株式投資と自己投資、どっちを先にやったら良いのですか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

株式投資と自己投資、どっちを先にやったら良いのですか?

20代の就職された方たちとお金についてお話する機会がありました。以前大学の先生方とお話したとき、最近の若者は、車にも興味が無く、お酒も飲まない、でも真面目に大学にやってくる、と聞いたことがあります。まともに学校にも行かなかった自分とは真逆な世代の人たち。果たして会話が成立するのか、とジェネレーションギャップが不安だったのですが、杞憂でした。
 お金に関して考えていることは世代に関係なく共通。自分が持っていたステレオタイプな若者への偏見がちょっと恥ずかしくなりました。

■ 長期的な視点は成功モデルが無いとイメージしにくい
 今回お会いした5名は入社1,2年目の新人さんたち。お金に興味はあるようですが、投資をしていると言う人はゼロでした。

 ナゼ投資をしないのか?

 そこで、リスクとリターン、ギャンブルと投資の違い、株式投資ははじめはやってはいけない・・・といった投資に関する基本的な話をホワイトボードを使って説明してみました。すると興味を持ってもらえた様子。

 投資に興味が無くやりたくない、のではなく、どういうものなのか知らなかっただけのようです。自分の周りに経験者や教えてくれる人が見つからなかったのが原因のようでした。

 最近は大手企業でも新卒の採用を絞っているらしく、若手の人員構成が歪になっているケースが増えています。また社員同士の人間関係が希薄になって、プライベートの話をすることが減り、年上の先輩に何かを教えてもらうという機会が減っているのです。

 投資だけでなく、仕事、遊び、恋愛など、自分が数年後にこうなりたいと思うような身近にいる「成功モデル」が減っているのではないかと思いました。数年後のなりたい自分が想像できないと行動する気になかなかならないものです。

 例えば、老後のことは20代から自分で考えないといけない、と多くの若い人が思っているようですが、具体的に今まず何をすれば良いのか?というのがわからないのです。誰かのマネをしてはじめることができれば、それがきっかけになって自分で考えることができるようになるのでしょうが、それが見つからないと、動けなくなってしまいます。

 そのせいか、最近の若者は慎重で用心深く、だまされたくないという気持ちが強いようにも見えます。よくわからないままにマスコミの言うなりになって失敗するのはイヤだ。それよりは、現状維持できればその方がマシ。そんな、発想です。

■ 毎月分配型投信と人的資本の共通点
 現状維持志向が強い、と言っても決して無気力な訳ではなく、20代の人たちは一般に人生に対して真面目に向き合っているのではないか。そう思います。

 例えば別の20代の方からは、私個人のブログにこんな質問が寄せられました。

「株や投信で資産運用するのと、自分に投資するのとどちらをやった方が良いでしょうか?」

 持っているお金を投資で殖やすのと、自分の収入をアップさせるために使うのとどちらを優先すべきかという疑問です。

 そこには人的資本という考え方があります。毎月会社から円で給料をもらうビジネスパーソンは、自分自身が定期収入を毎月配当する金融資産と同じ、という発想です。つまり自分自身が毎月分配型投信のようなものだという発想です。以前ご紹介したように作家の橘玲さんから最初に教えてもらった考え方です。自己啓発はこの「分配金」を殖やす手段です。

勝間和代さんと橘玲さんの投資手法の違いと共通点(バックナンバー)
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2008/08/08.html

■ 証券投資と自己投資のベストミックス
 証券投資も自己投資も早くからはじめるのが大切という点では同じです。確かに、留学や資格取得のような自己投資は、ある程度まとまった資金が必要なこともありますから、いずれどれかを選択しなければならない時期が来るかもしれません。しかし、最初からどちらかをやるという二者択一ではなく、まずはどちらも一緒にやってみるのが良いと思います。

 20代には時間という大きな資産があります。でも2つの投資をしない時間が過ぎていくうちに、この資産はどんどん目減りしていってしまうのです。
 残念ながら今の日本では、20代で投資を始めている人の比率はまだまだ低いと思います。そんな人にも投資をしてもらうにはどうしたら良いか?投資教育会社の人間として引き続き頭をひねってみます。

今回の話のまとめ---------
■ 人生にお金が必要なのは世代を問わず共通
■ 長期の目標を実現するには、近くに「成功モデル」があると良い
■ 証券投資も自己投資も並行して両方やった方が良い

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧