今こそマイホームを買うべきか、買わざるべきか

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

今こそマイホームを買うべきか、買わざるべきか


 最近、知人からマイホーム購入について相談を受けることが多くなりました。私は不動産の専門家ではありませんが、不動産相場の下落によって、買い時だと判断した人が増えているようです。話を聞いていると、価格は確かに下がっているようですが、良い物件は買いたい人も多く、なかなか市場に出てこないとのこと。日本人のマイホーム志向は根強いようです。

 さて、マイホーム購入というと必ず出てくる究極の選択が、3つあります。
<マイホーム究極の選択>
1.一戸建てかマンションか
2.新築か中古か
3.住宅ローンは変動金利か固定金利か

 相談に来ている人たちの質問もこの3点に集約されています。しかし、私はその前にもっと根本的なことを考えなければいけないと思っています。それは「そもそもマイホームを買うか、それとも賃貸にするか」というという選択です。

 実は、この永遠のテーマ(!)は、7年前のこのコラムでも、2回にわたって取り上げました(今回の内容と必ずしも一致しない表現もありますが、ご了承ください)。

賃貸と持家、あなたはどっち?(1)
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2002/09/06.html

賃貸と持家、あなたはどっち?(2)
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/002841.html

 当時とは不動産市況も経済状況も異なり、私の考え方も少し変わっています。不動産は買うべきか買わざるべきか、もう一度頭の整理をしておきたいと思います。マイホームに関して、誤解をしている人が多いからです。

■ どっちが得か?だけで判断しない
 不動産関係の書籍や雑誌には賃貸と持家はどっちがお得?といった比較がよく掲載されています。答えは「わからない」だと思います。なぜなら、前提条件によって結果が変わってしまうからです。

 不動産は効率性の高い市場ではありませんから、常に合理的な価格になっているとは限りませんが、平均で見れば賃貸と持家には裁定が働いている訳で、流動性や将来の予想などが全て価格に織り込まれているはずです。

 つまり、不動産価格が予想より上がれば、持家が得、逆に下がれば賃貸が得。どっちが得かは、現状の予想より不動産が上がるか下がるか、でほとんど決まってしまうのです。

 とすれば、損得だけで判断するのはやめた方が良いと思います

■ 持家で得られるのは安心感ではなく満足感
 持家の方が、ローンを返済すれば自分のものになるから安心、と思っている人がいますが、これも誤解です。持家を購入して安心できたのは、ローン返済が終わるまで安定した収入があった終身雇用や年功序列の時代の話です。20年、30年といった長期のローン返済は、これからの雇用環境においては、一転大きなリスクになります。
 
 不動産の購入は自分の住む場所を固定し、自己資金の何倍もの借金をして、長期で返済を続けていくということです。「マイホームは不動産のレバレッジ取引」なのです。物件が値下がりしていて、ローンが払えなくなる。そんな最悪のシナリオのリスクを慎重に評価する必要があります。

 持家で得られるのは安心感ではなく満足感です。所有することによる満足感と引き換えにリスクについての覚悟をしてから、物件選びを始めるべきだと思います。

■ 賃貸で得られる自由と柔軟性
 一方の賃貸には、ライフスタイルによって生活環境を変えることができるという柔軟性があります。自分の好みに完全に合ったものには出会えず、「持つ喜び」は得られないかもしれませんが、それと引き換えに「持たざる自由」を得ることができるのです。

 不動産投資のプロに聞くと、日本の不動産の価格は、全て同じ方向に動く時代は終わったといいます。全体的には人口減少と高齢化によって下落圧力がかかりますが、一方で人口流入地域では底堅い需要があります。また同じエリアでも物件の魅力によって価格変動が変わることもあるのです。

 マイホームは保険、教育と並ぶ人生の3大出費と言われます。数千万円の買い物を気分で決めてしまうのは、合理的ではありません。所有することによるメリットがリスクに見合ったものかを良く考えてから判断すべきです。
今回の話のまとめ---------
■ 賃貸と持家には損得はない
■ 持家は人生のリスクを下げるのではなく上げるもの
■ 人生最大の買い物を感情的に決めてはいけない

ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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