構造的か?循環的か? - 鳥瞰して2つに分類してみる

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

構造的か?循環的か? - 鳥瞰して2つに分類してみる

相場が不安定になると、過激な相場観や極端な悲観論が支持を受けるようになります。私が資産運用の仕事に関わり始めたのは、1987年の夏に信託銀行で為替ディーリングをはじめてからですが、その後20年間でマーケットには何回も不安定な時期がありました。

 仕事を始めて数ヶ月後の10月19日にはブラックマンデーが起こり、翌日の日経平均は1日で約15%も下落。その後のバブル崩壊後も、国内では阪神淡路大震災、山一證券の自主廃業、海外ではアジア通貨危機や、ヘッジファンドLTCMの破綻、NYテロ、と市場はネガティブなイベントがある度に不安定になり、その度に目先しか考えない行動をする人が増えました。

 長期で資産を殖やすためには、個々のイベントに一喜一憂するのではなく、マーケット全体を鳥瞰するような大きな視点を持つことが必要になります。その時に大切な視点は、起こっている事象が構造的変化なのか循環的変化なのかを見分ける習慣をつけることです。

■ マーケットは基本的に循環する
 構造的変化とは物事が一方向に変化して元に戻らないこと、循環的変化とは物事がサイクルを作り季節が移り変わるように動くこと、です。

 資本主義社会の枠組みが維持されている限りにおいて、個別の銘柄は別として、マーケット全体は循環的です。例えば、景気のサイクルによって金利は上下動を繰りかえしますし、株価は一時的に過剰に売られることはあっても、最終的には企業収益から換算される理論値に向けて戻ってきます。

 逆に構造的な変化が発生するには、全体の仕組みを根本から変えるような技術革新や政治体制の変化といったパラダイムシフトが必要です。

 もちろん世の中で起こっている現象が構造的なのか、それとも循環的なのかを判断することは簡単ではありません。しかし、資産運用で大きな変化が起こった時に慌てる前に、まずその変化はサイクルなのか、それともパラダイムシフトなのかを考えることで、冷静さを取り戻せるのです。

■ 構造的変化には順バリを、循環的変化には逆バリを
 もし構造的変化であると判断したら、その変化が続くことを前提に資産運用を考えていくことになります。具体的には、順張りで早く対応することになります。ところが循環的変化であれば、いずれマーケットには逆方向の修正が入りますから、タイミングを見て逆張りをする方が有効です。トレンドなのかサイクルなのかによって対策はまったく逆になるということです。

 では、現時点の世界を見たとき、資産運用の観点から中長期的な時間軸でテーマとなるもの、例えば

インフレーション
米国経済
新興国経済
コモディティ(原油、食料)問題

はどう考えたら良いでしょうか。これらは循環的なものなのでしょうか、それとも構造的なものなのでしょうか。私の個人的な考えは敢えてここには書きませんが、例えば、米国経済が構造的に衰退へのプロセスを歩むと考えるのであれば、米ドルの保有を減らしていくべきでしょう。また、新興国市場が、調整はあっても長期で成長を続けると予想するならリスクを取れる範囲で新興国投資の比率を引き上げるのがロジカルな投資行動です。

 このような構造的変化には、以前このコラムでご紹介したような「戦略的アセットアロケーション」で対応することになります。つまり基本となる資産配分を見直すということです。

 逆に循環的変化であれば「戦術的アセットアロケーション」で対応していくことになります。

 下記のバックナンバーも参考にしてみてください。

アセットアロケーションは戦略的に考え戦術的に行動する(バックナンバー)http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2008/06/27.html

 8月のお盆休みでゆっくりと時間がある方は、10年後20年後の世界を考え、その中で自分の資産をどのように配分するのかを考えて見てはどうでしょうか。その時には、大きく鳥瞰して、まずは2つ分けてみることを意識してみてください。

今回の話のまとめ---------

■ 相場が不安定になると長期で考えない人が増える

■ 構造的変化には順バリを、循環的変化には逆バリを

■ 長期の世界のシナリオを考え、2つ分類してみよう

ではまた来週・・・。

(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp
生まれて初めて長野でセミナーをやります。
https://seminar.monex.co.jp/public/seminar/view/915
「できる人の「仕事の極意」に学ぶ」に24人の1人として登場していますhttp://www.monexuniv.co.jp/new/2008/24.html

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