証券投資をする人は、なぜ不動産投資をやらないのか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

証券投資をする人は、なぜ不動産投資をやらないのか?

 昨年ひょんなことから知り合った、Iさんは生産管理のコンサルティングのお仕事をしている方です。ところが本業とは別に、数年前から不動産投資を手がけ、毎年1棟(!)不動産を購入している投資家でもあることを知りました。

 実物不動産投資と聞いてまず思ったのは「こんな不動産が下げているけど大丈夫?」というものでした。しかし、お仕事柄ロジカルに物事を考えるIさんの投資法を聞いていると、株式や投信、債券といった証券投資とは異なる実物の不動産への投資ならではの手法が見えてきました。

 実物不動産投資に関しては1年前にREIT(不動産投信)を使う方法と対比するために専門家の方にお話を伺いました。その時、講師を担当した束田さんが、「実物不動産投資に向いている人のプロフィール」をまとめていたのが印象的でした(下記コラムをご覧ください)。

専門家2人に聞いた、実物不動産投資とREITの違い(バックナンバー)
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2008/03/21.html

 今回Iさんのお話を聞いて思ったことは「証券投資と不動産投資は、うまく組み合わせれば、最強の投資になるのではないか」ということでした。2つの投資は方向性がまったく異なりますが、証券投資では使っていない個人投資家の潜在能力を活用できる可能性があるからです。

■「お金を借りる力」を住宅ローンに使ってしまうビジネスパーソン
 マイホームを住宅ローンを組んで買う人がいます。ローンが組めるのは、その人にお金を借りる「信用力」があるからです。金融用語では「与信」と言いますが、お金をどこまで借りることができるか、はその人の持っている能力であり財産なのです。

 ところが、せっかくの能力を多くの人は住宅ローンだけに使ってしまいます。Iさんは「マイホームを買ってから不動産投資はできないが、不動産投資を始めてからでもマイホームは買える」と言います。

 「与信」という能力をどう使うかは個人の自由ですが、Iさんは何も考えず住宅ローンに使ってしまうビジネスパーソンを見て勿体無いと思っているのです。

■「人を出し抜く投資」は歪みが大きいマーケットでやるべき
 実物不動産投資が証券投資と異なるところは、個別性が強いこと、そして自分で付加価値を追加することが出来るところです。

 株式投資にも銘柄毎の個別性があり、その選択手腕がリターンに影響します。しかし、不動産の場合は同じものが1つとしてない点が決定的に異なります。すべてが一点ものなのです。

 また株式には取引所があり、価格を多くの人がチェックしている訳ですが、不動産は飽くまで相対で売買する商品です。個別性が強く、相対取引をいうことは、適正価格がわかりにくく、価格と価値の関係が歪みやすいことを示しています。つまり、価格の歪みを利用して高い収益を実現できる可能性があるということです。

 また不動産は自分でリフォームしたり、付加価値を加えることでバリューアップも可能です。株式を購入して自分でリフォームすることはできません。不動産はその点でも証券投資とは異なります。 

■皆が面倒くさいと思ってやらないことは割安になっている
 大手企業や公務員のような安定した仕事をしている人に不動産投資をしている人が少ないのはどうしてでしょうか?

 仕事の収入だけで充分だからなのかもしれませんが、不動産投資というのが何だか怪しげで胡散臭いというイメージがあるからではないでしょうか。また購入してからの管理が面倒ではないか、という懸念もあると思います。メンテナンスに手間がかかって本業に差し支えてはいけないという不安です。
 しかし、これは逆に言えばチャンスでもあります。面倒だと思ってやらない人が多いことは、その分割安になっている可能性があるからです。誰もが、簡単に参加できるようになってしまえば、その分買い手が増えてしまいます。
 実物不動産投資には他にも検討しなければならないことがたくさんあります。日本は人口が減少するから不動産価格は長期的に低下するのではないか、地震が発生するリスクがあるのではないか・・・。どれも一理あります。
 また、投資金額が大きく、投資対象の分散や時間の分散も行いにくい、流動性が低く、換金リスクがある、といった証券投資とは正反対のデメリットもあります。

 この分野は私の本業ではありませんから、具体的な投資手法のご紹介などはできません。しかし、投資には幅広いバリエーションがあることを知っていただくために、今回ご紹介しました。

今回の話のまとめ---------
■ ビジネスパーソンの「お金を借りる力」は住宅ローンに消えている
■ 効率性の低い市場の商品の方が「人を出し抜く」収益を上げやすい
■ 不動産投資は証券投資とは別のものだが両立し得る 

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧