どうする?利回り3.22%のサムライ債と14.38%のトルコリラ債

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

どうする?利回り3.22%のサムライ債と14.38%のトルコリラ債

マーケット全体のリスク許容度が下がっています。個人投資家も、株式取引から撤退し、リスクの低い資産にシフトする動きが加速しているように見えます。そんな中で注目されはじめたのが債券です。今朝の日経新聞には米国の一流金融機関のサムライ債の募集広告がカラー一面で出ていましたが、3年債で利回り3.22%。私の周りにも気になっている人がいるようです。

 そして金利だけ見るともっと魅力的なのが、マネックス証券ではアジア開発銀行のトルコリラ建債券。こちらもほぼ同期間の3年債ですが年利率は14.38%(税引前)。

トルコリラ建アジア開発銀行債の詳細
http://www.monex.co.jp/Etc/topslide/guest/G800/new2008/news809p.htm
 このような債券を投資対象としてどう考えるか?今回はこれがテーマです。
■ サムライ債には信用リスク
 まず、サムライ債から見ていきましょう。「サムライ債」とは最近良く聞く言葉ですが、これは、海外の発行体が日本で発行する円建ての債券のことです。つまり外国の企業が円で資金を調達するための商品です。企業が発行するサムライ債なら、外資系の会社の社債ということです。

 社債ですから信用リスクがあります。信用リスクは格付けによって知ることもできますが、これは現時点のものであり、将来信用度が下がれば格下げということもあり得ます。逆にこの信用リスクを取っている分、金利が高くなるということです。

 米国の金融情報をウォッチしているMBHアメリカの大八木さんによれば、円のスワップ金利とCDSスプレッドから計算すると、今回のサムライ債は、マーケット価格から計算される理論値より良い金利だということです。無知な個人投資家が、情報の非対称性によって、高い買い物をさせられている、ということは無いようです。

 ただし、今後の米国の金融機関の経営環境によっては、リスクも依然として残っています。リスクに見合ったリターンが提供されている背景には、今回のように好条件を呈示して、資金調達を急ぎ、必要な資金の手当てを優先していると見ることもできます。

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■ トルコリラ債には為替リスク
 一方のマネックス証券で取扱いをしているトルコリラ債は発行体の信用度の高い債券です。アジア開発銀行の格付けはS&P、ムーディーズ、どちらも最高位のトリプルAとなっています。しかし外貨建て債券ですから為替のリスクがあります。

 こちらも、金利水準から見れば、個人投資家に販売する債券のプライシングとしては妥当な水準と考えられますが、トルコリラは変動性の高い通貨ですから、急激な円高になれば金利のリターン以上に為替でやられてしまうことにもなりかねません。

■ 債券投資で取るべきリスクは何か?
 このようにどちらも割高な商品というわけではないようですが、債券だからといってリスクが無いわけではもちろんありません。リスクの無いところにリターンはない、というのが金融の鉄則です。

 問題はそれぞれの商品が持つリスクがそれを購入する個人投資家にとって取るべきものなのか、という判断です。

 ここからは私の個人的な見解になりますが、拙書「【新版】資産設計塾」75ページで書いているように、「信用リスクは債券では取らない」というのが、基本的な考えです。債券の場合、満期まで発行体が破綻しなくても、戻ってくるのは元本と金利だけです。株式のようにキャピタルゲインはありません。逆に万が一のことがあれば元本の一部あるいは全部が戻ってこない可能性もあるわけです。

【新版】資産設計塾
http://www.monexuniv.co.jp/service/book_dvd/index.html#book3

 このような商品において信用リスクを取っても、利益は限定されており、損失は(可能性は低いですが)発生すると大きなものになります。つまり債券とはアップサイドが限定された商品であり、信用リスクの小さい(つまり格付の高い)商品を選択すべきと思います。

 為替リスクに関しては、資産全体の中で外貨建て資産をどの程度まで保有し、それをどの通貨に分散させるのかを考えるべきです。外貨資産比率を決め、その中でトルコリラに何%くらいの配分にするかを決めていくのです。

 債券投資はリスクよりも表面金利の数字だけに注目して投資判断してしまう人が多いのですが、
1.どんなリスクがあり
2.それがリターンに見合ったものなのかを確認し
3.自分にとって取る事のできるリスクかどうかを判断
してから投資しましょう。


※最後までお付き合いいただいた、勉強家の方には9月22日から受講者限定で 公開される『今だからこそ考える、海外ETF投資』もどうぞ。

http://www.monex.co.jp/Etc/topslide/guest/G800/new2008/news809g.htm

今回の話のまとめ---------
■ 信用リスクは債券では取らないのが「資産設計」の考え方
■ 債券の金利が高いということは、それに対応するリスクがある
■ リスクの無いところにリターンなし、リターンあるところにリスクあり
ではまた来週・・・。

(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp

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