本当に長期投資していても大丈夫?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

本当に長期投資していても大丈夫?

このところの相場の影響で、緊急取材ということで新聞社や雑誌などから依頼を受けることが多くなりました(先ほども明後日の日経新聞朝刊記事の取材がありました)。また、個人投資家の皆様からも問い合わせが増えています。最近多いご質問は「本当に長期投資していても大丈夫でしょうか?」というもの。

 今回はこのテーマを2つの側面から考えてみましょう。

■ 長期で見た成長率とリターンの関係
 まずは過去のデータから見てみます。例えば、下記のリンク先はこのコラムを読んでいる方のために、日経マネーさんにお願いして連載コラムのデータを転用させてもらったものですが、下の表は経済成長率と各国の株式市場の騰落率の関係を過去3年間のデータでプロットしたものです。

リスクとリターン、成長とリターンの関係
http://www.monexuniv.co.jp/service/20080918nikkeimoney.html

 全体に新興国が右上、先進国が左下という傾向があります。つまり半年1年といった短期ではなく、もう少し長い期間で見ていくと、株式市場のリターンは経済成長率に正の相関を示す傾向があるということです。

 これは3年間のドルベースのデータですが、もっと長期のデータ、あるいは円ベースで計測しても同様の結果が得られます。つまり長期で見れば経済成長がマーケットの上昇にリンクしているということができます。成長に投資するというのは、少なくとも過去データでは理にかなっているのです。

 こちらのグラフとさらに詳しい説明は、明日発売の日経マネー11月号に掲載されます。連載コラム「おカネのウソ・ホント」をご覧ください。

■ バリューアップに対する報酬
 もう1つの考え方はもう少し本質的です。そもそもナゼ投資からリターンが得られるのかという根源的な疑問から考えてみます。資本主義における収益は価値の創造に貢献しているのか、によると考えられます。

 例えば投資による資金が経済活動に有効に使われ、成長に貢献することができれば、その一部を利益として受取ることは、成長に対する貢献の対価として正当化できるのです。

 市場の平均を狙う長期投資の場合、そのリターンの源泉はまさに成長に対する貢献です。投資が、世の中のバリューアップ(価値の創造、向上)に貢献していれば、投資のリターンという形で還元されるのです。

 バリューアップとリターンが完全に相関しているわけではありませんが、投資家がリスクを取って価値の創造に貢献したのに、それに対する見返りが無い仕組みになっていれば、市場に資金は供給されません。資本主義が成り立たなくなってしまうのです。

■ 長期分散投資を続けるべきか
 長期投資の効果だけではなく、分散投資の効果についても疑問を持つ人がいるようです。今回のような世界的な信用収縮の過程では、株式と不動産の下落と外貨の下落(円高)が同時に発生し、すべての資産がマイナス方向になり、分散していても意味が無いのでは?と思うのも無理はありません。

 しかし、分散を行なわないでどこかの投資対象に集中させていたらさらにひどい結果になっていた可能性があります。つまり、分散投資はやらないよりやった方が良いのです。

 分散していても想定以上の大損になったというのは、分散投資の問題ではなく、そもそもリスクの取りすぎであったということです。資産全体のリスクとしてどの位のマイナスになるか想定し、その範囲に入っていれば、分散投資でコントロールされていたと考えることができます。

■ 結論はこれから
 実体経済の長期的な成長がリターンの源泉になるという前提に立ったとしても、その効果は1年2年の短期では必ずしも実現されるとか限りません。長期分散投資には時間が必要なのです。

 市場に「絶対」「必ず」は残念ながらありません。過去の延長線上に未来がある、というのも絶対ではありません。しかし、投資で成功するためには、あらゆる角度から考えて、可能性の高いと思うことを続けていくのがベストです。
 正しいことを長期で続けていけば、いつか成果に結びつく。仕事でも投資でも、人生すべてに共通の真理ではないか。
これが最初に書いた「最近多いご質問」に対する私の回答です。

今回の話のまとめ---------
■ 過去の長期データでは成長と株式リターンには相関がある
■ 投資のリターンはバリューアップによって正当化される
■ 将来はわからないが、正しいことを長期でやれば成果につながる

ではまた来週・・・。

(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp

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