中国はこれからどうなる? ★★☆☆☆

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

中国はこれからどうなる? ★★☆☆☆

 株価の急激な上昇に伴い、中国株に個人投資家の注目が集っています。例えばマネックス証券で販売しているHSBCチャイナオープンやニュー・チャイナ・ファンドの運用レポート(8月末)を見ると1年で80%〜90%とかなりの上昇率になっています。9月になってからはさらにその勢いに加速がついており、動きの鈍い日本株に比べ、有望な投資先として今後の相場の動きを気にする人が増えているのだと思います。

HSBCチャイナオープン(PDF形式)
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M632.pdf
ニュー・チャイナ・ファンド(PDF形式)
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M626.pdf

 そんな中、英国の経済誌「The Economist」が中国経済に関する特集を行っているのを見つけました。そのレポートを読むと中国経済に対する見方を整理できます。

The Economist(英語です)
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=9861591
 以下、掲載内容を自分なりに整理してみました。

 中国経済は1978年以来、年率10%平均の経済成長を続けており、これは日本やアジア諸国の高度経済成長を上回る長期間になっています。中国経済の死角として、景気過熱とインフレによるハードランディング、株式のバブル崩壊、米国経済減速の影響、労働コストの上昇による競争力低下などが指摘されています。

■ インフレ懸念
 現状の中国は8月の消費者物価指数が6.5%と景気過熱によるインフレ懸念を心配する見方があります。しかし、食料品を除くインフレ率は0.9%に過ぎず、景気過熱ではなく食料の需給悪化が原因であることがわかります。2007年前半は、潜在成長率を上回る成長になりましたが、90年代に実現したギャップに比べると大きなものではなく、インフレによるハードランディングシナリオは可能性が低そうです。

■ 中国株はバブルなのか また下落したときの影響は?
 株価の急激な上昇から、近い将来の価格調整が発生するのではないかとの見方もあります。PERが50倍近くに跳ね上がり割高感が指摘されていますが、バブル時の日本株やITバブルの時のナスダックのPERが100倍を越えていたことを考えれば、過熱感のピークはまだ先ではないかと考えることもできます。

 中国で取引されている株式のGDPに占める比率は35%に過ぎず、ピーク時に180%だった米国に比べると低い水準です。また個人金融資産に占める比率も20%以下で、株価調整時の個人消費へのインパクトも大きくないと予想されます。不動産についても中国では一部の都市を除いて1桁の上昇率で、全体としての過熱感も小さく、資産の下落が経済に影響を与える可能性は小さいと言えます。
■ アメリカ経済減速の影響
 米国経済の減速によって中国の輸出が低迷するというシナリオも大きな影響にはならないようです。輸出は中国のGDPの40%を占めますが、国内需要のインパクトが大きいからです。また輸出に占める米国の比率も下がってきており、むしろ米国への輸出の減少は、国内景気の過熱を防止したり、貿易黒字問題を軟化させるのに好都合とも言えます。また、景気減速になれば、財政政策の出動余地もあります。最悪の場合はインフラ、教育、医療などへの投資で支えることが可能です。

■ 労働コストは生産性向上に伴いまだ割安
 中国の労働コストの上昇が、低い労働コストという経済成長の源泉を他国に奪われるのではないかという懸念も指摘されます。賃金に関しては2000年から2006年にかけて2倍程度に上昇していますが、労働生産性が4倍近く向上しており、単位当たり賃金は低下しているのです。また労働人口が2015年をピークに減少するという予想もありますが、地方から都市部への人口流入によって解決できるとの見方もできるのです。

 このように中国経済の懸念材料とされているものは同誌のレポートによれば解決可能な問題と分析されています。中国経済は、高い貯蓄率、オープンな貿易、高い教育水準、そして強い生産性の向上によって当面は順調というのが、結論と言えそうです。

■ 日本の個人投資家は中国株とどう付き合う?
 上記の見方は1つの雑誌の分析に過ぎません(しかも私の解釈が間違えている可能性もあります)。参考になる分析とは思いますが、判断には複数の材料を用い、最終的な判断は自分で行わなければなりません。

 また、経済の動向と株価の動きが必ずしも同じ方向とは限りません。経済成長が続いても株価が下落することはありえます。1国の経済情勢の予測だけを資産運用全体の判断材料に使うべきではないのです。中国株への投資は<マネックス・ユニバーシティ>メールの下記のコラムでも書いたように、外国株式、その中の新興国株式への投資比率から考えていくのが、正攻法だと思っています。

中国への投資、資産全体の割合をもっと増やしたほうがいい? 
http://www.monexuniv.co.jp/mail_magazine/2007/09/sodan0928.html

 2001年から2005年にかけて中国株は55%下落しました。リターンとリスクは表裏一体の関係にあることは、資産運用の永遠の真理です。

今回の話のまとめ---------
■ 中国株式の上昇は続いているが、まだ続くかもしれない 
■ 中国経済の懸念材料については楽観的な見方もある
■ 複数の情報を収集し、投資の最終判断は自分自身で行うべき

ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp

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・・・投資信託取引に関する重要事項について・・・・・・・・・・・・・・<HSBC チャイナオープン>
(リスク)
・当ファンドは、主として株式等値動きのある証券に投資しますので、基準価 額は株式市場の動向等により変動します。株式市場が下落する局面では、同 じように基準価額も下落する傾向があります。当ファンドは投資元本が保証 されているものではありません。
・ 当ファンドの基準価額の変動要因としては、「株価変動リスク」「信用リス ク」「解約資金の流出に伴うリスク」「為替変動リスク」「カントリーリス ク」「デリバティブ取引のリスク」などがあります。
(手数料など)
・申込手数料(税込) : 1,000万円/口未満 3.15%、1,000万円/口以上1 億円/口未満 2.1%1億円/口以上5億円/口未満 1.05%、5億円/口以上 なし
・解約手数料:なし
・信託財産留保額:なし
・信託報酬(年率:税込):純資産総額に対して 1.89%

<三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド>
(リスク)
・ 当ファンドは、主に海外の株式などを投資対象としているため基準価額は変 動します(外貨建証券は為替変動リスクもあります。)。したがって、基準 価額の下落により、損失を被ることがあります。
・ 当ファンドの基準価額の変動要因としては、「価格変動リスク」「市場リス ク」「信用リスク」「流動性リスク」などがあります。
(手数料など)
・申込手数料(税込) :なし
・解約手数料:なし
・信託財産留保額:約定日の翌営業日の基準価額に0.3%を乗じた価額
・信託報酬(年率:税込):純資産総額に対して 1.89%
※投資信託取引にあたっては、商品毎の投資信託説明書(交付目論見書)をご 覧ください。

・・・中国株取引に関する重要事項について・・・・・・・・・・・・・・・・
中国株取引にあたっては、約定金額×0.2999%(最低手数料73.5香港ドル)の国内手数料が必要となります(現地手数料は無料(0円)となります)。なお、中国株取引に関しては、売買手数料のほかに諸費用がかかりますが、本メールには記載できないため、詳細は、以下をご確認ください。
http://www.monex.co.jp/ServiceInformation/00000000/guest/G900/srv/srv05china.htm
中国株取引には「価格変動リスク」、「信用リスク 」、「為替リスク」があり、元本および配当(分配金)が保証されているものではありません。したがって、お取引の際には、このような中国株取引の特性を十分に把握し、お客様自らの資力、投資目的および投資経験等に照らして判断することが肝要です。
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