リタイアメント後に必要な商品はどこに?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

リタイアメント後に必要な商品はどこに?

 資産運用には3つのステージがあるのではないかと思っています。1つは社会人になってから定年まで、2つ目が定年になってからのシニアの前半(個人差はありますが75歳くらいまで)、そして3つ目がシニアの後半です。この3つに分類する理由は、お金との付き合い方がそれぞれの時期で異なるからです。
■ シニア前半期のお金との付き合い方
 社会人になってから定年までの資産運用の方法はシンプルです。例えば、拙書「資産設計塾」で提案しているような長期分散投資であれば、誰でも少額から実践することができます。この時期の資産運用で難しいとすれば、「相場変動に一喜一憂してしまい長期で運用を続けられない」「リスクを取る勇気が無く、いつまで経ってもはじめられない」といったメンタルな問題です。

 またシニア後半期はお金をあまり使わなくなる時期です。活動範囲も徐々に狭くなり、お金の動き自体も少なくなることが予想され、資産運用自体に悩むことは少なくなると思います。

 ところが、シニア前半期のお金の管理は、資産運用をしながら、今まで殖やしてきた資産をどうやって使うか、という「殖やしながら使う」ところに難しさがあります。資産運用のリスクも徐々に下げていくことになるでしょうし、お金の使い方の計画をどう立てるかが重要です。残念ながら日本の高齢者の方は過剰に保守的なお金の使い方をする人が多く、結果として生活をエンジョイできないまま、多額の金融資産を残してしまうケースが多いのです。

 にも関わらず、定年後のマネーを取り扱っている書籍を見ると、そんな殖やしながら使うニーズに応える商品があまり無いのように思えます。「定年後の・・・」といった書籍に出ているのは、SMA、変額年金、ターゲットイヤーファンドなどが目立ちますが、少なくとも自分の老後にはどれも必要の無い商品のように思えるのです。

■ SMA(ラップ口座)
 ラップ口座とは「Wrap=包む」が語源です。資産運用に関する包括的なサービスという意味です。証券会社が個人投資家と投資一任契約を締結し、投資アドバイス、売買の執行、口座管理など、資産運用に関するサービスをまとめて提供します。運用資産残高に対する一定の率を手数料として支払うことからSMA(セパレートリー・マネージド・アカウント)とも呼ばれます。

 富裕層にオーダーメイドの商品提供がパッケージで出来るということで、注目されているサービスですが、個人的にはあまり活用したいとは思いません。理由はコストです。ラップ口座の場合、残高に対しての年間フィーが3%程度かかると言われていますが、これではよっぽど優れた運用成果を出さないと証券会社に手数料を払うだけになってしまいます。

■ 変額年金
 変額年金とは投資信託を組み入れて資産を自分で運用し、その運用実績によって年金額や解約返戻金の額が増減する個人年金保険です。つまり保険の形になった自分で組み入れを決める保険付き投資信託と言う事もできるでしょう。
 変額年金保険のメリットは税金にあります。投信分配金が非課税になり、保険金支払時の生命保険料控除、相続税は法定相続人数分×500万円の生命保険金の非課税枠がある、といった点がシニア層に人気のようです。

 しかしこの商品もコストが問題です。契約初期に費用が3〜5%、さらに毎年2〜3%前後の手数料がかかるものが一般的で、税のメリットよりコストのデメリットが大きいように思えます。保険が主目的で無いのなら、投資信託を使って自分で運用する選択肢もあるのではないでしょうか。
(「資産設計塾 外貨投資編」お持ちの方は199ページをご覧ください)

■ ターゲットイヤーファンド
 ターゲットイヤー(目標年)に向けて、自動的にポートフォリオの中身を安定運用に切り替えていくファンドです。年数の経過と共に、株式などから、債券や短期金融資産などへ組み入れ資産をシフトしていきます。

 この商品も、コスト(販売手数料、信託報酬)はどうなっているのかを確認する必要があるのと同時に、資産配分がどのように変化していくのか納得できなければ投資判断ができません。その上で、自分が目標とする資産配分にある程度一致していないと活用する意味がなくなります。

■ 定年後に必要なのは低コストとキャッシュフローコントロール
 ここまで取り上げた商品が無くても定年後の資産運用には問題はありません。自分が定年を迎えたときを想像すると、必要な金融商品の条件は2つあると思っています。1つは低コストであること、もう1つはキャッシュフローコントロールができることです。

 例えば、マネックス資産設計ファンドのような低コストのバランスファンドで、運用しながら毎月一定金額を自動解約してくれる投資信託のサービスがあれば便利だと思います。これはバランスファンド座談会でも話題になっていたサービスです。

バランスファンドはどう選ぶ? 3ファンド徹底比較 座談会【限定特典】http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2008/news8022.htm
 1000万円購入しておいて、毎月10万円ずつ解約していく。毎月分配型のように分配金にするのではなく、自分が指定しておいた金額を買取り請求で減らしていくのです。損失が出ても、株式の譲渡所得から控除でき、譲渡損失が控除しきれない場合でも翌年以降3年間株式の譲渡所得の金額から控除できる税制上のメリットもあります。分配金ではないのでマーケット環境の変化によって受取り金額が変わることもありません。

 個人投資家を保護する金融商品販売法やシステム開発の問題などハードルはありそうですが、ネット証券で実用化すればニーズはあるのではないかと思います。少なくとも自分が定年後にあったら便利だな、と思う商品です。

■ 商品選択の基本視点
 商品を提供する金融機関として大切なことは、自分が本当に必要だと思うものを、提供していこうという姿勢だと思っています。

 一方、商品を活用する個人投資家の側から大切なのは、人気の商品、みんながやっているというだけで安易に商品選択をしないことです。自分で何が必要なのかを考える習慣をつけ、欲しいものがあったら金融機関にリクエストしてみることです。真に個人投資家を考える金融機関であれば、その声はきっと商品開発に反映されるはずです。

今回の話のまとめ---------
■ お金との付き合い方から考えると人生は3つに分けられる
■ 定年から75歳くらいまでのシニア前半の資産管理が一番難しい
■ 本当に自分が必要な商品を見極め、無ければリクエストしてみよう

ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧