行動する個人投資家から学んだこと

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

行動する個人投資家から学んだこと

 最近、ブログを運営されている個人投資家の方とお会いしてお話する機会が増えました。このような個人投資家同士の交流は最近盛んになってきたようで、例えばグーグルで「インデックスブロガー」と検索すると、関連情報がたくさん出てきます。実は昨晩も、5名のインデックス投資家の皆様とお会いして投資に関しての情報交換をさせていただきました。

 お仕事の傍らで投資をし、その経験を頻繁にブログを更新する方々でしたが、その知識や情報収集のスピードは本業にしている私も参考にさせていただくくらいの高いレベルです。投資が本当に好きな人たちが、心から納得できる商品を自分で組み合わせ、じっくりと成果を待つ。そんなプロセスを楽しんでいるように思えました。

 昨晩も、
「インデックスファンドとETFの信託報酬の差はどの位までなら許容できるか」「直販投信を応援するのは個人投資家にとって良いことなのか」
「相場が下がった時にやることは何か」
「東証に上場するETFが増えてきたら商品選択はどう変わるのか」
などなど、話が尽きることはありませんでした。

 このブロガーの皆様ですが、単にマニアックな情報を集めているだけの投資オタクではありません。分析して、それを実際に自分のお金を使って投資の実践につなげているのです。しかもそれだけではなく、最近では金融機関に対して積極的に行動する人まで現われました。

■ 信託報酬を下げることを明言した運用会社
 例えば、大阪からいらしたお1人の方は、インデックスファンドを運用しているとある運用会社(マネックス証券でも販売しています)に直接手紙を書いて、信託報酬の引下げの可能性について質問したそうです。

 すると、何と運用会社の担当者から回答が届きました。担当者の私見という断りが付いていたようですが、こんな手紙が届いたそうです。

「ファンド毎に純資産残高が50億を超えた場合は、委託(運用者取り分)報酬の引き下げを行い、残高逓減料率に変更を行う方向で検討したいと思っています。」

 私見とは言え、個人投資家の質問にここまで踏み込んで発言できる運用会社も大したものです。リベラルでかなり風通しの良い会社なのでしょう。このような運用会社にアプローチして、ここまでの発言を引き出してしまう個人投資家のパワーもスゴいと素直に感心してしまいます。

 純資産額の増加に伴って信託報酬の引下げを行なうことを明記しているのは直販投信やごく一部のファンドだけです。販売会社経由で販売を行う大手の運用会社のこのような動きは、個人投資家重視の姿勢として高く評価されるべきだと思います。

 資産が数兆円規模になって、年間100億円単位の信託報酬が入っているファンドが、信託報酬の引下げについて消極的なのとは対照的なスタンスです。
■ 自然体で長期投資を続ける
 昨晩話していて感じたのは、初対面の方も多かったにも関わらず、気持ち良く時間が過ごせる方ばかりだったということです。投資という共通の話題があり、それだけで話が弾んだという面もありますが、それだけではないと思います。

 共通していたのは、人の批判や相場低迷の愚痴を言うのではなく、これからも自分の責任で意思決定をしていこうという前向きな投資姿勢です。そして投資の手法はそれぞれ異なりますが、リスク管理はしっかり行なっていました。
 リスクを把握する体制ができれば、自然体で長期投資を続けることが可能になります。だからリラックスして、ここ1年の相場変動を短期のブレととらえむしろ楽しむような余裕が感じられました。こんな意見もありました。

「こんなこと言ったら、怒る投資家がいるかもしれないけど、ボクは10年後20年後に資産を殖やそうという目標だから、これから数年はもっと相場が下がっても良いかなと思っている。その間安く買うことができるからね」

 マーケットと資本主義の未来を信頼し、自分の投資の目的(いつまでにいくら)を明確にしそれに最適な投資方法を行なっているからこそ言えること。そんな心理的な余裕が無い方は、投資の基本三箇条を読んでみてください。
マーケットが下がった時に再確認 投資の基本三箇条
http://www.monexuniv.co.jp/base.html

 行動する個人投資家のネットワークは広がりつつあるようです。前向きで自己責任で行動できる個人投資家の皆様のネットワークをさらに広げるためにマネックス・ユニバーシティとしても何かできないか。考えてみたいと思います。
今回の話のまとめ---------
■ 個人投資家にはプロ顔負けの知識を持った人たちがいる
■ 彼らは知識を貯めこむだけではなく投資を実践し行動している
■ リスク管理をしっかりすれば自然体で長期投資を続けることができる 
ではまた来週・・・。

(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp

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