短期の予想と長期の予想はどっちが難しい?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

短期の予想と長期の予想はどっちが難しい?

マーケットの不安定な動きは続いています。MBH Americaの大八木さんによれば、昨日のNYダウの日中の値幅は552ドル。信用リスクも拡大傾向にあり、落ち着くまでには時間がかかりそうです。今日の日経平均も前場で5%近く下げました。

 このような環境下、運用会社や証券会社、さらには金融情報ベンダーなどから大量のレポートが出ていますが、正直どれも賞味期限が極めて短くなっています。そもそも1日で5%以上変動しても驚かないマーケット環境ですから、1週間もすれば、情景がすっかり変わってしまいます。株価の水準や為替レートの予想レンジを見ても、桁が間違っているんじゃないの?と思うようなこともしばしばです。

 月刊誌に予想レンジなど掲載している専門家の方になるとさらに大変です。今月発売のマネー誌は、締切が9月末から10月上旬のものですから、3週間前のマーケットを前提に書かれています。予想数値を書いている方は、ホンネでは「短期的な予想なんて少なくとも今は出来ないよ」というところではないでしょうか。

■ 短期の予想は極めて困難
 変動の激しいマーケットでなくても、そもそも短期的な予想をすることは基本的に難しいのではないかと思います。要因分析をしてネガティブな材料、ポジティブな材料、を解説するのは情報としては価値がありますが、分析の結果、どちらの方向に進むのか、を予想することはそれらが合成された結果、最終的にどういう動きになるのかを判断しなければなりません。

 さらに当初想定していなかったようなリスクが顕在化することも珍しくありません。政府や中央銀行の施策(利下げ、為替介入、財政政策)が突然発表されることもあります。将来のイベントリスクによっても大きな影響を受けます。
 そして実際のマーケットの心理状態が値動きを大きくします。想定された情報だけから判断するだけでも極めて困難であるのに、このような不確定要因が多すぎるマーケットでは短期の予想が当たったとしても、それは必然というより偶然のように思えてしまうのです。

 短期の値動きを予想し、そこから収益を狙う方法もあるのでしょうが、私はそれよりも今何をすべきかを常に真剣に考えることをおすすめしたいと思います。

個人投資家の皆様に3つの提案(23日夕方掲載)
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2008/news810A_a.htm
■ 長期の予想は短期よりは容易?
 短期の予想は難しいとして、では長期の予想は簡単なのでしょうか?例えば、新興国株式が1ヵ月後、あるいは1年後に今より上昇しているのかを予想するのは難しいと思います。しかし5年後、10年後、今のレベルと比較してどうなっているのかを予想するのは短期に比べれは相対的には簡単に思えます。

 長期的には実体経済の成長率に金融市場のパフォーマンスが連動すると予想できるからです。株式市場は短期的には大きく変動しますが、長期データで見ると成長率(GDP)と正の相関があることがわかっています。経済の成長によって、そこに資金を供給しているリスク提供者もリターンを得られるというのは、理にかなった結果ではないかと思います。

 根本的な長期分散投資の拠り所はとてもシンプルなものです。より豊かになりたい、より便利に暮らしたい、そのような人間の成長欲求という本能が無くならない限り、イノベーションが発生しそれが経済を成長させ、リスクテイカーに還元されるという考え方です。市場が混乱しても、人間の欲求が変わることはない、これは変わらない現実だと言って良いと思います。

 マーケットには、長期投資の成果を阻害する可能性のある要因が存在することも事実です。例えば、現在マーケットにおいて意識されているのは信用創造機能の崩壊、基軸通貨である米ドルに対する信任低下、といったものがあります。

 金融市場に限らず世の中には「絶対」はありません。最悪の事態を想定しておくことは意味のあることです。しかし、投資の基本は、確率の高い方法を冷静に選択し、続けることだと思います。

 長期の予測が短期より簡単とは言えないとしても、どうすべきかの判断は長期の方がシンプルに考えられるのではないかと個人的には思っています。
今回の話のまとめ---------
■ 短期の予想はプロでも難しい
■ 短期では市場の予想より先にやるべきことがある
■ 長期の予想も難しいが、短期よりはシンプルに考えることができる

ではまた来週・・・。

(本コラムは、筆者の個人的意見をまとめたもので、筆者の所属する組織の公式な見解ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp
10月発売!これから投資を始める人が今日から使える「投資手帳」
http://www.monexuniv.co.jp/service/book_dvd/index.html#book3

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