株が下がっているのにナゼ比率を下げるのか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

株が下がっているのにナゼ比率を下げるのか?

先週お知らせしたように昨晩はマネックス資産設計ファンドのオンラインセミナーが開催されました。予想を超えるたくさんの方にアクセスしていただき、活発な質問もあって充実した内容になったと思います。当日の収録内容は、来週マネックス証券のサイトに掲載される予定です。参加できなかった方は、来週以降マネックス証券のトップページの最新情報からご覧ください。

■ 基本アセットアロケーションの変更
 マネックス資産設計ファンドは6つの資産に分散投資されているのですが、それぞれの資産に対する基本配分比率の見直しが行われ、4月から下記の比率に変更になりました。  

日本株式 17% → 20%
外国株式 14% → 9%
日本債券 23% → 30%
外国債券 25% → 29%
日本不動産(REIT) 13% → 6%
外国不動産(REIT) 8% → 6%

 この変更は、昨日更新されたばかりの月次レポートにも掲載されています。ご興味ある方は下記のファイルの3ページをご覧ください。

最新の月次レポート(PDFファイル)
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M673.pdf

■ 株が下がっているのにナゼ比率を下げるのか?
 この変更を見て不思議に思う方もいるかもしれません。昨日のオンラインセミナーでもご質問いただきましたが、端的に言うと

「株が下がっているのにナゼ配分比率を下げるのか?」

ということです。今回の変更によって株式の比率は日本株と外国株を合わせると31%から29%に下がりました。一方、債券が内外合わせて48%から59%へと大幅に増えています。

 昨年の9月以降、世界的に株価が大きく下がっています。長期分散投資の発想からすると、下がったものは買い増し、上がったものは比率を下げる逆張りが定石です。今回の比率変更はそれとは反対の動きに見えます。ここ1ヶ月、株式はリバウンドしていますが、昨年からの株の下落を考えると、どうして今のレベルで比率を下げるの?という疑問が出てくるのも理解できます。
■ イボットソンは相場観を示さない
 ここで注意しなければならないのは、今回の比率の変更は、相場観に基づくものではなく、投資家のリスク水準を同じレベルに維持するための変更だということです。

 この1年間、それぞれの資産の変動率は全体的に上昇しています。不安定な動きになっているのです。相関係数が変わらないとしても、同じ比率で株式や不動産(REIT)を保有していると、資産全体のリスクは大きくなってしまいます。

 この配分比率の変更が示唆していることは、市場全体のリスクが、ここ最近大きくなっていて、同じリスク量に抑えるためには比較的リスクの小さい債券の比率を増やさなければならないということです。

 つまり同じ配分比率であってもマーケット環境によって取っているリスクは変動しているのです。その水準をコントロールすることでファンド受益者の方が同水準のリスクで運用が続けられるようにしているのです。

 この基本配分比率について助言をしているのは、イボットソン・アソシエイツ・ジャパンですが、元々同社は相場観に基づく戦術的な資産配分を情報提供する会社ではありません。あくまで過去データを中心としたリスク分析に基づき、効率的な配分比率を提案しているのです。

■ 基本配分比率は下がっても株式は買い増すことがある
 今回のように株式の基本配分比率が下がっても、株式を買い増すことはあり得ることです。ややこしい話なので、単純化して考えてみましょう。

 例えば、1億円を運用していて、基本配分比率が、日本株と日本債券で半分ずつだったとします。その後、株式が50%値下がりすると5000万円ずつだったものが2500万円と5000万円になってしまいます。とするとリバランスで日本債券を1250万円売り、日本株を1250万円買えば、元の1:1に戻ります。
 ところが、もしその時、基本配分比率を日本株:日本債券で4:6に変更したとするとどうなるでしょうか?その場合でも、リバランスで日本債券を500万円売り、日本株を500万円買うことになります(3000万円と4500万円で4:6)。
 基本配分比率が下がったのに日本株を買うという結果になりました。つまり基本配分比率の変更とリバランスの調整は独立して考えるべきなのです。
■ 資産配分の変更は相場観が理由とは限らない
 先月の日経新聞には株価の下落で株式の比率を落として、債券を中心に安定運用に切り替える年金基金の話が出ていました。

株式比率を減らす年金基金(日経新聞記事より)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090323AT2D1602821032009.html
 これは、年金の支払いを考えるとこれ以上リスクが取れなくなってしまったために株式を減らさざるを得ない事情があるのだと推測されます。

 アセットアロケーションの比率が変わるときは、相場観以外にも様々な理由があるのです。変更の理由をきちんと理解することが大切です。

今回の話のまとめ---------
■ 「資産設計ファンド」の株式の比率が下がったのは相場観ではない
■ 市場全体のリスク(変動率)が高まり、投資家のリスクは増えている■ 株式配分比率が下がっても、リバランスで株式を買うことはありうる
では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

※リスク・手数料等に関しては、『10 リスクおよび手数料等の説明』の「マネックス資産設計ファンドに関しての重要事項」をご覧ください。

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