この相場で個人投資家がやるべき3つのこと

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

この相場で個人投資家がやるべき3つのこと

ネット証券では相場が急落するとログインする人が減ると言います。自分のポジションの評価が下がっていくのを見るのは誰でも嫌なもの。見たくないからログインしない。その気持ちは良くわかります。しかし、そんな相場になった時こそ、これからどうするかをいつも以上に真剣に考える時期と言えるのです。

■変動を予想できた人はいないが、相場の変動率は想定内
 残念ながら昨年後半からの相場の下落をここまで予想できた人は、投資のプロと言われる人でもほとんどいません(昨年の新聞記事を読み返してみて下さい。)。しかし今回のような相場は変動率で見ると、過去データからはそれほど例外的なことでは無いのです。

 例えば、日本株(インデックスです)であれば、月間で(年間ではなく)10%の下落というのは数年に1回は起こっていることです。

 また慎重に分散投資をしていたとしても、(日本株に比べればかなり変動率は抑えられますが)運用成果がマイナスになっています。例えば、昨年の1月に設定されたマネックス資産設計ファンドの基準価額は昨日時点で8,848円です。1年間で12%の下落ですが、これもボラティリティ(変動率)が7%程度のポートフォリオであれば、その2倍程度の変動は想定内なのです。

 拙書「資産設計手帳のすすめ」の100ページに「マーケットが暴落したときは」という文章を書いていますが、過去の教訓から学ぶことは、2つです。

・多くの投資家は相場の急落で損失を抱えたまま投資をやめてしまう
・相場の下落は資産価値を減らすピンチですが、新規投資を安くできるチャンス
 常に上昇する運用方法などありません。また下落を事前に予測することはできません。とすれば、必要なのはこのような事態になった時、損失を抱えたまま市場から撤退しないための戦術論です。3つの対策を考えてみました。

<対策1> メンタルコントロールを行う
 まず重要なのは、メンタル面での整理です。これができていないと行動できないからです。これまで資産運用を続けた結果、評価損になっている人は「もし今まで投資していなかったら」とポジションが無い状態を想像してみることです。つまり過去の相場変動に伴う自分の投資行動に左右されず投資判断するなら、どう考えるでしょうか。

 もし、今からなら新規投資をはじめてみたい→資産運用を継続
 もし、今からであっても新規投資は控えたい→運用リスクを減らす

 という判断ができます。過去の実績に左右されない、今からゼロベースでどう考えるかを自問してみるのです。
 
 また過去の相場を鳥瞰してみるのも良いと思います。長期の過去データを振り返ると、相場下落は買い場であることが理解できると思います。最安値で買うことは出来ないとしても、相場の調整局面は購入コストを下げるチャンスでもあります。

 他の個人投資家から学ぶことも心理的に有効です。以前、Eラーニングの受講特典でインタビューした相場急変にも動じない3人の個人投資家の話は、このような相場になったときにこそ、参考にしていただきたいものです。

3人の個人投資家に学ぶ(受講者限定特典)
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G800/mu/mc_tokuten.htm

<対策2>資産の配分を見直す
 今回の下落で、リスクを取りすぎた、と思った方はこれを機に資産の配分をしっ
かりと見直すことです。12月末時点の資産の時価をベースにリバランスを検討する
のです。と言っても、いきなり資産配分比率を変更するのではなく、理想形を考え
て、現在の資産をどのようにシフトさせていくのかを計画するのです。

 比率を考えていくと恐らく下落した資産の組み入れを増やし、上昇している資産
の比率を下げる必要が出てくると思います。他の資産に比べ下落の大きい日本株は
購入していくことになるかもしれませんが、これは相対的に下がったものを買うと
いう投資行動になります。
 
<対策3> 淡々と継続できる仕組みを作る
 3つ目は長期分散投資を継続できる仕組みを作ることです。例えば「資産管理シート」を作れば、簡単に自分の全資産の運用状況を把握することができます。大切
なことは個別の銘柄の値動きではなく、自分の資産全体の時価の変動、そして自分
が現在どんなリスクを取っているかの認識、の2つです。

 仕組み作りに興味のある方は、年初に書いた下記コラムをもう一度読み返してみ
て下さい。

相場予想よりも仕組みを作る(バックナンバー)
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/008492.html

■ 夜明け前が一番暗い
 資産運用で大切なことは、目先の変動に振り回されないように自分が取ることがで
きるリスクの範囲内に自分の資産全体をコントロールすることです。ここまで相場が
悲観一色になっている時は、後から見れば相場の底値になっていることはよくあるこ
と。と言って、相場観で最安値で買うことができるほどマーケットは甘くありませ
ん。

 これから10年単位で運用を続けるなら同じような相場の変動が繰り返されることで
しょう。今回を自分の運用戦術の確立のための試練として修正すべき点をしっかり直
せれば、良いのです。つまり終わったことを悔やむのではなく、終わったことを糧に
未来に活かす。下げ相場でも得るものはあるのです。

今回の話のまとめ---------
■ 相場の予想はできなくても変動率は予想はできる
■ 窮地に立っているときこそ対策をしっかり考える
■ 下げ相場は長期運用の手法確立の好機ととらえる

ではまた来週・・・。

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