基準価額49,702円の投資信託は買ってはいけない?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

基準価額49,702円の投資信託は買ってはいけない?

最近、出版社の編集者の方とお話していたら、今年は株式投資関係の書籍は売れ行きが急減。投資信託とFXの本が売れているということでした。投資信託は個人投資家が最初に活用すべき商品ですが、ようやく個人投資家の方にも浸透してきたようです。しかし、投資信託に関してはまだまだ誤った認識をされている方がいます。例えば基準価額に対する考え方です。

■ 基準価額に対する個人投資家の誤解
 新興国の株式市場の上昇に伴い、BRICs関連の投資信託の基準価額も上昇しています。例えば中国株式に投資を行うHSBCチャイナオープンの基準価額は49,702円と設定時の5倍近くに上昇しています(2007年12月13日現在)。
 このように基準価額が高くなってくると、ファンドが割高だと思ったり、購入金額が大きくなってしまうと勘違いする個人投資家がいるようです。その対策として、上昇分を分配金にして基準価額を下げるファンドもあるようですが、本末転倒のファンドと言えるでしょう。むしろ分配金をあまり出さず、上昇分をファンド内でさらに再投資する方が良心的なファンドです。

 実は基準価額の価格水準は投資の判断には何の影響もありません。5万円近くまで上昇したからと言って買わない、という理由にはならないのです。具体例で説明してみましょう。

■ 基準価額は設定時によって大きく異なる
 例えば基準価額が1万円のAファンドと5万円のBファンドがあったとします。組み入れ銘柄や運用方法が同じだとした場合、どちらのファンドを購入した方が良いでしょうか。結論は

 どちらでも同じ

です。話を単純にするためにどちらも当初1万口を1万円(1口=1円通常の設定方法)で設定されたファンドだとします。現時点で基準価額5万円になっているBファンドは1万口で5万円まで値上がりしているわけです。

 もしこのような基準価額が5万円のBファンドを購入すると、1万円で2000口購入することになります。高いところで購入しているように見えますが、同じ組み入れ銘柄ですから、1万口で1万円のAファンドを購入するのと単価が異なるだけで実は同じ経済効果です。

 例えば10%値上がりすれば、Aファンドは1万円の基準価額が11000円に、Bファンドは5万円の基準価額が55,000円になります。1万円投資した場合、どちらのファンドを買っていても、11,000円になります。保有口数が異なるだけなのです。

Aファンド 1万円(1万口)→11,000円(1万口)
Bファンド 1万円(2,000口)→11,000円(2,000口)

 基準価額というのは設定した時点での1万口の価格を基準に計算しているだけですから、これからの値上がり値下がりとは関係ありません。

 また基準価額が上昇しても、例えばマネックス証券では金額を指定して購入できますので、同じ1万円で積立を続けることも可能です。逆に基準価額が5000円に下落すると同じ1万円で今度は2万口買えることになるのです。

 基準価額は設定時からの値上がり値下がりの傾向を知る目安にはなりますが、それ以上の意味はなく投資信託の商品選択には関係ないのです。新興国のファンドも数年前に設定されたファンドは基準価額が上昇していますが、最近設定のものはそれほどではありません。だからといって後者のファンドの運用が悪いわけでもなく、前者のファンドが高すぎるとも限らないのです。

■ 知っているつもりの知識も年末に再確認
 投資信託は何となく理解するのは簡単ですが、意外に奥が深いものです。投資の専門家と言われる人の中にも勘違いをしている方が多かったりします。
 例えば、どの投資信託を選んだら良いかについて考え方はすっきりと整理されていますか?

投資信託の選択方法
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/007801.html

 あるいは、投資信託の売り時が3つあるのですが、どんな時かご存知ですか?
投資信託の3つの売り時はこちらから
http://www.monexuniv.co.jp/mail_magazine/2007/06/okanenosodan20070601.html

 このような知識は知っているか知らないかで投資の成果に影響します。年末のまとまった時間に知識の整理をしておきましょう。

 書籍で勉強するもよし、マネックス証券のお客様なら無料で受講できるEラーニングも使えます。

マネックス・ユニバーシティのおススメ書籍
http://www.monexuniv.co.jp/book/

マネックス・ユニバーシティのEラーニング
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G800/mu/mc_index.htm

今回の話のまとめ---------
■ 投資信託は個人投資家が活用すべき最初の商品
■ 知っているようで意外に知らないのが投信の知識
■ 分配金や基準価額など基本的な知識を身につけて商品選択をしよう

ではまた来週・・・。

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