悩ましい「外国債券」の運用 ★★☆☆☆

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

悩ましい「外国債券」の運用 ★★☆☆☆

 慶応大学4年生の秋元玲奈さんと毎月連載している「ファイナンシャル ジャパン」の取材で、イボットソン・アソシエイツ社の新しいオフィスにお邪魔しました。いつものようにマネージングパートナーCIOの小松原さんが、取材に応じてくれました。

いつもの取材風景はこんな感じです(写真つき)
http://www.financialjapan.co.jp/school/

 インタビューの全貌は10月21日に発売される12月号で詳しくご覧いただけますが、その中でも外国債券の運用について考えさせられることがありました。
■ 「外国債券」とは?
 外国債券といっても定義はいろいろありますが、資産設計では為替リスクがあって、主に金利収入を受け取る商品を指しています。世銀債などの外国債券はもちろんですが、外貨預金、外貨MMF、為替保証金取引、外債ファンド、なども含めて考えます。為替と金利に影響される資産ということです。

■ 外国債券のインデックス
 日本株にTOPIXや日経平均のようなインデックスがあるのと同様に、外国債券にもインデックスがあります。日本の年金基金などが使っている代表的なものはシティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし円ベース)です。
 これはシティグループが公表している世界主要国の国債の中から日本を除き、時価総額で加重平均したインデックスで、22カ国から構成されています。原則としてエマージング債券やハイイールド債券などは含まれていません。インデックス運用を行うのであればこの指数と比較していくことになります。

■ 外債アクティブファンドの成績
 イボットソン・アソシエイツのデータによると、2006年末現在のアクティブ型外債ファンド全体の過去1年間のリターンをまとめてみると平均でインデックスを4.2%下回ったという結果になりました。インデックス以上のリターンを実現したものは67本中1本もなく、最悪のものはインデックスより15%近いマイナスになっているという結果でした。

 計測する期間によって結果は変わると思いますが、このような過去のデータは、外国債券の運用が日本株に比べ、付加価値をつけることが難しいことを示しています。

■ 外債インデックスファンドの成績
 ではインデックス運用はどうでしょうか。拙書「資産設計塾 外貨投資編」123ページの表に掲載されている3本のインデックスファンドのリターンを同じ2006年末で計測してみると、ファンド毎の多少のバラつきはあるものの、1年ではインデックスマイナス1.5%程度、3年、5年と計測期間が長くなるとさらにインデックスに対するマイナス幅が広がる結果になりました。

■ なぜインデックスに勝てないのか
 アクティブ、インデックスを問わず外債ファンド(投資信託)の運用には様々な困難があります。例えば、ファンドに大量の現金が入ってきた時、債券を組み入れるまで、円金利での運用になってしまう機会損失、逆に解約に備え、ある程度の円キャッシュをファンドにキープしておくことも制約条件になります。

 そして何と言っても、必ずかかってくるコストが信託報酬です。アクティブファンドであれば年間で1%台前半、インデックスファンドでも0.7%前後かかります。金利を中心にした収入の中からのコスト負担は時間の経過と共に大きくなります。また外国債券の売買にもコストがかかります。円で集められた資金を外貨にして各債券の決済をしていくわけですが、為替と債券売買に伴うコストもマイナス要因になります。

■ 悩ましい外国債券の運用
 ファンドがインデックスに勝てない理由ばかり書いてきましたが、他の外国債券型の商品にもそれぞれメリット・デメリットがあります。

 例えば為替保証金取引は為替手数料が低く、外貨の買いポジションを保有すれば、スワップ金利も受け取れますが、円金利の上昇リスクを持ちます。また短期金利に連動していますので、外国債券のような長期金利での運用はできません。また税制が他の金融商品と異なります。

 外貨MMFは1万円から投資できる点が優れていますが、こちらも短期金利に連動する商品です。また為替手数料は為替保証金取引に比べると高めになっています。

 外債を直接購入すれば、信託報酬がかからず長期金利での運用ができます。しかしこの場合も為替手数料はかかりますし、投資単位が大きくなりがちですので、自分で通貨分散を行うにはそれなりの資金と商品ラインアップが必要になります。

 このようにどの商品にもメリットとデメリットがあり、悩ましいものです。外国債券に限らず資産運用で大切なのは、デメリットがあるから何もしないというのではなく、良い面、悪い面を比較しながらベターな選択をしていくことです。

 私自身の外国債券運用は、下記拙書の129ページに比率を掲載していますが、外国為替保証金取引の残高が半分以上とかなり偏っています。上記のメリット・デメリットを認識しながら今後も定期的に見直していくつもりです。

内藤忍の資産設計塾 外貨投資編
http://www.monexuniv.co.jp/book/#credit

今回の話のまとめ---------
■ 「外国債券」とは為替リスクのある金利収入中心の商品 
■ 外債ファンドでインデックスを上回るのは難しい
■ 外国債券の運用商品はベターな選択という視点が特に必要

ではまた来週・・・。

※コラム中の運用実績等の数値は、過去の実績であり、将来について予測、保 証するものではありません。また、本コラムは筆者の個人的意見をまとめた ものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません

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