ETFの投資単位引き下げは個人投資家には吉報か?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

ETFの投資単位引き下げは個人投資家には吉報か?

 今週、野村アセットマネジメントが、いくつかのETFの売買単位を10分の1に引き下げると発表しました。引き下げの対象銘柄にはTOPIX連動型上場投信(1306)や日経225連動型上場投信(1321)も含まれています(変更予定日は9月1日)。これによって現状13万円前後のETFの最低投資金額は、13,000円程度まで下がり購入しやすくなります。

 インデックス運用を実践する商品としてはインデックスファンドとETFの2つがありますが、ETFは最低購入金額の高さが問題でした。インデックスファンドが1万円から購入できるのに比べ、10倍以上の投資単位になっていたのです。今回の変更はこの問題点をある程度解消することになります。

■ ETFの魅力は低い信託報酬
 売買単位が大きいにも関わらず、ETFが投資対象として検討されるのは、信託報酬の低さにあります。例えば、TOPIX連動型上場投信(1306)の場合信託報酬は年0.1155%(税込)で、同じTOPIXに連動したインデックスファンドTSPの信託報酬が年0.546%(税込)ですからその差は小さくありません。

■ 未だに有効なリレー投資
 では、今回のETFの投資単位の引き下げでインデックスファンドの利用価値はなくなってしまうのでしょうか?私はそうは思いません。インデックスファンドの最大のメリットは定額で積立ができることです。

 以前このコラムでインデックスファンドとETFの「リレー投資」をご紹介しました。最初に提案させていただいた5年前には誰もまだ使っていない方法であったと思いますが、今ではすっかり定番の投資手法になっています。

結局どうしたら良いの? インデックスファンドとETF(5年前のコラム)http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/002332.html

 これはインデックスファンドで毎月積立を行い、一定の金額に達したら解約してほぼ同額のETFにスイッチする方法ですが、ETFだけでは実践することはできません。

■ ETFの限界
 ETFのコスト面での優位性は長期に大きな金額で運用する場合には無視できません。しかし資産を積み立てていく過程においては、売買単位の小さくなったETFをインデックスファンドのように使うのは下記の点で問題があります。
・ETFは株式と同じように売買手数料がかかること
 (かからない証券会社もありますが・・・)
・金額買付ができないのでドルコスト平均法が使えないこと
・積立による自動買付もできないので、下がった時でも自分で買付が必要
 特に3番目のポイントは行動心理学的な意味があります。多くの個人投資家は、株価が下がっている局面で追加で購入していく「買い下がり」には心理的な抵抗が大きいからです。例えば、今年の1月や3月のような急激な下げ局面になると「1回休み」をしてしまうことが多いのです。そんなタイミングを考える投資を防ぐには、自動積立という選択肢が有効なのです。

■ 基本は「ベストよりベターを」
 今回のETFの投資単位の引き下げは悪い話ではありませんが、リレー投資の方法を変えるほどのインパクトはありません。インデックスファンドの代わりにETFで毎月購入することでコストは下げられますが、それによって手間とストレスは増加します。コストは低いに越したことはありませんが、それに伴うデメリットも総合的に考えて活用する商品を選択すべきです。

今回の話のまとめ---------
■ 投資単位の引き下げは投資の幅を広げる
■ ETFはドルコスト平均法ができないことが最大の問題
■ コストと利便性からベターを考えるのが資産設計のスタンス

ではまた来週・・・。

(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp
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