マルキールさんと澤上さん-投資に関する共通点と相違点

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

マルキールさんと澤上さん-投資に関する共通点と相違点

今週は何とも贅沢な1週間を過ごさせていただきました。

 日曜日に有楽町で開催されたマネックス証券協賛「不透明な時代に勝つための投資術 ~バートン・マルキール教授を招いて~」でマルキールさんの話をしっかり聞かせていただき、さらに19日には日経マネーさんの取材で、今度はマルキール博士に直接インタビューする機会がありました(その内容は6月20日発売の日経マネーに掲載予定です)。その際、プレゼント用にサインもちゃっかりいただきました。どうぞご応募ください。

バートン・マルキール氏直筆サイン本とエコバッグプレゼント【抽選】
http://www.monexuniv.co.jp/new/2009/3_29.html

 さらに昨日は、さわかみ投信の澤上社長にマネックスにお越しいただき、マネックス証券とマネックス・ユニバーシティそれぞれの動画にご出演頂きました。手前味噌ですが、こちらも自信を持っておススメできる動画です。
澤上さんの動画の視聴方法はこちらから
http://www.monexuniv.co.jp/new/2009/_vs.html

 日米の資産運用業界の第一人者の方々にお目にかかって直接お話を伺える機会というのはそうあるものではありません。お二人の考え方の共通点、相違点から、自分の投資に対する考え方をもう一度すっきりと整理することができました。

■ 共通点は長期投資と積立投資
 マルキールさん、澤上さん共に長期投資家です。自分なりの相場観は持っていますが、タイミングを見て底値で買えるとは思っていません。また、短期の売買でリターンを上げるのは難しいと考えています。つまり1年後、2年後の相場を見て投資しているのではなく、10年、20年を考えた投資を行っているのです。

 マルキールさんは講演で、現状の日本株は極めて魅力的な水準にある、とコメントしましたが、どこが底値かはわからない、とも考えているようです。ピンポイントで一番安くなったところを見つけるのは無理だと考えているのです。

 澤上さんもこう言いました。

「今は株式のバーゲンセール状態だと思っているけど、これから先また下がるかもしれない。でもそもそも、最安値で投資するなんて出来るわけない」
 さわかみ投信は昨年のリーマンショック直前からずっとファンドの資金を日本株に全力投資しているそうです。確かに、今年の安値の時に集中して買えればベストでしょうが、将来の上昇を見通すのであれば、日経平均が8000円も9000円も大きな差ではありません。それよりも、今回の金融危機で株式を安く買えるチャンスを逃すのは将来、後悔するという考えに基づいているのです。

 タイミングを狙わないという点で、お二人が薦めていたのが積立です。投資信託を使って時間を分散するドルコスト平均法です。

投資信託で積立するメリット
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G606/tsumitate/tsumitatetoha.htm

■ インデックスなのかアクティブなのか
 お二人の一番の違いは運用の手法です。アクティブ運用に対する考え方は対照的でした。澤上さんは、もちろんアクティブ派です。日本株においては二極化が進むことからアクティブ運用の優位性が出るはずだ、と言っていました。

 一方マルキールさんはアクティブ運用を完全否定する訳ではありませんが、インデックス運用を中心にすべきとの意見でした。十数年間に渡りインデックスを大きく上回る実績を上げた伝説のファンドマネージャーについても、実績が悪くなる前に早く引退したのは賢い戦略だった、と著書にもシニカルに書いています。

 インデックスかアクティブか、は資産運用業界における永遠に続いている論争ですが、もし卓越したファンドマネージャーがいたとしてもどうやって見つけるか、は難しい問題であることは事実です。

 澤上さんは、ご自身が運用するファンドの実績こそが、アクティブ運用の優位性の証になるのです。

■ インフレになってから対応するのではもう遅い
 これからも経済見通しについて、お二人がまったく同じ考えだったのが、インフレ懸念でした。

 デフレの日本でインフレの話をしても、遠い先のことのように思っている人がほとんどでしょうが、2008年の世界金融危機の後の各国の金融、財政両面での対策は、将来のインフレの可能性を着々と高めている、という見方は見事に一致していました。

 そしてもう1つ共通していたことは、そのインフレがいつ顕在化するかは、予想できず、その時に対応しようと思ってもそんなに器用に立ち回ることはできない、という意見でした。

 お二人の予想の通り、将来インフレがやってくるのかどうかはわかりません。しかし、将来のあらゆる可能性を考え、自分の資産を守り、成長させるためにどうしたら良いのか、を真剣に考えておくことは無駄にはなりません。
 2008年の金融危機によって、自分の投資方法に自信が持てなくなってしまった人がいるかもしれません。しかし、お金との関係は短期の投資成果で決まるものではありません。これから生きていく上でずっと関わっていく、言うなればマラソンのようなものなのです。慌てる必要はありません。

 マルキールさんと澤上さんのお話は日本の個人投資家が持つ不安を拭い去り、基本的な考え方を再確認させてもらえるような素晴らしい内容でした。
今回の話のまとめ---------
■ タイミングを考える投資よりも積立でドルコスト平均法
■ アクティブ運用の優位性については結果を見ないとわからない
■ デフレの日本でもインフレの可能性は考えておくべき

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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