コモディティとどうやって付き合えば良いのか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

コモディティとどうやって付き合えば良いのか?

 今朝の日経ネットでこんな記事が紹介されていました。

【日経ネットより引用】
28日午前のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は続伸。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の7月物は一時、前日終値と比べて1ドル超上昇し、1バレル64.99ドルと昨年11月上旬以来、約6カ月半ぶりの高値を付けた。

 景気の回復と共に原油価格の上昇を警戒する報道が増えています。

 「The Economist」の記事によれば、昨年1バレル147ドルまで急騰してから30ドルまで急落した原油は、油田採掘の制約によって、新しい供給元の開発が不足しており、供給の悪化が世界的に懸念されていると見られています。一方の需要は、世界経済の回復次第。中国の需要は高まっていても、先進国の落ち込みをカバーするほどではなく、また原油価格の上昇を押え込もうとする政府の動きもあり、上昇を抑える圧力になります。需給双方に複雑な要因があり、予測は難しいのですが、要因を丁寧に調べないと長期的な原油価格の方向性は見えないことがわかります。

原油価格の見通しについてのレポート(「The Economist」より 英語です)http://www.economist.com/displaystory.cfm?story_id=13693010

 年初に東京と大阪で開催された「マネックスお客様感謝DAY!」で2009年に起こりそうなこととして、原油は1バレル=80ドルを超えるか?という質問がありました。Yesと回答したのはパネラー4名中1名だけだったと記憶しています。数ヶ月前にはあり得ないと思っていたことが現実になるかもしれない。変化のスピードは予想以上です。

■ ガソリンが上がっていても天然ガスは急落
 コモディティというのは原油だけではありません。穀物や貴金属、非鉄金属、畜産物までバリエーションがあります。これらの商品をバランス良く分散させ、コモディティのインデックスとして投資するのが良いと思います。
 原油以外のコモディティを見ると、すべてのコモディティが上昇しているわけではないことがわかります。代表的なインデックスファンドの月次レポートを見ると商品によってかなりのバラツキがあることがわかります。例えば、エネルギーの中ではガソリン、原油などに比べると、天然ガスの下落はかなり大きくなっています。

ニッセイコモディティファンドの月次レポート
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/M669.pdf

■ コモディティへの投資方法
 コモディティは株式や債券のように配当や金利もなく、需給によって価格が決定されるものです。分散投資の投資対象とすべきではないという考え方もあります。実際、マネックス資産設計ファンドや世界経済ファンドといった代表的なバランス型ファンドにもコモディティは組入れられていません。 
 私は資産の10%程度はコモディティ(原油も含めた様々な商品への分散)へ投資しても良いと考え、自分の資産もそのようにしています。しかし、実際に投資しようとするとなかなか良いものが見つからないのが現状です。低コストでインデックス運用できるファンドをラインアップしているSTAMシリーズも残念ながらコモディティインデックスはまだありません。

 コモディティを組入れた投資信託は、直接コモディティに投資できない規制があったことから、商品指数に連動する仕組み債を用いて投資するのが一般的でした。債券発行費用などのコストがかかりシンプルな商品構造にならないのが難点です。

 また採用しているインデックスが異なるとパフォーマンスも随分違います。コモディティは構成比率によってリターンが大きく変わるのです。

 規制緩和に伴い、商品取引に直接投資を行なう国内籍投資信託も設定できるようになったようですが、真っ当な(低コスト、分散、インデックス)投資信託が設定・販売されるまでにはもう少し時間がかかりそうです。
 
 そう言えば、バートン・マルキールさんも、米国でもファンドを通じたコモディティへの投資はコスト高になる傾向があるので、オーストラリアやブラジルといった資源国の株式市場への投資によってコモディティ投資と同じ投資成果を狙っていると言っていました。これも1つの選択肢です。

 日本の個人投資家の選択肢としては

コモディティには投資しない
コモディティに関連した通貨や株式で代替する
コモディティに連動するインデックスファンドに投資する

 が考えられますが、投資金額や分散効果を考えればやはり投資信託を使うのが最も現実的でしょう。変動の激しさ、予測の難しさを考えれば、定額の積立を使うのが良いと思います。コモディティ投資については、これから更に効率的な投資を可能にする商品が登場することを期待しつつ、当面は「ベターな商品」を選択していきましょう。

今回の話のまとめ---------
■ 原油価格が回復しているが商品全体が同じ動きをしているわけではない■ コモディティに投資をするなら投資信託で時間と投資対象の分散を
■ コモディティ投資をより低コストでできる商品の登場が望まれる

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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