2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
長期分散投資を続けていると最終的に大切なことは投資資産の選択や運用のテクニックではなく、同じことを根気強く続けることではないかと思うようになりました。名著「敗者のゲーム」で描かれているように、長期的な投資の成功者は大失敗をしない人であるからです。
これまで多くの個人投資家の方の投資行動を見てきましたが、相場が上昇してきて、過剰なリスクを取ってしまい、その後の相場下落で大きな損失を出し、市場から撤退する、というのが典型的な失敗パターンです。そのようなルールを外れた投資をしなかった人が最終的に長期運用を続けているといるのが現実です。
つまり一部の天才的な運用者を例外とすれば、一般に資産運用に必要な資質とは相場を読み、大胆にリスクを取る才能ではなく、決められたルールを愚直に守る規律にあるのです。
■ ファンドマネージャーの仕事
以前ファンドマネージャーの仕事をしている時に感じたことも同じです。投機的な運用を行うファンドの担当者ならともかく、年金基金のような長期で安定的な運用を行う場合、重要なのは運用のリスクからガイドラインを決定し、そのルールの中で規律のある運用を続けることです。
動物的な勘や瞬間的な判断力よりも、資産全体のリスクコントロールの方が重視されました。それぞれのファンドの運用目的に沿った運用ルールが決定され、リスク許容度を越えない範囲で効率的な資産配分ができるようなシステムになっているのです。
このような管理は、リスク管理を行なう専門の部署が担当しており、日々の取引にガイドラインを逸脱した過度なリスクが無いか、特定の銘柄に集中しすぎていないか、投資対象外の銘柄に投資していないか、といったことをモニタリングしているのです。
■ 個人投資家とファンドマネージャーの違い
個人投資家には機関投資家のファンドマネージャーのように運用のリスク管理をしてくれる部署はありません。自分で運用を行いながら、同時にリスク管理を行なうというマルチプレイヤーになることが求められます。スポーツで言えばプレイヤーと審判を一緒にやるような難しい立場になります。
プレイヤーとしての自分だけが前面に出てしまうと、自分を律することができなくなりルールを破ってしまうことになりがちです。その結果、リスクの取りすぎで相場の下落で損失が広がり、運用をやめてしまうことになるのです。
■ 筋トレと資産運用の類似点
最近読んだ「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」という本では、トレーニングにおいても目的の明確化、現状把握、目標の明確化、そして仕組み作り、というように自分を律することができるようにしっかり手順を決めて始める人は長続きしやすく成果をあげやすいという話が出ていました。
ちなみにここで言う筋トレとはムキムキのマッチョになるためのボディビルのようなものではありません。体の筋力を高めることによって病気になりにくく、基礎代謝が高く太りにくい体を作ることを目的にしているものです。
筋トレもやみくもに無計画に始めるより、どの筋肉を鍛え、その結果どうなりたいか(太りにくくしたい、健康になりたい、といった目的)を明確にしてからきちんと記録をしながら続ける方が成果が見えやすく、続けるインセンティブが高くなるということです。
長期で続けることによってはじめて成果が得られるという点で筋トレと資産運用には共通点がありますが、続けるための手法にも共通点が多いと思います。何のためにやるのか、という目的を明確にし、やるべきことを仕組み化することでムラのある運用から、長期で安定して続けられる運用へシフトすることができます。
どこに投資をすれば儲かるのか、ということを考える前に、どうやったら自分を律する仕組みを作れるのか、を考えた方が投資の成果は高まるのです。
今回の話のまとめ---------
■ 資産運用で大切なことは同じことを根気強く続けること
■ 個人投資家は運用とリスク管理を一人でしなければならない
■ 自分を律する仕組みを作ることが重要
ではまた来週・・・。
(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)
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