に設立された任意投資団体です。40人のパートナーが毎年10万円ずつ資金を出し、ベンチャーキャピタルのアプローチを応用して社会貢献事業に投資をしています。

 リターンを目的にしているというよりも社会貢献に重きを置いた投資ですが、単なる寄付ではなく投資とノウハウの提供を行うところがユニークです。パートナーは仕事の傍ら、このような活動に無報酬で参加しているわけで、単なる投資を超えた熱いハートを感じます。

東京ソーシャルベンチャーズ
http://www.sv-tokyo.org/

■寄付と投資の間にあるもの
 海外ではもっと大規模にお金と社会貢献の融合を実現した例がたくさんあります。

 2006年創設者のムハマド・ユヌスと共にノーベル平和賞を受賞したことで世界的に知られるようになったグラミン銀行は、マイクロファイナンスと呼ばれる貧困層を対象にした低金利の無担保融資を行っています。この銀行のユニークな点は、貧困層への低利融資という社会貢献をしながら企業として利益を上げているというところです。単にお金を与えるだけではなく、自立をサポートしていくことで根本的な問題解決を目指しているようです。

グラミン銀行(英語です)
http://www.grameen-info.org/

 またサンフランシスコにあるキヴァマイクロファンドという組織は、ネット上で発展途上国のビジネスを紹介し、資金の貸し手と借り手をつなげるサービスを提供しています。このサービスのユニークな点は自分でどのプロジェクトに資金を貸し付けるのかを選択できることです。ネット上の紹介文や写真、評価などを参考に決めることが可能です。また複数の投資先を管理できるポートフォリオ画面も提供されています。

キヴァマイクロファンド(英語です)
http://www.kiva.org/

 このような動きを見ると、寄付でもなく利益だけを目的とした投資でもない、新しいお金の使い方が着実に大きくなってきているように思えます。

■キーワードは「透明性」と「継続性」
 社会貢献に投資という手法を使うメリットの1つは透明性が確保できることではないかと思います。プロジェクトに投入した資金に対しどのようなコストがかかって最終的にどのような結果になったのか。投資のサイクルであれば定量的な検証が可能になります。お金が効率的に使われたのかどうかを共通の情報によって確認し合え、信頼感が生まれます。

 また継続性も必要です。サステイナブル(持続可能)な仕組みを作りあげないと長期的に成果を出し続けることができないのです。宣伝をしたり、ウェブを制作したり、イベントを開催したり、社会貢献にもコストがかかります。コストを負担できない組織は経済的に不安定になり行き詰まるリスクを常に抱えることになってしまいます。

■社会貢献と金融商品の接点はあるか
 社会貢献といっても人によって何をしたいかは異なります。世界の貧困を撲滅したいという人もいれば、日本の中にいるサポートを必要としている人が先だ、と考える人もいます。環境問題や人権問題、紛争解決、食の安全など興味のある分野は様々です。

 ネット証券で取引している人は投資によって自分の資産を殖やしたいという人がほとんどかもしれませんが、自分の資産を社会貢献のために有意義に活用したいという人もいるのではないかと思います。

 例えば投資信託にそのような資金提供機能を持たせることができれば、個人投資家にわかりやすい社会貢献のツールとして提供できます。しかし現実には投資信託の投資対象は有価証券が中心となり、社会貢献活動を組み入れるには高いハードルがあります。

 ネット上で金融関係の仕事をしている者として、様々な方の知恵を頂きながらそんな社会貢献と金融商品の接点を探ってみたいと思っています。読者の方でアイディアをお持ちの方がいらしたら、ヒントをいただけるとありがたいです。

今回の話のまとめ---------
■お金を殖やす目的の1つに社会貢献がある
■投資の形で社会貢献を行うことで「透明性」と「継続性」が確保できる■わかりやすい商品が提供できれば、社会貢献をもっと身近にできる

ではまた来週・・・。

※文中で紹介する内容については、当社が推奨または勧誘を行うものではあり ません。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも限りません。)

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