10年経っても忘れてはいけない個人投資家視点

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

10年経っても忘れてはいけない個人投資家視点

今年はマネックス創立10周年、そしてマネックス・ユニバーシティが出来て4年になります。私がマネックスで仕事をしよう、と1999年に思ったのは、設立理念が個人投資家視点だったことに強く共感したからです。

「私たち個人に必要な最良の金融サービスを私たち自身の手で作っていこう」
マネックスの原点
http://www.monexgroup.jp/jp/group/business_principles/index

 当時は、橘玲さん制作の「ゴミ投資家シリーズ」が人気だったことからわかるように、大口の対面取引が個人のお得意さん。小口の個人投資家は冷遇されていました。それから10年、ネット取引の普及と共に、個人投資家視点の金融機関が次々登場し、激しく競争するようになりました。

 マネックスも、自分たちで意識し続けないと、気がつかないうちに、原点である個人投資家視点を忘れてしまうリスクがあるのではないかといつも気になっています。

 とある金融関係者が言っていたことですが、金融の世界に長くいると、段々その中に入り込んでしまって、周囲が見えなくなってしまいます。金融の世界の常識は、世の中の非常識であることを忘れてしまうのです。気がつかないうちに世間と感覚がずれていくのは怖いことです。

■ 常にお客様との接点を持つことが必須
 そうならないためには、自分たちを客観的に評価してもらえるアンテナを外部に持つことが必要だと感じています。別の視点を知ることができる機会を意識して作っていくことです。

 マネックス・ユニバーシティでは、毎週金曜日にメールマガジンを配信していますが、購読状況や読者の方からのフィードバックを社内でシェアしています。ニーズが低いと判断されたコラムは対策を講じるようにしています。
今回は 「東大生の78%が将来に不安を感じる時代の対処法」
http://www.monexuniv.co.jp/service/mailmagazine/backnumber/sodan/index.html

 また、個人投資家の皆様と直接コミュニケーションできるオフラインのセミナーも、新鮮な視点や気付きのきっかけになるアンテナの役割を果たしています。セミナーで教えながら、逆に教えていただくことも多いのです。
8月に大阪で「松本大と内藤忍の『マネックスの10年とこれからの投資』」https://seminar.monex.co.jp/public/seminar/view/1220

 それ以外にも個人投資家のブロガーの方々にお会いしたり、実際に相談業務をされているFP(ファイナンシャルプランナー)の方々と情報交換したり、と社外にたくさんのアンテナを立てることが重要だと思っています。

■ 個人投資家間の情報共有にはニーズがあるか?
 ネット上の金融サービスが広がってきましたが、ネット証券で取引をされているお客様には、同じ個人投資家の人たちが何に悩み、何をしているのかを知る横のつながりがなかなか持てない難点があります。お金の話ですから、周囲に気軽に相談という訳にもいきません。また対面の証券会社のような担当者もいないので、情報収集にも制約があります。

 お金の相談室という相談コラムがメールマガジンで一番人気なのも、他の投資家の人がどんなことを考えているのか見えにくく、横のつながりを求めているからではないかと思っています。

 そこで、これから計画しているのが、個人の方に本音を語っていただき、お金に関する疑問や悩みをお客様同士で共有するコンテンツの制作です。金融機関の人間が気がつかないような個人の方ならではの視点を別のお客様に提供できるのではないか、と期待しています。

 これからの10年で、個人を取り巻く金融の世界はさらに大きく変わっていくのは間違いありません。アンテナを張り巡らし、変化に対応していくことが、金融ビジネスとしての価値を提供し続けるために大切なことだと思っています。

今回の話のまとめ---------

■ 同じ仕事を続けていると周囲とのギャップに気がつかないリスクがある
■ 個人投資家視点を忘れないよう、外部にアンテナが必要

■ ネットの個人投資家は他の投資家の動向をもっと知りたいように見える
では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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